知っておこうフィリピン法

第111回 業務委託契約に関する新規則

皆さん、こんにちは、Poblacionです。ドゥテルテ大統領が選挙キャンペーン時に掲げた公約の1つが、違法な雇用契約の撲滅です。非良心的な雇用主らが、職の確保に関する従業員の権利を回避するため、しばしば違法な雇用契約を利用していたことがその理由です。フィリピン労働雇用省(「DOLE」)は、この公約の実現に向け、2017年3月16日、2017年省令(「DO」)第174号を発行しました。この新しいDO第174号は、業務委託契約に適用される規則を定めていた以前の2011年DO第18-A号に優先して適用されます(第31回コラム-「業務請負会社の利用」参照)。

フィリピン国内の日本企業が、業務の一部を人材派遣会社に外注又は委託していたとしても、この新しい規則が大きな懸念材料になることはないでしょう。DO第174号は、フィリピン労働法及びDO第18-A号で既に規定されていた、「労働力のみの請負契約」の禁止と合法的な業務委託契約に関する規則をあらためて規定したに過ぎません。さらに、DO第174号では、業務委託契約の規制に関してより厳格な文言が採用されていますが、実際のところ、これにより、業務委託に関して委託する側の会社が課される負担が増すことにはなっていません。

適用範囲

重要なのは、DO第174号が、会社が、一定期間内における特定業務の履行を業務請負会社に委託する、という「業務委託」の場合に適用される点です。業務請負会社は、自社の労働者を委託する側の会社に配置し、依頼された業務を遂行させます。業務委託の典型例の1つは、非本質的な業務活動(警備、清掃、ITサービス等)を人材派遣会社に外部委託することです。

なお、DO第174号は、雇用主が、(例えば6ヶ月や1年という)期間を定めて、あるいはプロジェクト単位で、自社の従業員を雇う場合には適用されません。今でも、雇用主が一定の期間又はプロジェクトのために従業員を採用することは認められます。ただし、その取決めが、合法的な目的のために誠実になされるものであり、職の確保という従業員の権利を回避することが目的ではないことを前提とします。

労働力のみの請負契約とは?禁止される雇用契約とは?

DO第174号には、「労働力のみの請負契約」は違法である、と明確に規定されています。労働力のみの請負契約とは、以下の場合のような契約をいいます。

・業務請負会社に、実質的資本、又はツール、装置、機器類、監督、就労施設等の形による投資がなく、かつ、業務請負会社の従業員が、委託する側の会社の主たる事業運営に直接関連する活動をしている場合、又は

・業務請負会社が、自社の従業員による業務の遂行に対する監督権を行使しない場合。

 

別の言い方をしますと、DO第174号は、独自の事業を現実に実施することなく、委託する側の会社をその労働者雇用義務から守るため、単なる「隠れ蓑」又は「ダミー」として活動し、すぐにも姿を消しそうな人材派遣会社を禁止しています。

他にも、労働力のみの請負契約に類する特定の違法契約として、DO第174号によって禁止されているものがあります。これには、以下のような雇用契約が含まれます。

・独立した事業が一切なく、委託者である会社に労働者を提供することが唯一の活動である「cabo(カボ)」、「社内機関」又は「社内組合」に、会社が業務を委託している場合。

・委託する側の会社の正規雇用従業員によって現在遂行されている職務の遂行を、業務請負会社の従業員に要求する場合。

・先日付の辞職届、白紙の給与支払票、又は委託する側の会社もしくは業務請負会社を将来的請求に対する責任から免除する権利放棄書に署名することを、業務請負会社の従業員に要求する場合。

 

労働力のみの請負契約又は禁止される雇用契約を締結した場合

委託する側の会社又は業務請負会社が、労働力のみの請負契約又は禁止されている雇用契約を締結していると判断された場合、委託する側の会社が、業務請負会社の従業員の直接の雇用主とみなされます。すなわち、委託する側の会社には、業務請負会社の従業員を自己の従業員として扱い、自己の従業員が享受している全ての権利及び複利を、業務請負会社の従業員にも与えることが義務付けられます。これには、従業員に職の確保を認めることも含まれます。

許容される業務委託契約

誤解のないように申しあげておきますが、全ての業務委託契約が違法というわけではありません。以下の条件が全て満たされている場合、業務委託契約は「許容される」、あるいは「合法である」と言えます。

・業務請負会社が、委託する側の会社の事業とは別の独立した事業を行っていること。

・業務請負会社が、実質的資本(すなわち、5百万ペソ以上の自己資本又は払込済み資本)、又はツール、装置、機器及び監督という形による実質的投資を有していること。

・業務請負会社が、業務の遂行に関連する全ての事項(業務の結果は除く)において、委託する側の会社の支配又は指示を一切受けないこと。

・業務請負会社と委託する側の会社との間の業務委託契約が、労働法に基づき従業員に与えられる権利及び福利の全てを遵守していること。

 

DO174号の導入による変更点

DO第174号によって導入された変更の殆どが、実際のところ、委託する側の会社ではなく、業務請負会社/人材派遣会社を対象としています。例えば、DO第174号により、以下の義務が業務請負会社に課されることになりました。

・委託する側の会社と業務請負会社との間の業務委託契約が終了した場合、業務請負会社は、その対象であった従業員に対し、3ヶ月以内に新たな雇用を提供しなければなりません。業務請負会社が前記期間内に従業員に新たな雇用を提供できない場合には、当該従業員を解雇することができますが、法律又は会社のポリシーによって要求される退職手当の支給が条件となります。
・業務請負会社が合法的であるためには、500万ペソ(以前は300万ペソ)以上の払込済み資本又は自己資本が必要となりました。
・DOLEへの登録を求める業務請負会社には、10万ペソ(以前は2万5千ペソ)の登録料納付が必要になりました。また、業務請負会社に発行される登録証の有効期限は、DO第18-A号では3年であったのに対し、DO第174号では2年になりました。

DO第174号は、実際のところ、委託する側の会社に対し、労働法又はDO第18-A号で既に規定されていた義務以上に追加となる義務を課してはいません。従いまして、フィリピン国内で営業し、人材派遣会社と契約している日本企業には、心配の必要はないでしょう。企業が、(i)DOLEに適切に登録され、(ii)DO第174号に定められた義務を全て遵守し、かつ(iii)法律に基づく全ての権利及び福利を自社の従業員に与えている人材派遣会社と取引している限り、大抵の場合、合法的な業務委託を行っていると考え、安心していて大丈夫でしょう。

2017/08/03

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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