知っておこうフィリピン法

第119回 新たな年に新たな税制度

皆さん、こんにちは。Poblacion です。ドゥテルテ政権の社会経済政策における重要項目の1つが、従来よりも公正で簡素化された効率的税制度をフィリピンにおいて確立することにより、先進的税制改革を始動することです。そのためにドゥテルテ大統領は、2017年12月19日、共和国法第10963号に署名し、これを法律として成立させました。同法律は、税制改革法(TRAIN法)としても知られています。

税制改革法は、現行のフィリピン税法を改正するためのものですが、両刃の剣とも言われています。なぜなら、中流及び下流階級に属する何百万人もの個人納税者に、所得税減税という恩恵がもたらされる一方で、石油、たばこ、甘味飲料、自動車等の特定商品に課される税金が引き上げられるからです。

税制改革法の注目すべき特徴を、以下に一部記載します。

富裕層を除く個人納税者の所得税の減税 
従来の税法では、報酬による所得額が1万ペソ(約2万3000円)以下であっても、5%の所得税が課されます (注1)。所得税には、累進課税制度が適用されており、報酬による所得額が50万ペソ(約113万円)を超える納税者には、最も高い所得税率である32%が適用されます。

改正法では、税率区分が改定され、所得税額がより合理的なものとなりました。これにより、報酬による所得額が25万ペソ(約56万5000円)以下の者は、所得税を免除されることとなりました。累進課税制度の適用は変わりませんが、改正法では、35%という最も高い所得税率は、報酬による所得額が800万ペソ(約1800万円)を超える者に適用されます。次に高い所得税率は、報酬による所得額が200万ペソ(約450万円)超800万ペソ(約1800万円)以下の者に課される32%(2023年までに30%に低減の予定)です。
所得税率は、2023年以降にさらに改定される予定です。

株式の売却に対するキャピタル・ゲイン税の増税 
以前は、個人や内国企業が所有する株式の売却により得られた所得(注2) には、税率5%(所得額が10万ペソ = 約22万6000円以下の場合)または10%(所得額が、10万ペソを超える場合)による課税がなされていました。改正法では、税率は、純額キャピタル・ゲインの15%に引き上げられています。

相続税の減税 
以前の税法では、故人の遺産については、累進課税制で課税され、税率は、5%(純遺産が20万ペソ=約45万2000円を超える場合)から最高20%(純資産が1千万ペソ=約2260万円)の間でした。改正税法では、相続税率は一律純資産の6%となります。

贈与税の減税 
以前の税法では、ある一暦年中に行われた贈与には、累進課税制により課税が行われ、その税率は家族間の贈与の場合には2%から最高15%であり、それ以外の贈与の場合(例えば、企業により行なわれる贈与の場合)には30%でした。改正税法では、家族間であるか否かにかかわらず、贈与税率は一律6%となります。さらに、贈与税の課税対象額から控除される金額が、25万ペソ(約56万5000円)に引き上げられました(以前は10万ペソ = 約22万6000円でした)。

たばこに課される物品税の増税 
2018年1月1日から2018年6月30日まで、たばこにかかる物品税は、一箱あたり32.50ペソに引き上げられます。たばこにかかる物品税はその後も引き上げられ、2022年1月1日には、一箱あたり40.00ペソになり、その後も一年毎に4%ずつ引き上げられることになりました。

精製された石油及び燃料に課される物品税の増税 
改正税法により、石油製品に課される物品税が引き上げられます。従来物品税が免除されていた石油製品で、今後課税対象となるものもあります。たとえば、無鉛プレミアムガソリンには、以前は1リットルあたり5.35ペソで課税されていましたが、今後は、1リットルあたり7ペソの税率で課税されることになります(2019年までには1リットルあたり10ペソにまで引き上げられます)。液化石油ガスは、従来物品税が免除されていましたが、今後は1リットルあたり1ペソの税率で物品税が課されます(2019年までには1リットルあたり2ペソにまで引き上げられます)。

自動車に課される物品税の増税 
自動車に対する物品税も引き上げられます。従来、自動車に課される物品税の税率は、2%(純製造価格又は輸入者の販売価格が60万ペソ=約136万円以下の場合)から最高60%(価格が210万ペソ=約475万円を超える場合)となっていました。改正税法では、最低税率が4%に引き上げられ(価格が60万ペソ以下の場合)、最高税率は50%となります(価格が400万ペソ=約900万円を超える場合)。
ハイブリッド車の場合、適用される物品税の税率の50%で課税されます。純電気自動車は、物品税免除となります。

非必需サービスに課される新たな税金 
改正税法では、患者の外見を良くすることのみを目的とし、適切な身体機能の促進や病気又は疾病の予防/治療という意味をもたない美容処置、美容外科及び身体美容のサービスの実施から得られた総収入については、その5%に相当する税金が課されます。

甘味料に課される新たな税金 
改正税法では、一般的/ノンカロリー甘味料を用いた甘味飲料には、税率6%の税金が課されます。一方、高果糖コーンシロップを用いた甘味飲料(コーンシロップのみか、一般的/ノンカロリー甘味料と組み合わせてかを問わない)には、税率12%の税金が課されます。ココナッツシュガーやステビア甘味料のみを用いた甘味飲料については、同課税対象外とされています。

特定取引に関する印紙税の増税 
改正税法では、特定の取引に課される印紙税が引き上げられます。例えば、株の売買に課される印紙税は、売却株の額面価格200ペソにつき0.75ペソでしたが、これが1.50ペソに引き上げられます。

上記は、旧税法からの大きな変更点の一部を例示したに過ぎず、改正税法により導入される変更点は他にも数多くあります。改正税法が発行するのは、2018年1月1日であり、その前にフィリピンの官報及び一般に流通している新聞紙で公告が行われます。

フィリピン税法の合理化及び改善は、最終的には、実際の税徴収や税法執行が改善されることにより達成されるべきものです。よって、改正税法に基づく税制改革が、実際に、より公正かつ包括的な経済をもたらすかどうかについては、今後見極めていくこととなります。

 

注1:最低賃金所得者等、一定の例外があります。

注2:証券取引所で取引されていない株式の売却に適用されます。

2018/02/19

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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