(月刊 国際法務戦略 2000年1月号掲載)

中国ビジネス・ローの最新実務Q & A

第1回

商標の登録、効力および侵害対策

黒田法律事務所     黒田 健二

萱野 純子

Kenji Kuroda, Sumiko Kayano/Kuroda Law Offices

*連載に当たって

中国の改革開放後すでに20年が経過し、中国は、政治、経済、文化等、あらゆる方面において日本と関係の深い国家となった。これに伴い、日本企業も中国の企業と取引を行い、あるいは中国において投資をする機会が増加している。しかしながら、他方、諸外国とのビジネスと比較してまだ歴史の浅い中国ビジネスにおいては、日本企業各社がこれまで経験したことのないような問題に直面することもよくある。

また、以前に中国において経験のある事項であっても、日々、多くの法令が交付、改正されているため、実務状況が全く変化していることもあり、さらに、今後は、中国のWTO加盟に向けて、さまざまな法令が改正されることが予測される。

そこで、本連載では、これまで中国ビジネスに関与する日本企業から当事務所に寄せられた多数の質問を、質問の多いテーマまたはタイムリーなテーマを中心として整理し、質疑応答形式で分かりやすく説明することとした。本連載において取り上げることを希望するテーマがありましたら可能な限りこれに応じたいと思うので、ご意見をお寄せ下さい。

一  商標の登録

Q1       日本法人A社は、製品を中国に輸出することになりました。そこで、A社は、製品に付する予定の商標Xを中国において、登録することにしました。中国では、商標の登録手続きの概要はどのようになっているのでしょうか。また、登録期間はどのくらいでしょうか。

A1         商標登録の出願、方式審査、実態審査、査定公告、登録公告の順で行われますが、登録を拒絶された場合には再審査制度、出願内容を修正すべき場合にはこれを修正する制度があります。また、登録期間は10年で、更新することができます。


A.商標登録の必要性

「中華人民共和国商標法」(以下「商標法」という)は、商標局の許可を受けて登録された商標を登録商標とし、また商標登録者は商標権を有し、法律の保護を受けるものとされている(第3条)。このように商標法はいわゆる登録主義を採用しており、中国国内において商標Xが商標法に基づく保護を受けるためには、商標を登録しておくことが必要である。

B.商標登録の手続

(1)商標登録の出願

商標登録出願にあたり、商標登録出願書、商標図案(商標法実施細則第9条)および商標出願人が法人であればその登記簿謄本等を商標局に提出するが、外国人または外国企業の場合、中国において商標登録を出願する等、商標にかかわる事項を処理する場合には、自ら行うことができず、必ず国が指定する代理組織に委任しなければならないから、さらに代理組織に対する委任状を提出する必要がある(第10条、商標法実施細則14条)。

(2)方式審査

登録出願した後、登録出願された商標について方式審査が行われ、審査に合格した場合には、出願人は商標出願受理通知書を受領する。

(3)実態審査

その後、商標局が実態審査を行うが、商法局が出願を拒絶する場合には、拒絶通知書が交付され、商標局が商標出願の内容を修正できると判断した場合には、審査意見書が交付される。審査意見書が交付された場合には、意見書の受領日から15日以内に出願人は修正することができるが、期限を過ぎても修正されない場合、または修正後もなお商標法の関連規定に適合しない場合は、商標局は出願を拒絶し、出願人に拒絶通知書を交付する(商標法実施細則第16条)。

(4)査定公告

拒絶通知書および審査意見書のいずれも受領しない場合、または審査意見書を交付された後、商標法の関連規定に適合するように出願内容を修正した場合、商標出願の内容が商標公告に公告される(商標法第16条、商標法実施細則第16条)。通常の場合、公告は、商標局による実態審査完了後8ヶ月ないしは10ヶ月以内に発表される。

(5)登録公告

査定公告後、3ヶ月以内に異議申立がない場合、または異議申し立てがあっても裁定により異議が成立しない場合には、登録が許可され、商標登録証が交付され、併せて登録公告される(商標法第19条)。

(6)再審査

出願が拒絶され、出願人がこれを不服とする場合、通知書の受領後15日以内に、商標評審委員会に対し、再審査を申請することができる。商標評審委員会は、再審査を行い、確定決定を出願人に通知する(実施細則第17条)。

C.商標の存続期間

商標の存続期間は、登録許可のあった日から10年である(商標法第23条)。期間満了後も継続して使用する場合には、更新手続を行う必要があるが、この場合、期間満了前6ヶ月以内に更新登録を出願しなければならない(商標法第24条)。更新後の登録期間も10年である(商標法第24条)。

二  商標の効力

Q2      日本法人A社は、商標Xを中国において登録出願しましたが、商標Xに類似する商標X2がB社によりすでに登録されていることを理由として、商標Xの登録が拒絶された。A社はどのような対応をすればいいでしょうか。

A2         登録商標X2について商標法に規定する取消事由があれば、その事由に基づき登録商標X2の登録取消を請求できますが、取消事由がない場合、登録商標X2の登録権者から、登録商標X2の譲渡を受けることも一つの方法です。

Q3       日本法人A社は、商標Xを中国において登録する予定にしていたところ、中国の査定公告に、商標Xに類似する商標X2が掲載されていました。A社はどのような対応をすればいいでしょうか。

A3         類似商標X2が査定公告後3ヶ月経過していない場合には、類似商標X2の登録に対して異議を申し立てることができますが、すでに査定公告後3ヶ月を経過した場合には、Q2と同様、類似商標X2の登録取消の請求をするか、譲渡を受けることになります。


A.類似商標X2が登録商標の場合

類似商標X2が有効に登録されている限り、商標Xは登録商標X2の類似商標として、登録を拒絶され、出願人がこれを不服として、商標評審委員会に対し、再審査を請求しても棄却の最終決定がなされるものと思われる。

従って、A社が商標Xを登録するためには、類似商標X2の登録の取消を請求することが考えられる。

登録商標の取消を請求できるのは以下の場合であり、いずれも請求者が商標を登録している必要はない。

(1)不使用商標の取消

ある登録商標が継続して3年間使用されていないときには、商標局にその登録商標の取消を請求できる(商標法30条)。

(2)欺瞞的手段もしくはその他の不正な手段で登録を得ていたとき(商標法第27条、商標法実施細則第25条)

以下のような場合には、商標審判委員会に対し、その登録商標の取消裁定を申し立てることができる。

①事実を偽り、欺瞞しまたは出願書類および関係文書を偽造して登録を得た場合

②信義誠実の原則に違反し、コピー、模倣、翻訳などの方式で、すでに大衆が熟知している他人の商標の登録を得た場合

③授権を得ずに代理人が自己の名義を持って被代理人の商標の登録を得た場合

④他人の適法に存在する権利を侵害して登録を得た場合

⑤その他不正な手段で登録を得た場合

(3)商法に使用してはならない文字、図形を使用した商標の取消(商標法第27条、第8条)

商標に使用してはならない文字、図形については、中国および外国の国名、国旗など商標法第8条に規定されており、このような商標が登録された場合には、商標評審委員会に対し、その登録商標の取り消し裁定を申し立てることができるが、そもそもこのような商標は登録が認められないはずなので、登録後、社会通念などの変化により商標に使用することが禁止されるに至った文字、図形を使用する場合などを除いては、一般的に利用できる規定ではない。

取消事由がない場合には、類似登録商標X2について登録期間を更新せずに登録期間を満了するまで、商標Xを登録することはできない。それでも商標Xを使用するために登録する必要があるとすれば、登録商標X2の商標権者から当該商標の譲渡を受けることも一つの方法である。

ただ、日本の会社の商号、商法と類似する商標が中国において全く関係のない第三者によって登録されている場合、登録した商標を日本の会社に対して譲渡することを目的としていることが多くあるので、商標登録者が高額な対価を要求することがあるので、注意が必要である。

登録商標の譲渡を受けた場合には、譲渡人および譲受人は共同で商標局に出願をしなければならない(商標法第25条)。

商標Xが中国において著名である場合、「著名商標の認定および管理の暫定規定」(1996年8月14日交付、同日施行)に基づいて、著名商標である旨の認定を受けていれば、類似商標X2の登録日から5年以内に、商標評審委員会に登録の取消を請求することができる(「著名商標の認定および管理の暫定規定」第8条)。

ただ、「著名商標の認定および管理の暫定規定」に基づいて認定された著名商標は、1999年1月5日現在、すべて中国国内企業の商標である。

なお、著名商標とは異なるが、1999年4月に商標局が交付した「重点保護商標リスト」によれば、重点保護商標と認定された280商標のうち、日本企業の24商標が重点保護商標として認定されている。

B.類似商標X2が査定公告の段階にある場合

類似商標X2が査定公告後3ヶ月経過していない場合には、類似商標X2の登録に対して異議を申し立てることができる(商標法実施細則第19条)。この場合、商標局は申立人および出願人の事実及び理由についての陳述を聴取し、調査の後、裁定する(商標法実施細則第22条)。この裁定に不服がある場合、裁定通知受領後15日以内に再審査を申請し、商標評審委員会が最終裁定する(商標法実施細則第22条)。

類似商標X2が査定公告後3ヶ月経過した場合には、異議申立ができないから、前述のQ2と同じ結論になる。

三  商標権の侵害

Q4       日本法人A社は、商標Xについて中国における登録を完了しましたが、商標Yについては、登録を完了していません。ところが、A社の調査の結果、B社が登録商標Xおよび未登録商標YをA社に無断で商品に使用していることがわかりました。A社は、登録商標Xおよび未登録商標Yの侵害について、どのような請求をすることができるのでしょうか。

A4         登録商標Xについては、裁判所に対して、商標使用差止請求、損害賠償請求をすることができます。また、工商行政機関に対して告訴することにより、工商行政機関が販売の即時停止、商標標識の没収および廃棄、現存商品の商標の除去、製版用具等、図案作成用具の回収、侵害物品の廃棄、罰金の制裁、損害賠償命令等の措置を取ることができます。未登録商標Yについては、登録商標Xのような保護は受けられませんが、未登録商標Yが著名商品特有の名称等である場合、B社が無許諾でこれを使用して、A社の著名商品と混同させ、顧客にその著名商品と誤認させた場合には、反不正当競争法に基づき、損害賠償を請求できます。また、この場合、監督検査部門は違法行為停止命令、違法所得の没収を行い、罰金を科し、営業免許証を取り消すことができます。

A.登録商標の侵害

商標法実施細則第41条によれば、(1)他人が商標権を侵害していることを明らかに知っておりまたは知っていて販売するとき、(2)同一または類似商品に、他人の登録商標と同一の文字または類似の文字、図形を商品の名称または商品の装飾に用い、かつ誤認させるに十分なとき、(3)故意に他人の商標権を侵害する行為について、保管、輸送、郵送、隠匿などに便宜を供与する時には、登録商標の商標権が侵害したものと認められる。

(1)行政的救済

(a)工商行政管理機関による救済

商標権を侵害されたものは、県クラス以上の工商行政管理機関に対して、商標権を侵害するものを告発または告訴できる。

工商行政管理機関は、商標権が侵害されたと認めるときは、調査して証拠を得るために、関係当事者に対する尋問、侵害活動に関係のある物品の検査、または必要なときは封印命令、侵害活動に関係ある行為の調査および侵害活動に関係のある契約、帳簿等の業務資料の閲覧、複製を行うことができる(商標法実施細則第42条)。

さらに、商標権を侵害したものに対し、工商行政管理機関は、販売の即時停止、侵害している商標標識の没収および廃棄、現存商品の侵害している商標の除去、商標侵害に直接専門に用いた製版用具、刷版およびその他図案作成用具の回収することができ、これらの措置では侵害行為を制止するのに足りないとき、または侵害商標と商品を分離することが困難なときは、侵害物品の廃棄を命じ、かつ監督することができる(商標法実施細則第43条)。

その他行政処分としての罰金の制裁、損害賠償を命じることができる。そして、工商行政機関の処理決定に対し、期限内に再審を請求せず、訴えを提起せず、また履行もしないときは、工商行政機関が裁判所に強制執行を申し立てることができる(商標法実施細則第44条)。

なお、「著名商標の認定および管理の暫定規則(1996年8月14日交付、同日施行)に基づいて、著名商標である旨の認定を受けている商標の場合、その著名商標と同一または類似の商標を非類似商品で使用している場合であっても、その商品が著名商標登録者と何らかの関連があると暗示することができ、これによって著名商標登録者の権利に損害を与えるおそれがあるときは、工商行政管理機関に対し、侵害の停止を請求することができる(「著名商標の認定および管理の暫定規定」第9条)。

(b)税関による救済

中国の法律、行政法規の保護を受ける知的財産権を侵害する物品の輸出入は禁止されているから[税関による知的財産権保護条例(1995年10月1日施行)第3条]、商標権を侵害する物品が外国に輸出されている場合には、税関に対し、商標権を侵害する物品の輸出入の取締を申請することも有用である。

まず、商標権者は、税関に対し、輸入出物品の取締を求めるときは、商標登録権者は、その商標権について税関に届け出て、必要と認めるときに、税関に措置を取ることを申請する(税関による知的財産権保護条例第6条)。

このような申請があった場合、税関は、権利侵害の疑いのある物品について、差押えをする(税関による知的財産保護条例第18条)。しかし、商標使用を第三者に許諾したにもかかわらず、商標使用許諾契約を商標局に届け出ていない場合には、申請人が差し押さえを希望していない物品について、差し押さえられることになる。

その場合、直ちに、税関に関係物品の通関許可を求める場合には、税関に輸入物品のCIF価格、または輸出物品のFOB価格の2倍の担保金を納める必要があるので(税関による知的財産権保護条例第19条)、注意が必要である。

差し押さえられた権利侵害の疑いのある物品が、税関、知的財産権主管部門または裁判所により権利侵害物品と確定されたときには、税関が没収する(税関による知的財産保護条例第23条)。

そして、税関は、商標権を侵害する物品に関し、侵害している商標を消去できないときには、破棄し、侵害している商標を除去でき、かつ関係物品を使用することができるときには、侵害している商標を除去し、関係物品は社会公益事業にのみ使用しまたは法により権利侵害者でない者の事故使用のために競売することができる(税関による知的財産権保護条例第24条)。

これに対し、差し押さえた権利侵害の疑いのある物品について、税関または知的財産権主管部門の調査を経て、権利侵害の疑いがなくなった場合等には、税関は通関を許可することができる(税関による知的財産保護条例第22条)。

(2)司法的救済

商標権を侵害された者は、直接、裁判所に対し、商標の使用差止請求や損害賠償請求訴訟を提起することもできる(商標法実施細則第42条)。

B.未登録商標の侵害

商標法およびその実施細則は、登録商標の保護を目的とする法令であるので、登録していない商標の場合、商標法およびその実施細則に基づく保護を受けることができない。また、税関による救済については、その申請の際に登録商標の登録証書の写しを提出する必要があるから(税関による知的財産権保護条例第8条)、税関において未登録商標の取り締まりを申請することはできない。

しかし、無許諾で著名商品特有の名称等を使用し、または著名商品に類似する名称等を使用して、他人の著名商品と混同させ、顧客にその著名商品と誤認させた場合には、不正当競争として[反不正当競争法第5条[2]項]、侵害者は被侵害者に対し、損害賠償責任を負い、被侵害者は裁判所に訴えを提起することができる(反不正当競争法第20条)。

また、この場合、監督検査部門が違法行為停止命令、違法所得の没収を行い、また、情状により、違法所得と同額以上3倍以下の罰金を科すことができる。情状が重大な時は、営業免許証を取り消すこともできる(反不正当競争法第21条)。


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