知っておこうフィリピン法

第116回 事業を売却するなら事業用資産包括譲渡法の遵守を!

皆さん、こんにちは。Poblacionです。皆さんのなかで、フィリピンにおける事業の売却や、会社の全資産、財産、株式の処分をお考えの方がいましたら、遵守すべき法令のひとつとして、事業用資産包括譲渡法があります。今回はこの事業用資産包括譲渡法についてお話しましょう。

事業用資産包括譲渡法は、非常に古く(承認されたのは1930年代です!)、見落とされがちな法律ですが、今日でもその効力を100%維持しています。同法の目的は、債務者が、疑いをもたない債権者に何も残さずに、自己の事業、資産及び財産のすべてを秘密裏に売却し、債権者に対する詐害行為を行うのを阻止することです。

同法において、以下の取引は、「事業用資産の包括譲渡」とみなされます。

・売主又は抵当権設定者の通常の取引又は事業の過程以外における、株式、商品及び資材の売却、移転、抵当又は譲渡。
・売主又は抵当権設定者が営む事業又は取引の全部又は実質上全部の売却、移転、抵当又は譲渡。
・売主又は抵当権設定者の事業で使用される設備及び備品の全部又は実質上全部の売却。

事業用資産の包括譲渡が債権者に対する詐害行為とならないようにするため、同法は、売主又は抵当権設定者に対し、以下の遵守を義務付けています。

1. 債権者に関する宣誓陳述書の作成及び交付
売主又は抵当権設定者は、事業用資産の包括譲渡に対する支払を受領する前に、以下を記載した宣誓陳述書を全買主及び抵当権者に対して交付すること - (i) 自己の債権者全員の名称及び住所、 (ii) 自己が各債権者に対して負っている債務額。売主又は抵当権設定者は、当該宣誓陳述書に記載された者以外に債権者が存在しないことについても、宣誓の下で確認すること。前記要件に従わない売却又は抵当は、詐欺的かつ無効である。

2. 売却又は抵当からの収益の比例充当
売主又は抵当権設定者は、売却又は抵当の対価として受領した金員を、自己の債権者の債権に対する支払に充当すること。前記要件に従わない売却又は抵当は、詐欺的かつ無効である。

3. 包括的売却又は抵当の対象となる株式及び商品の目録作成
売主又は抵当権設定者は、売却日又は抵当権実行日の10日前までに、当該売却又は抵当の対象である株式及び商品の完全に詳細な目録を作成すること。売主又は抵当権設定者は、当該株式及び商品の売却又は抵当の価格や条件についても、全債権者に通知すること。

4. 債権者に関する宣誓陳述書を貿易産業省に登録

5. 事業用資産の包括的譲渡の対価について適切性を確保
売主が対価なしに、あるいは名目上の対価のみで自己の株式及び商品を包括譲渡することは、違法とされる。

事業用資産包括譲渡法は、その性質上、刑事法であるため、条項の違反があった場合、違反当事者は、裁判所の裁量に応じて6ヶ月から5年の懲役及び/又は5,000ペソ以下の罰金を科される場合があります。

以上のことから、フィリピンにおける事業の売却又は譲渡が確実に有効なものとなり、詐欺的かつ無効とみなさることがないよう、上記の事業用資産包括譲渡法の要件には必ず従うようにしてください。

2017/09/15

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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