中国ビジネス・ローの最新実務Q&A
第99回
外商投資企業の解散清算(1)

黒田法律事務所
萱野純子、藤田大樹

 前回まで、「中華人民共和国企業破産法」について検討してきたが、今回からは、債務超過による破産清算ではなく、その他の事情による会社の解散清算について検討する。特に、2008年1月15日に「外商投資企業清算弁法」が廃止されて以降、外商投資企業の解散清算に関連する規定が幾つか公布されているため、これらの規定を中心に検討することにしたい。第1回目となる本稿は、最近の新しい規定の制定経緯を述べつつ、外商投資企業の解散清算に関する根拠規定について説明する。

 外商投資企業の解散清算の根拠規定

 

Q1 これまで外商投資企業の解散清算の根拠規定となっていた「外商投資企業清算弁法」が廃止されたと聞きました。今後はどの規定に基づいて外商投資企業の解散清算は処理されることになるのでしょうか。

A1 今後の外商投資企業の解散清算は、「中華人民共和国会社法」並びに外商投資に関する法律(「中外合弁経営企業法」等)及び行政法規(「中外合弁経営企業法実施条例」等)に基づいて処理されることになります。また、これらの適用関係・詳細等について、最高人民法院、商務部及び国家工商行政管理総局がそれぞれ通知等を出していますので、それらの通知等も参考に処理されることになります。

 外商投資企業の解散清算に関して、これまで主要な根拠規定とされてきた「外商投資企業清算弁法」が廃止された。それに伴い、最高人民法院、商務部及び国家工商行政管理総局から関連通知等が出されているため、それらの制定経緯を確認しながら、今後の外商投資企業の解散清算の根拠規定に関して解説する。

(1)従来の外商投資企業の解散清算に関する規定
1996年7月9日、外商投資企業の解散清算の具体的な手続について規定した「外商投資企業清算弁法」が公布・施行され、外商投資企業の解散清算は同法に基づいてこれまで処理されてきた。
この点、従来から、中国政府は、外商投資に対する厳格な許可管理体制を採用しており、外商投資企業の設立形態に応じて、中外合弁企業については「中外合弁経営企業法」(以下「合弁企業法」という)及び「中外合弁経営企業法実施条例」(以下「合弁企業法実施条例」という)、中外合作企業については「中外合作経営企業法」(以下「合作企業法」という)及び「中外合作経営企業法実施細則」(以下「合作企業法実施細則」という)、さらに独資企業(外資合弁企業を含む)については「外資企業法」(以下「独資企業法」という)及び「外資企業法実施細則」(以下「独資企業法実施細則」という)等(以下併せて「外商投資関連法規」という)を制定しその管理を行ってきた。
そして、外商投資企業の解散清算についても、「外商投資関連法規」が、国内企業とは異なる特別な規定を置いているものの(合弁企業法第14条及び合弁企業法実施条例第14章、合作企業法第23条及び合作企業法実施細則第8章、独資企業法第21条及び独資企業法実施細則第12章)、十分な規定ではなかったため、別途、「外商投資企業清算弁法」を制定しその詳細について定めた。
このように、従来の外商投資企業の解散清算については、「外商投資関連法規」及び「外商投資企業清算弁法」に基づき、国内企業とは異なる独自の処理が行われてきたが、解散の許可権限を有する審査許可部門の判断に左右されることも少なくなく、外商投資企業の解散清算による撤退は必ずしも容易ではなかった。

(2)改正会社法の解散清算規定と外商投資関連法規との関係
2006年1月1日に改正・施行された「中華人民共和国会社法」(以下「会社法」という)の中でも「会社の解散清算」について規定されている(第10章第181条乃至第191条)。
もっとも、「会社法」は、原則として外商投資企業にも適用されるものの、「外商投資に関する法律に別途規定がある場合はその規定を適用する」(会社法第218条)とされているため、外商投資企業の解散清算については、依然として「外商投資企業清算弁法」及び「外商投資関連法規」が適用されていた。
また、「会社法」の解散清算に関する規定は、条文の数も少なく、内容も曖昧な部分を残しており、中国国内企業においてもその解釈を巡り度々紛争が発生している。

(3)中華人民共和国企業破産法の登場
2007年6月1日に施行された「中華人民共和国企業破産法」(以下「企業破産法」という)は、従来の破産法とは異なり中国内資企業・外商投資企業を問わず統一的に適用されることになったが、内容的にも従来の倒産関連法規に比べ市場経済国に相応しい現代的なものであった(「企業破産法」の詳細については「中国の倒産法(1)〜(12)」を参照)。
一方で、解散清算については、上記(1)及び(2)のように中国内資・外資企業で取り扱いが異なっており、また、内容的にも不明確な部分が少なくなかったため、「企業破産法」のような統一的且つ明確な指針が出されることが期待された。

(4)外商投資企業清算弁法の廃止
2008年1月15日、国務院は、「会社法」に代替されたことを理由に、「外商投資企業清算弁法」の廃止を決定した(「一部の行政法規の廃止に関する決定」第46)。
同決定によって、今後は、外商投資企業の解散清算も「会社法」に基づいて行われることが示されたといえるが、上述のように、外商投資に関する法律に別途規定がある場合は、その規定が会社法の規定に優先し、適用されるため(会社法第218条参照)、「会社法」と「外商投資関連法規」との適用関係について混乱が生じた。
すなわち、会社法第218条を文言通り解釈する限り、①「外商投資に関する法律」(合弁企業法、独資企業法等)→②「会社法」→③「その他行政法規」(合弁企業法実施条例、独資企業法実施細則等)の順序で適用されるのが原則と思われるが、実務上は、③が②に優先して適用されることも多く(具体例については「中国会社法の改正が外商投資企業に与える影響(1)〜(6)」を参照)、そもそも適用関係が明確ではなかったのである。

(5)会社法の解散清算規定の外商投資企業への適用等に関する商務部の指導意見
2008年5月5日、商務部弁公庁は、上記(4)のような混乱を解決するために、「外商投資企業の解散及び清算業務を法に基づき適切に行うことに関する指導意見」(以下「商務部意見」という)を公布・施行した。
「商務部意見」の第1条は、「今後、外商投資企業の解散及び清算業務は、会社法及び外商投資の法律、行政法規の関連規定に基づいて処理する。外商投資の法律及び行政法規に特別規定があり会社法に詳細規定がない場合、特別規定を適用する」と規定したため、「外商投資の法律」(合弁企業法、独資企業法等)だけではなく、「外商投資の行政法規」(合弁企業法実施条例、独資企業法実施細則等)についても、「特別規定」があり、且つ「会社法」に「詳細規定」がない場合は、例外的に「会社法」に優先して適用されることが明確になった。
もっとも、具体的にどのような場合に「外商投資の法律及び行政法規」の「特別規定」が適用されるのかは明らかでなく、特に、「外商投資の行政法規」のどの条文が具体的に適用されるのか明確ではなかった。
また、「商務部意見」は、あくまで審査許可機関である商務部門の運用基準であり、企業登記機関である工商部門の正式な見解は未だ明確にされていなかったため、その適用の確実性にはなお不安が残っていた。

(6)会社法の解散清算規定に関する最高人民法院の規定
2008年5月12日、最高人民法院は、「『中華人民共和国会社法』の適用に関する若干問題の規定(二)」(以下「人民法院規定」という)を公布し、同年5月19日から施行した。
上記(2)で言及したように、「会社法」の解散清算に関する規定は条文も少なく曖昧であったことから、最高人民法院は、それまでの判例の蓄積を踏まえて「人民法院規定」を公布することにより、「会社法」第10章「会社の解散清算」に関する規定の解釈を示し、且つ内容について詳細に補足することにした。
また、上記(4)及び(5)で言及したように「会社法」も外商投資企業の解散清算について適用されることから、「会社法」が適用される限度で、「人民法院規定」は外商投資企業にも適用されることになる。
なお、外商投資企業、特に中外合弁企業等の解散清算を巡る紛争は、出資者間で締結した合弁契約等により、人民法院ではなく仲裁機関によって解決するとされていることが多いため、人民法院の解釈である「人民法院規定」が仲裁においても適用されるのかとの問題はあるものの、司法の最高府である人民法院の解釈は仲裁においても大きな影響を持つことが予想される。

(7)工商局及び商務部の連名による通知の公布
2008年10月20日、国家工商行政管理総局及び商務部は連名で、「外商投資企業の解散抹消登記管理に関連する問題の通知」(以下「工商・商務通知」という)を公布した。
「工商・商務通知」は、「法律の適用原則」に関して、上記(4)の「会社法」の原則を確認すると共に、上記(5)の「商務部意見」と同様に一定の例外を認め、さらに当該例外に該当する具体的な条文について明記した。
すなわち、「工商・商務通知」によれば、「法律の適用原則」は「外商投資企業の審査許可登記管理に関する法律の適用上の若干問題に関する執行意見」(以下「執行意見」という)に基づくとされているところ(「工商・商務通知」第1条)、「執行意見」は、「外商投資企業の登記管理は『会社法』及び『会社登記管理条例』を適用する。外商投資企業関連の法律に別途規定がある場合、その規定を適用する。『会社法』及び『会社登記管理条例』、外商投資企業関連の法律に規定がない場合、外商投資企業関連の行政法規、国務院の決定及び国の外商投資関連のその他の規定を適用する」(「執行意見」第1条)と規定している。
従って、「工商・商務通知」により、外商投資企業の解散清算に関しても、「執行意見」を準用して、①「外商投資企業関連の法律」→②「会社法」→③「外商投資企業関連の行政法規」の順で適用するとの原則が確認されたと共に、①及び②に規定がない場合は③が適用されるとの例外が認められたと言える。
さらに、「工商・商務通知」は、③「外商投資企業関連の行政法規」の条文のうち、外商投資企業の解散清算に適用される具体的な条文について、以下のように明記している(「工商・商務通知」第1条)。
i.中外合弁企業…「合弁企業法実施条例」第90条(解散事由並びに解散申請及び許可)、第95条(清算終了報告、抹消登記手続及び営業許可証の返還)
ii.中外合作企業…「合作企業法実施細則」第48条(解散事由並びに解散申請及び許可)
iii.外商合弁または外商独資企業…「独資企業法実施細則」第72条(解散事由並びに解散申請及び許可)、第73条(清算手続等の審査許可機関への報告及び許可)

 

 

※【外商投資企業の解散清算に関する規定の施行状況】


施行日

法令名

公布機関

1996.7.9

「外商投資企業清算弁法」

対外貿易経済合作部

2006.1.1

「中華人民共和国会社法」

全人代常務委員会

2007.6.1

「中華人民共和国企業破産法」

全人代常務委員会

2008.1.15

「行政法規の廃止部分に関する規定」

国務院

2008.5.5

「外商投資企業の解散及び清算業務を法に基づき
適切に行うことに関する指導意見」

商務部弁公庁

2008.5.19

「『中華人民共和国会社法』の適用に関する若干問題の規定(二)」

最高人民法院

2008.10.20

「外商投資企業の解散抹消登記管理に関連する問題の通知」

国家工商行政管理総局及び商務部

 

 


連載記事「中国ビジネス・ローの最新実務Q&A」 (2000年1月-2011年8月掲載)のバックナンバーです。
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