知っておこうフィリピン法

第108回 セカンドチャンスと外国判決

皆さん、こんにちは。Poblacionです。今回は、失恋の後に到来したセカンドチャンスで法律の壁に直面し、乗り越えたという興味深い事件のお話です。この事件でフィリピンの最高裁判所が下した判決について、お話しましょう。

ある日本人男性(「F氏」)が、あるフィリピン人女性(「Mさん」)に出会って恋に落ち、二人は2004年に結婚しました。結婚式の後、F氏はMさんをフィリピンに残し、日本に帰国しました。離れて暮らしていた二人は、やがて心の距離も離れ、事実上破局しました。

数年が経ち、Mさんは、F氏との婚姻関係を解消しないまま、別の日本人男性とフィリピンで結婚しました。しかし、この結婚もやがて破綻し、Mさんは二人目の夫とも別れることになりました。

そして、運命だったのでしょうか、MさんはF氏と日本で再会し、二人は再び恋に落ち復縁することとなりました。2010年、MさんはF氏の助けも借り、重婚を理由として二回目の婚姻を無効とする判決を、日本の家庭裁判所から得ることができました。

2011年、F氏はフィリピンの裁判所に対し、日本の家庭裁判所が下した判決を承認すること、並びに、Mさんの民事記録の修正をフィリピン国内の関連政府機関に指示することを求める申立を提出しました。しかし残念なことに、その申立は審理裁判所によって却下されました。婚姻の無効事件という形の申立は、Mさん、又はMさんの二番目の夫が提出すべきであった、というのが審理裁判所の判断でした(注:当該審理裁判所は、Mさんの二回目の婚姻の状況に関し、フィリピン法に基づく訴訟があらためて必要であることを暗に示唆しました)。

婚姻に関するフィリピンの法律は非常に厳格であり、フィリピンにおける婚姻を無効にするのは容易なことではありません。このことを踏まえ、最高裁判所への控訴手続において提起された問題点の一つが、フィリピン人と外国人の間の婚姻状況に関する外国判決がフィリピンの裁判所に承認してもらえるのか、それとも、フィリピンの裁判所であらためて争う必要があるのか、という点でした。

最高裁判所がその判決で下した決定は、外国判決の承認を求める申立は、原則として、フィリピンの裁判所における新たな訴訟を必要としない、というものでした。外国判決の発行は、事件の審理が外国法の下で既に行われ、決定が下されたことを前提としています。フィリピンの裁判所が決定すべきこととして残っているのは、(1) その外国判決が、フィリピンでより重要な公序に反していないかという点、及び (2) 外国判決の拒絶を主張する当事者が、拒絶すべきと判断されるに足る外的根拠(すなわち、管轄権の欠如、当事者に対する通知の懈怠、共謀、詐欺又は法律問題もしくは事実問題に関する明らかな瑕疵)を立証できているかという点のみです。外国判決が、フィリピンの公序に反しておらず、拒絶すべき十分な根拠も見つからない場合、フィリピンの裁判所には本来的に、国際礼譲に即して当該外国判決を承認する義務があります。

最高裁判所はさらに、フィリピンには離婚に関する法律はないが、日本の家庭裁判所の判決はフィリピンの公序に完全に合致するものである、と強調しました。なぜなら、重婚は、フィリピンの家族法の下でも無効であるからです。それどころか、フィリピンの改正刑法の下では、重婚は犯罪です。

最高裁判所は、F氏には日本の家庭裁判所の判決の承認を申し立てる適格性がある、とも述べました。F氏は、法律上の前配偶者として、Mさんとの婚姻の有効性の維持に重大な利害関係を直接有している、というのがその理由です。さらに、Mさんの二回目の結婚は、重婚にあたり、F氏とMさんのフィリピンにおける以前の婚姻に関する民事記録に抵触することから、F氏は、二回目の結婚に関する記録が取り消されることに利益を有する、ともされました。

最高裁判所は最終的に、Mさんの二回目の結婚を、重婚であることを理由に無効とし、F氏は日本の家庭裁判所の判決を単に事実として証明することができた、と宣言しました(ただし、重婚に対する刑事訴追の可能性が、最高裁判所によって示唆されました)。フィリピンの裁判所で、婚姻の無効事件についてあらためて訴訟をする必要はなくなったのです。このように、最高裁判所は、F氏による控訴内容を認め、当該事件に関する手続を進めるよう審理裁判所に命令しました。

外国判決は(フィリピン市民の民事上の地位に関する判決であっても)、フィリピンの法律及び司法規則に基づく一定要件を満たしてさえいれば、フィリピンで承認されることが、上記事件によって証明されました。そして、フィリピンの最高裁判所のおかげで証明されたのはそれだけではありません。二回目こそ、恋の甘さが増すということなのでしょう。

2017/07/14

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

 

 

 

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