知っておこうフィリピン法

第122回 フィリピンにおけるビジネス環境改善 

皆さん、こんにちは。Poblacionです。ドゥテルテ政権が推進する政策の1つは、一般向け行政サービスの提供において迅速性、利便性及び効率性を確保することです。ドゥテルテ大統領は最近、2018年ビジネス環境改善及び効率的行政サービス提供法(以下、「ビジネス環境改善法」といいます。)としても知られる、共和国法第11032号に署名しました。この法律は、政府による許認可手続の迅速化及び効率化を図るものです。

第16回コラム(お役所仕事撲滅への闘い)では、反官僚主義法(「ARTA」)、及び非効率性と汚職という一対の問題に対する同法を通じた政府の対策についてご紹介しました。ビジネス環境改善法は、ARTAの大幅な修正であり、既存の法律により実効性を持たせ、フィリピン国内における事業環境を改善するものです。ビジネス環境改善法の主要点を以下に挙げます。

全行政機関に、市民憲章の制定が義務付けられています。市民憲章では、以下のことを規定します。(i) 各種申請又は請求の要件チェックリスト、(ii) 特定のサービスを受けるための手順、(iii) 各段階の責任者、(iv) 手続の完了期限、(v) 申請人又は請求人が提示する必要のある書面、(vi) 料金、及び (vii) 苦情の手続。

政府の役人又は職員は、政府に対する申請又は請求の予備的評価及び提出された必要書類の適切性評価の期間中を除き、当該申請又は請求に関連して申請人又は請求人と一切接触してはなりません。政府が最終的に目指しているのは、事業登録オンラインシステムを構築し、そのシステムを通じてすべての行政手続が行えるようにすることです。申請手続自動化の目的は、申請人/請求人と直接接触する機会をなくすことにより、斡旋収賄や汚職の事例を減らすことです。

行政上の申請や請求の処理時間をさらに短縮しました。以前、ARTAでは処理時間について、簡単な手続の場合には5営業日以内、複雑な手続の場合には10営業日以内(請求されているサービスの性質によっては、あるいは一般的でない状況においては、延長もあり得る)としていました。ビジネス環境改善法では、処理時間について、簡単な手続の場合には3営業日以内、複雑な手続の場合には7営業日以内、としています。最長の場合でも、処理時間の延長は一度限りであり、同じ日数分までとされています。

公衆衛生、公衆安全性、公衆道徳、公序良俗に危険を及ぼす行為がかかわる申請又は請求の場合、及び技術性の高い申請の場合、所定の処理時間は20営業日以下としなければなりません。不可抗力事象及びその他類似する状況の場合、所定の処理時間は延長され、適切な調整が行われるものとします。

地方の行政機関(LGU)から事業許可証を取得するのは、往々にして面倒で複雑な手続です。なぜなら、事業許可証の発行は、建築許可、衛生許可、用途地域許可等、他の細かい様々な許可の取得を条件としているからです。ビジネス環境改善法は、ビジネス ワンストップ ショップ(BOSS)を創設し、関連するLGUによる許可、認可、証明又は承認を求める申請のすべてをここで受領し処理することにより、事業許可証及びその他必要な諸々の許可証の発行を迅速化することを目指しています。申請人による申請手続をさらに利便化するため、LGUには、ビジネス環境改善法の発効から3年以内に、営業許可システムを自動化して電子BOSSを立ち上げることが義務付けられています。

ビジネス環境改善法は、同法の掲げる目的が確実に達成されるよう、反官僚主義機関を創設しました。同機関は、国内の反官僚主義及びビジネス環境改善に関する国家政策の導入及び監督を統括しています。同機関には、ビジネス環境改善法に違反した政府の役人に対する捜査を開始し、告発する権限も与えられています。

ビジネス環境改善法に違反した場合、たとえば、正当な理由なく所定の期間内に行政サービスを提供しなかった場合など、違反した政府の役人は、以下のとおり処罰の対象となります。

初犯

6ヵ月の停職を伴う行政罰
ただし、犯罪行為が、フィクサーとの取引や共謀にかかわるものである場合、以下の罰則が適用される。

再犯

解雇、公職からの永久追放、退職給付金の没収、並びに1年から6年の懲役及び50万ペソから200万ペソの罰金という行政罰及び刑事罰

法律違反が収賄又は強要を伴うものであった場合、あるいは現金又は現物による便宜を求めるために意図的に悪意をもってなされた場合、科される可能性のある他の処罰が、上記罰則により軽減されることはありません。

この画期的法律は、フィリピンにおける事業運営を円滑にし、投資家の信頼感を増大させようというドゥテルテ政権の取組みの中で打ち出された主な対策の1つです。当然ながら、実際の実施はまた別の話であり、この新しいビジネス環境改善法が投資の増大及び手続費用の削減につながるかどうかは、大いに、政府による法律の執行状況次第となるでしょう。

2018/08/29

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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