知っておこうフィリピン法

第120回 国籍条項対報道の自由

皆さん、こんにちは。Poblacionです。報道の自由と国籍の要件 - 憲法に定められたこの2つの基本原則が相反すると思われる場合、どちらが優先されるべきでしょうか?

最近、フィリピン証券取引所(「SEC」)から発行されたある決定が、かなりの論争を巻き起こしました。その決定とは、あるオンラインニュース ウェブサイト(「A社」)及びその持ち株会社(「持ち株会社」)について、国内マスメディアの所有権及び経営権を外国人に与えることを禁止した憲法の規定に違反するとして、その登録を取消すものでした。特にA社は、ドゥテルテ政権に対して非常に批判的であることでも知られています。そうしたことから、今回の措置は報道の自由を制限することを意図した抑圧的行為である、と一部の人々は捉えています。

実際の経緯を正確に辿っていきましょう。
事の始まりは、持ち株会社が、A社株式に関する「フィリピン預託証券」(「PDR」)と呼ばれる金融商品を、外国企業2社に対して発行したことでした。A社と持ち株会社はいずれも、株主、取締役及び役員の全員がフィリピン国籍を有しています。SECによる調査の過程でわかったところでは、一方の外国企業に対して発行されたPDRには、持ち株会社は、PDR保有者と誠実に事前協議し、その3分の2以上の承認を得た上でなければ、以下のことをしてはならない、という条件規定がありました 。
(i) A社の基本定款又は付属定款の改定、修正もしくは変更、又は (ii) PDR保有者の権利を毀損することになるその他行為の実施。
SECが直面した他の予備的問題には、A社は「マスメディア」企業であるのか、そして、A社は持ち株会社の分身に過ぎない(よって、同一企業として扱われるべきである)のか、という問題も含まれていました。ただし、最も重要な論点は、当該PDRの条件が、「マスメディアの所有及び経営は、フィリピン国民、又はフィリピン国民が100%所有し経営する法人、協同組合、もしくは社団に限定されるべきである」としたフィリピン憲法に違反するか、ということでした。

SECの判断は、以下のとおりでした。
フィリピン憲法における外国資本持分の制限は、極めて明確である。フィリピン資本による支配が100%を少しでも下回れば、違反となる。しかし、持ち株会社が発行したPDRでPDR保有者に与えられているのは、A社に対する「最小限の」支配権である。具体的には、A社の株主である持ち株会社がA社の構成文書の改定、又はPDR保有者の権利を毀損する可能性のある何らかの行為を行うには、PDR保有者と事前協議し、その3分の2以上の承認を得ることが要求されている。
こうしたことから、「[A社の]株主は、実質上、[PDR]保有者に従属する形になっている」、とSECは指摘しました。

SECはさらに、以下のことを明確にしました。
ある会社に対する「支配」とは、株式所有という方法でのみ具現化されるものではない。「支配」には、会社の方針、行為及び構成に対して影響力を与える他のあらゆるスキームが含まれる。結局のところ、マスメディア企業に対する支配権が、どのような権能又は仕組みによって外国籍の者に与えられるかは問題ではない(株主、債券保有者、その他のいずれの立場によるかは問わない)。支配権の行使が、特定の機会に限定されているとしても関係はない。憲法の規定上、マスメディア企業の場合、外国資本による支配は一切あってはならない。

ニュース報道によれば、A社は裁判所に控訴するようです。最終的に、報道の自由と国籍の要件という原則のいずれが優先されるのかについては、今後を見守っていくしかありません。

論争を巻き起こした今回の決定にかかわる憲法上及び政治上の問題はさておき、本件から法律上導き出されることを申しますと、全面的又は部分的に国籍条項のある産業に従事する会社は、憲法及び法律に定められた外国資本持分の上限を絶対に遵守しなければなりません。特にマスメディア会社の場合、株主が全員フィリピン国籍を有する者である、というだけでは十分ではありません。会社の融資契約、担保契約、その他の契約等により、外国籍を有する者に支配権が与えられることがないよう確実にしなければなりません。ここでは支配権の程度は問いません。さもなければ、フィリピンにおける会社の事業許可が取消されるなど、非常に厳しい結果となるおそれもあります。

2018/02/26

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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