(月刊 国際法務戦略 連載)

中国ビジネス・ローの最新実務Q A

第14回

中国におけるファイナンス・リース契約をめぐる法律上の問題点(その1)

黒田法律事務所    黒田 健二

黒須 克佳

Kenji Kuroda, Katsuyoshi Kurosu/Kuroda Law Offices

中国の主要都市における経済力の発展には、目を見張るものがあるが、他方、中国の企業は一般に資金的余力のない企業が依然として多く、中国企業と取引をする日本企業、あるいはその子会社である合弁会社、独資会社が、金融上のトラブルに巻き込まれるケースは少なくない。

他方、資金的余力のない中国企業が、高額の設備、機械等を購入する手段としてファイナンス・リース契約があり、1999年10月1日に施行された新契約法第237条以下で、当該契約形態が明文化されるとともに、2000年6月30日には、ファイナンス・リース業務を主な取扱業務とするノンバンク金融機構を管理するファイナンス・リース会社管理弁法が施行された。ファイナンス・リース契約は、これらの法整備以前から取引の形態として存在しているが、法整備に伴い今後も増加することが予想される。

そこで、中国におけるファイナンス・リース契約をめぐる法律問題を取り上げることとする。

  国際的ファイナンス・リース契約

Q1       日本企業A社は、機械設備を中国企業B社に販売する予定ですが、中国企業B社は、資金不足のため当該機械設備の購入代金を一括で支払うことができません。他方、日本企業A社としても販売代金の一括支払を望んでいます。そこで、日本企業A社及び中国企業B社は、ファイナンス・リースの形態を取ることとし、その際リース会社を日本法人であるC社とすることを計画しています。このようにサプライヤー及びリース会社が日本法人で、ユーザーが中国法人であるファイナンス・リース契約は、中国法上、実行可能でしょうか。(図1参照)

A1         実行可能です。しかし、このような国際的ファイナンス・リース契約については、ユーザーが3年間連続して利益を上げていることや国家が奨励する業種に属していること、その他さまざまな要件を満たす必要があり、かつファイナンス・リース契約の締結の際に中国の国家外国為替管理局の許可が必要となります。さらにリース料債権について、対外債務登記が必要となります。


(図1)

中国の法律上、国際的ファイナンス・リース契約を禁止する規定はなく、むしろこれを前提としている規定があることから、一般論としては、実行可能である。

しかし、「国内機構の国際商業貸付金借入に関する管理弁法」(以下、「国際商業貸付金管理弁法」という)第2条により、国際的ファイナンス・リース契約は国際商業貸付金とみなされており、(注1)国際商業貸付金管理弁法第4条は、「国内機構が国際商業貸付金を借り入れるときは、外為局による許可を取得しなければならない」と規定していることから、国際的ファイナンス・リース契約の締結の際に中国の国家外国為替管理局の許可が必要となる。

また、国際商業貸付金管理弁法第5条により、国際商業貸付金を借り入れることができるのは、①国家外国為替管理局が外国為替借入業務の営業を許可した中国資本の金融機構、または②国務院が授権した部門が許可した非金融企業法人に限られている。

非金融企業法人については、さらに国際商業貸付金管理弁法第7条により、以下の条件を備えることが要求されている。(注2)

(1)直近の3年間連続して利益が上がり、輸出入業務の許可を有し、かつ国家が奨励する業種に属すること。

(2)完全な財務管理制度を有すること。

(3)貿易型の非金融企業法人の場合、純資産と総資産の比率が15%を下回っていないこと。非貿易型の非金融企業法人の場合は、純資産と総資産の比率が30%を下回っていないこと。

(4)借り入れた国際商業貸付金と対外担保との残高の合計が、その純資産の価値に等しい外国為替の50%を上回っていないこと。

(5)外国為替の借入金と外国為替担保の残高の合計が、その前年度の外国為替収入額を上回っていないこと。

また、リース料債権について、外国為替管理条例、対外債務統計観測実施細則の規定にしたがって、外債登記をする必要があり、外債登記をしなければ、リース会社はリース料の支払を受けることができない。

以上の通り、国際的ファイナンス・リース契約については、法律上のさまざまな規制が加えられている。

  保証人の求償権とリース物件に対する代位の可否

Q2  日本企業A社は、中国企業との共同出資で中国に合弁会社B社を設立しました。合弁会社B社は、製造した機械設備を中国企業C社に販売する予定ですが、中国企業C社は、資金不足のため当該機械設備の購入代金を一括で支払うことができません。他方、日本企業A社としても販売代金の一括支払を望んでいます。そこで、合弁会社B社及び中国企業C社は、ファイナンス・リースの形態をとることとし、リース会社D社(中国法人)にその旨を打診したところ、リース会社D社から、リース料債権について日本企業A社が保証人となるよう要求されました。中国企業間のファイナンス・リース契約上のリース料債権について、日本企業が保証人となることは可能でしょうか。(図2参照)

(図2)

A2       日本企業A社がこのようなリース料債権について保証人となることについて、特に法律上の制限はなく、可能です。

ただ、中国の民法通則、契約法、担保法には、日本法上の弁済による代位の制度がありません。そのためユーザーである中国企業C社が資金繰りに窮し、リース料を支払うことができなくなり、保証人である日本企業A社が保証債務を履行したとしても、リース目的物である当該機械設備の所有権は、日本企業A社には移転しないものと考えます。そこで、日本企業A社がリース会社D社と締結する保証契約に、日本企業A社が保証債務を履行した場合、当該機械設備に対する所有権は日本企業A社に帰属する旨を明記しておくべきです。

日本企業が中国企業間のファイナンス・リース契約上のリース料債権について保証人となることについては、特に法律上の制限はなく、実際にも行われている。

保証人が保証債務を履行すれば、保証人は主債務者に対して求償権を取得する。(注3)しかし、中国の民法通則、契約法、担保法には、日本の民法第500条以下で規定されている弁済による代位の制度はない。したがって、保証人は主債務者に対して求償権を取得するのみで、債権者が有していたその他の権利は取得できない。そのため、保証人が保証債務を履行してユーザーに代わってリース会社にリース料を弁済したときは、リース料は完済されたものとされ、リース物件の所有権はリース会社とユーザーとのファイナンス・リース契約の定めにしたがって、リース会社またはユーザーに帰属することになる。(注4)保証人がリース料を弁済した場合にリース物件に対する所有権を取得するためには、ファイナンス・リース契約で、リース料が完済された際は、リース会社に所有権が帰属する旨を規定するとともに、保証契約で、保証債務を履行した場合は、保証人にリース物件の所有権が帰属する旨を規定する必要がある。

なお、中国の担保法第28条は、同一債権に保証及び物的担保が存在する場合は、物的担保が優先する旨を規定している。(注5)そこで、ファイナンス・リース契約上のリース物件に対する所有権の担保的性質(物的担保)に鑑みると、保証人は、リース会社に対し、保証債務を履行する前に、リース物件の売却処分、換価、リース料債権への充当を先に行うよう求めることができるのではないか、との問題も生じる。しかし担保法第2条は、「この法律で定める担保の方式は保証、抵当権設定、質権設定、留置権、手付けとする」と規定しており、ファイナンス・リース契約上のリース物件は、物的担保とはされていないことから、保証人は、第28条を根拠に保証債務の履行を拒否することはできないものと思われる。

Q3       日本企業A社は、リース会社D社の中国企業C社に対するリース料債権の保証人となりましたが、中国企業C社はリース料を完済することができず、支払不能に陥ってしまいました。そこで、日本企業A社は、中国企業C社に代わってリース料を弁済しました。この場合、リース料債権は人民元建てでしたが、日本企業A社は、中国企業C社に対する求償権について、外貨建てで支払を受けることは可能ですか。(図2参照)

A3         可能ですが、外債登記をする必要があります。外債登記をしない限り、日本企業A社は、中国企業C社から支払を受けることができません。

リース料債権は、人民元建てであった場合においても、保証人が、保証債務を履行した結果、ユーザーに対し取得した求償債権について、外貨建てで支払を受けることも可能である。しかし、この場合、保証人が取得した求償権について、外国為替管理条例、対外債務統計監測実施細則の規定にしたがって、外債登記をする必要がある。外債登記をしなければ、リース会社はリース料の支払を受けることができない。

上記のQ&Aと同じ事案ではないが、筆者が担当した過去の案件で、もともとのリース料債権は、人民元であったが、日本企業が保証人となっており、当該保証人が保証債務を履行した結果、取得した求償権について、債務者が外債登記を申請して認められたケースがある。

  リース物件の所有権の帰属

Q4       ある日本企業と中国企業が中国で設立した合弁企業A社は、中国の金融機関B社をリース会社、中国企業C社をユーザーとするファイナンス・リース契約のリース物件(機械設備)を中国の金融機関B社から購入しようと計画しています。中国の金融機関B社は、中国企業C社が資金不足のためにリース料を支払うことができなくなってしまった結果、未納リース料に充当するため、リース物件を合弁企業A社に売却する予定です。しかし、このファイナンス・リース契約では、中国企業C社が各期のリース料を期限どおりに支払い、すべて完済したときは、リース物件の所有権は、中国企業C社に帰属する旨、規定されています。リース物件である機械設備の時価と比較すると未払いリース料はかなり少額ですので、合弁企業A社は、当該機械設備の完全な所有権を取得できないのではないかとの懸念がありますが、この点いかがでしょうか。(図3参照)

(図3)

A4         リース料はまだ完済されていない段階ですので、リース物件の所有権は、金融機関B社に帰属しています。したがって、A社はリース物件の所有権を有効に取得することができます。未払いリース料の額がリース物件の時価と比較するとかなり少額である場合は、不公平感がありますが、この点については、リース物件の価値が、未払いリース料及びその他の費用を上回る場合は、金融機関B社がその超過部分を中国企業C社に返還することによって調整され、所有権の帰属については影響を及ぼしません。

リース物件の所有権は、リース会社に帰属し、ユーザーが破産した場合であっても、リース物件は破産財産には属さない(契約法第242条)。他方、上述したとおり、中国の契約法第250条は、「賃貸人(リース会社)及び賃借人(ユーザー)は、賃貸借機関終了後の賃借物(リース物件)の帰属について、約定することができる」(カッコ内は筆者が加筆)と規定しており、ユーザーがリース料を完済した場合は、リース物件の所有権は、ユーザーに帰属する旨を合意することができる。

このような合意をしたケースについて、契約法第249条は、「当事者間に、賃借期間終了後、賃借物(リース物件)は賃借人(ユーザー)が大部分の賃借料(リース料)を既に支払ったが、賃借料(リース料)の残額について支払能力がなくなり、賃貸人(リース会社)がそれが原因で契約を解除し、賃貸物(リース物件)を回収したが、回収された賃借物(リース物件)の価値が賃借人(ユーザー)の未納賃借料(リース料)及びその他の費用を上回る場合、賃借人(ユーザー)は賃借料(リース料)の部分的返還を求めることができる」(カッコ内は筆者が加筆)と規定している。

したがって、上記のQ&Aのケースのように、リース物件の価値が、未払いリース料及びその他の費用を上回る場合は、ユーザーはリース料の部分的返還をリース会社に対して求めることができるが、リース物件の所有権はリース会社に帰属したままとなる。

1.国際商業貸付金管理弁法第2条は、「本弁法にいう『国際商業貸付金』とは、国内機構が中国国外の金融機構、企業、個人またはその他の経済組織及び中国国内の外資金融機構から調達した、外国通貨をもって契約上の償還義務を負担する金員をいう。輸出信用、国際的ファイナンス・リース、外国為替をもって償還する補償貿易、外国機構及び個人の外国為替預金(オフショアー業務を行う許可を得た銀行における外国為替預金を含まない)、プロジェクト・ファイナンス、90日以上の貿易における融資及びその他の形式の外国為替貸付金は、国際商業貸付金とみなして管理される」と規定している。

2.金融機構については、国際商業貸付金管理弁法第6条で、「金融機構が国際商業貸付金を借り入れるときは、中国人民銀行の金融機構外国為替資産負債比率管理に関する規定に合致しなければならない」と規定されている。

3.中国の担保法第31条は、「保証人は保証責任を負った後に、債務者に対する求償権を有する」と規定している。

4.中国の契約法第250条は、「賃貸人(リース会社)及び賃借人(ユーザー)は、賃貸借期間終了後の賃借物(リース物件)の帰属について、約定することができる」(カッコ内は筆者が加筆)と規定しており、リース料完済の際のリース物件に対する所有権の帰属について、契約当事者間の合意により自由に決めることができる。

5.担保法第28条は、「同一債権に保証も物的担保もあるときは、保証人は物的担保以外の債権に際し保証責任を負う。債権者が物的担保を放棄したときは、保証人は債権者が権利を放棄した範囲内の保証責任を免除される」と規定している。


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