知っておこうフィリピン法

第117回 扶養義務について

皆さん、こんにちは。Poblacion です。フィリピン人の家族の特徴のひとつとして、とても絆が強いということが挙げられます。一般的にフィリピンの家族間には、お互いへの愛情や思いやり、そして非常に強い孝行心からくる結束があります。ですから、フィリピン人の親は、子供に対して、食べ物、住まい、衣服といった必需品の他に、成人年齢に達した後までも教育を与えるべきであると考えられています。一方、フィリピン人の子供には、親への「恩返し」として、歳老いた親の面倒を見ることが期待されています。

フィリピンでは、扶養義務は、単なる文化的基準ではなく、法的義務です。すなわち、法的義務である扶養ができない家族の一員を、被扶養者である家族が実際に訴えることができます。

そもそも、扶養の内容とはどのようなものでしょうか。フィリピン法上、扶養には、食料、住まい、衣服、医療、教育及び交通手段といった人のニーズに関し、必要とされるすべてのものが含まれます。教育について言えば、扶養の対象となる学校教育や訓練には、これらが終了するまでの間、すなわち、被扶養者が成人年齢(18歳)に達した後の期間におけるものも含まれます。扶養の額や質も、その家庭の経済力に即したものでなければなりません。例えば中流階級家庭の子供であれば、その子供が受けるべき扶養も、概ね一般的な中流階級家庭のライフスタイルや資産に見合うものでなければなりません。

では、扶養義務を負うのは誰でしょうか。フィリピン法上、以下の者が互いに扶養する義務を負います:

1. 配偶者;
2. 尊属及び卑属(祖父母、孫等);
3. 親、嫡出子/非嫡出子及びその嫡出子/非嫡出子(すなわち、孫);並びに
4. 血族又は半血族の兄弟姉妹

扶養義務を負う者が複数名いる場合の扶養の順序も、法律に規定されています。最初に扶養義務を負うのは配偶者であり、その次は一番近い卑属であり、その次は一番近い尊属であり、最後は兄弟姉妹です。例えば、子供の扶養の場合、最初に扶養義務を負うのは親です。親が扶養できない場合に義務を負うのは、次に最も近い尊属である祖父母です。祖父母も扶養することができない場合、次に義務を負うのはその子供の兄弟姉妹です。

扶養者が2名以上いる場合、各自の資産に応じて扶養料を分担する規則になっています。ただし、急を要する場合や特別な事情がある場合、裁判所は、そのうちの1名に一時的に扶養を命じることができ、そのように命じられた者は、他の扶養義務を負う親族に対し、その負担分を後日請求することができます。

フィリピン法には扶養額についての規定はありません。実際には、扶養額は、扶養者の資産及び被扶養者のニーズに応じたものとしなければなりません。被扶養者のニーズ及び扶養義務者の資産における増減に応じ、扶養料を増額したり、減額したりすることも必要です。

扶養の義務については、扶養を受ける権利を有する人が扶養を必要とした時点から請求することができます。しかし、扶養料は、司法的に(例えば、裁判所命令により)又は裁判外で(例えば、催告書により)その請求が行われた日からのみ、支払われることになります。別の言い方をしますと、扶養料は、必要になれば請求することができますが、請求があって初めて支払われるものです。

次に、扶養料はいつ支払うべきでしょうか。法律の規定によると、扶養料は、各対象月の最初の5日の間に支払わなければなりませんが、扶養者と被扶養者の間で、別の日程や頻度による扶養料の支払いに合意しても構いません。

さらに、扶養料はどのように支払うべきでしょうか。扶養義務を負う者には、次の2つの選択肢があります:(1) 固定額を支払う、又は (2) 被扶養者を家族の住まいに受け入れ同居させる。後者の選択肢は、これに対する道徳上又は法律上の障害がある場合には、認められません(たとえば、扶養者に禁止命令が下されている場合等)。

「他人」(すなわち、配偶者でも、尊属又は卑属でも、兄弟姉妹でもない人)による扶養も、フィリピン法では認められています。扶養義務者のことを知らずに他人が扶養した場合、その人は、扶養義務者に払戻しを請求することができます。扶養義務者が喫緊に必要とされる扶養を不当に拒絶したり、怠ったりした場合にも、他人が扶養することができ、これにも払い戻し請求権が伴います。その具体的適用例としては、差し迫ったニーズをもつ未成年の子供に対する扶養を、その父親又は母親が不当に怠った場合があげられます。

最後に申しますと、家族を扶養することについて、法律上決められた義務だからする、という考えは少ないはずです。自分の家族に対する愛情や思いやりからする当然の援助と考える方が、ずっと有意義に感じられ、互いの心も満たしてくれるでしょう。

2017/09/15

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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