知っておこうフィリピン法

第110回 職場における薬物乱用防止ポリシー

皆さん、こんにちは。Poblacionです。ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、ドゥテルテ大統領は、薬物乱用や薬物中毒に対して厳しい姿勢を示していることで知られています。これに伴い現政権の最優先事項の一つとなっているのが、フィリピン国内で増大しつつある薬物問題に対処するための薬物乱用防止措置を講じることです。

民間セクターにも、政府による薬物撲滅戦争を支援することが強く求められています。実際、既に2003年には、フィリピン労働雇用省(「DOLE」)が、2003年省令第53-03号(「省令」)を通じて、職場における薬物排除の達成に必要なポリシーやプログラムを策定するよう雇用者に命令しています。そこで本稿では、省令に基づき全雇用者に課されている義務についてお話していきましょう。

職場における薬物乱用防止ポリシーの策定

省令に基づき、10名以上の労働者を雇用している企業には、薬物乱用の防止・管理プログラムを策定し導入することが義務付けられています。職場における薬物乱用防止ポリシーは、経営側と労働者代表が共同で作成する必要があり、以下の要素を含んでいなければなりません  (1) 提唱、教育及び研修、(2) 役員及び従業員に対する薬物検査プログラム、(3) 治療、リハビリ及び紹介、並びに (4) 監督及び評価。

雇用している労働者の人数が10名未満の企業については、職場における薬物乱用防止ポリシーの策定は義務ではありませんが、そのような企業でも、かかるポリシーの策定及び採用は奨励されています。

雇用者は、職場における薬物乱用防止ポリシーを、全役員及び従業員に確実に周知させる必要があります。雇用者はさらに、従業員から、当該ポリシーを読了し理解した旨の確認書も取得しなければなりません。

ランダム形式による薬物検査

雇用者は、従業員に対し、会社の就業規則に従ってランダム形式で薬物検査を受けるよう義務付けなければなりません。

省令に基づき、薬物検査の実施は、以下の2つの部分から構成されることとなります  (1) スクリーニング検査、及び (2) スクリーニング検査の結果、薬物使用について陽性判定となった場合に実施される確認検査。薬物検査は、フィリピン保健省(DOH)の定めた手順どおりに行う必要があり、その実施機関は、DOHが認定した薬物検査センターに限定されます。薬物検査の費用は、雇用者の負担となります。

検査を受けた従業員には、検査結果が知らされます。確認検査の結果、薬物使用について陽性と判定された場合、雇用者の評価チームでその結果を評価し、問題の従業員に提供できるケアや管理者による介入の程度について判断しなければなりません。スクリーニング検査及びその結果のいずれも、厳秘情報とみなされます。

薬物検査の結果は、一年間有効となります。ただし、正当な理由がある場合(たとえば、職場関連の事故が発生し、関与した従業員に薬物使用の疑いがある場合)、雇用者は、従業員に薬物検査を追加で受けさせることができます。

刑事上及び行政上の制裁措置

禁止薬物を使用したと判断された従業員については、管理者として対応することとなり、雇用者は、労働法に基づいた実質面及び手続面における適正手続要件に従った上で、当該従業員を有効に解雇することができます。すなわち、雇用者は、当該従業員を解雇する前に、必要とされる通知を従業員に対して行い、管理上必要な調査も実施しなければなりません。さらに、禁止薬物の使用、所持、授与、販売又は販売の試みをしたと判断された従業員は、共和国法第9165号、いわゆる2002年包括的危険物防止法に基づき、刑事責任を負うと判断される可能性もあります。裁判所で有罪と判断された場合、当該従業員には、犯罪行為の内容次第で、懲役刑及び/または罰金刑が科される可能性があります。

フィリピン政府による薬物撲滅キャンペーンは強化されつつあることから、すべての雇用者にとって、職場における薬物排除の達成は非常に重要です。フィリピンで事業経営をされているのであれば、省令の規定を確実に遵守するようにしてください。

2018/12/20

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。


執筆者紹介

当事務所 フィリピン弁護士 Krizelle Marie F. Poblacion

フィリピン大学法学部次席卒業。2010年フィリピン司法試験6位合格。フィリピンのPoblador Bautista & Reyes法律事務所に勤務し、フィリピンにおける事業展開の様々な側面に関する助言及び支援を国内企業及び多国籍企業に提供。専門は、フィリピンの会社法及び商標法。2014年、配偶者の海外赴任に帯同して来日。同年11月に黒田法律事務所での勤務を開始以来、日本企業による対フィリピン投資事案を専門に扱う。

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