知っておこうフィリピン法

第121回 フィリピンにおける競争ポリシーの発展

皆さん、こんにちは。Poblacion です。フィリピン競争法の発効からもうすぐ3年になります。フィリピンの競争ポリシーは、今も発展段階にありますが、小規模事業に公平な機会を提供し、フィリピンの一般消費者を不正行為から保護し、全市場における参加者のために競争が盛んな経済環境を促進するという点で、ある程度の進展を示しています。今回は、フィリピンの競争ポリシーにおける興味深い展開についていくつか取り上げます。

通知義務基準の改定

第44回コラム(フィリピン競争法)では、取引額が10億ペソを超える合併又は買収の計画については、フィリピン競争委員会(PCC)による強制審査の対象になることをお知らせしました。経済発展と歩調を合わせるため、PCCは最近、届出義務の基準を改定しました。フィリピン競争法によりPCCに与えられた権能に従い、PCCは文書No. 18-001を発行し、以下のとおり届出義務の基準を引き上げました。

なお、取引額が20億ペソを超えるか否かを判断するにあたっては、PCCが従うガイドラインがあります。
以下にその例を挙げます。

・フィリピン国内にある資産の合併・買収計画の場合、以下に該当する取引は、届出義務の対象となります。
    -買収されるフィリピン国内の資産の総価格が、20億ペソを超え;かつ
    -フィリピン国内で買収される資産によってフィリピン国内で発生する総収益が、20億ペソを超える。

・法人の議決権付株式の買収の場合、以下に該当する取引は、届出義務の対象となります。
    -当該法人又は当該法人の支配する企業が所有するフィリピン国内の資産の総価格(自社株式を除く)が、20億ペソを超え;
    -当該法人又は当該法人の支配する企業がフィリピンにおいて、あるいはフィリピンから発生させる総収益が、20億ペソを超え;かつ
    -計画されている株式買収の結果、買収企業が(その関連会社と併せて)当該法人の発行済み株式の
   (i)35%又は(ii)50%(買収企業が、計画されている取引以前から、35%を超える株式を既に所有している場合)を所有することになる。

届出を怠るとPCCにより取引は無効に

フィリピンにおいて合併・買収を実施するときは、お気をつけください!ある事例で、フィリピン法人であるA社が、オランダ企業であるX社の株式を、1億2000万米ドルの対価で、X社の親会社であるB社(別のオランダ企業)から買取りました。これに対して最近、PCCがその取引を無効とする決定を下しました。事の始まりは、PCCに届いた一通のレターでした。そのレターでは、A社とB社の間の取引は、フィリピン競争法に基づく届出義務に違反して実行されたと主張されていました。事実認定調査が実施された後、PCCは、X社のフィリピン国内に有する資産が10億ペソ(当時、フィリピン競争法に基づく届出基準に該当する金額)を超えていることから、取引は届出義務の対象であるという判断を下しました。PCCが解決しなければならなかった問題の1つは、フィリピン競争法に基づく届出義務の規則違反に関する事案において、取引による競争阻害の影響がないことが有効な抗弁になるか、という点でした。PCCは、これに対して否定的な判断を下し、取引が競争を阻害する影響を及ぼすか否かは、フィリピン競争法に基づく通知義務違反があったか否かという問題とは全く別個で異なる問題であるとしました。PCCが通知義務違反の有無を判断するには、取引が基準を満たしているか否か、そして、法の要求に従った届出がPCCに対してなされたか否かだけを判断することになります。届出義務を免責する理由として、市場に悪影響を与えたかどうかを検討する必要はありません。結局のところ、PCCは、届出義務違反があったと判断しました。PCCは、罰則として、この取引を無効とし、19,667,175.90ペソ(約4,100万円)の過料を当事者に科しました。

その後、当事者は過料を納付し、要求された届出をPCCに正式に提出しました。PCCは、実体審査を行った後、取引がフィリピン市場において競争の低減をもたらす可能性は低いと結論付けました。これにより、PCCは最終的に、当該取引に関してさらなる措置を講じないことを決定しました。

当事者は最終的に取引を進めることができましたが、それは、数百万の過料を納付した上でのことでした。そのため、フィリピンにおいて合併・買収取引を行う場合には、フィリピン弁護士に相談し、取引が届出義務の対象にならないことを確認するか、対象となる場合には、フィリピン競争法に基づき義務を遵守できるようにしてください。

2018/06/27

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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