知っておこうフィリピン法

第2回 汚れた資金の行方を追う: フィリピン資金洗浄防止法

皆さん、こんにちは。Poblacionです。フィリピンでは今、マネー・ロンダリングがホットな話題となっています。

最近、フィリピン控訴裁判所が、資金洗浄防止評議会(Anti-Money Laundering Council;「AMLC」)の申立を受け、フィリピンの政治家やその家族及び仲間が所有する銀行口座と保険証券に対して凍結命令を発行したためです。

現在、関係者に対する収賄容疑の調査が行われています。そこで、今回はマネー・ロンダリングについてお話することといたします。

全世界的なマネー・ロンダリングとの戦いにフィリピンも参加しこれを支援していく証として、2001年、フィリピン資金洗浄防止法(Anti-Money Laundering Act;「AMLA法」)が制定されました。AMLA法は、マネー・ロンダリングについて、違法行為(身代金目的誘拐、麻薬関連犯罪、収賄及び汚職、テロ行為等)による収益が合法的資金源に由来するものであるかのように見せかけることと定義し、これを刑事罰の対象としています。

違法行為から数百万ペソに及ぶ現金を稼いだ麻薬取引業者の例を見ていきましょう。その麻薬取引業者は、当局の注意を麻薬取引に向けさせることなく、資金を管理し利用する方法を見出さなければなりません。それにはどのような方法があるでしょうか?麻薬取引業者は、汚れた資金がいくつもの合法的事業や取引を辿っていくようにした後、本来の資金源を隠して銀行等の金融機関に資金を預けるという方法で、汚れた資金の「洗浄」を行います。例えば、麻薬取引から得た資金を少額ずつに分けて銀行に預け入れることで、検知されるのを回避することができます。麻薬取引業者は、事業(クラブやコインランドリー等)を立ち上げ、麻薬取引から得た資金をその事業に投資することにより、その資金が合法的事業活動に由来するものであるかのように見せかけることもできます。このような方法により、銀行等の金融機関は、疑うことなく汚れた資金の取引をします。当然ながら、汚れた資金の洗浄スキームにはこれよりはるかに複雑かつ洗練されたものもあります。

AMLA法による処罰の対象は、汚れた資金を取引する人物だけではなく、そのような違法手段で得られた資金の受渡し、取得、所持、利用又は隠匿をする人物や、マネー・ロンダリング実行の手助け、共謀又は助言をする人物も処罰の対象となります。マネー・ロンダリングで有罪となった者は、最高で7年から14年の懲役及びPhp3,000,000(約810万円)以上(但し、犯罪に関連した金額の2倍以上)の罰金が科されます。マネー・ロンダリングに対する罰則により、違法な犯罪行為に適用される罰則が軽減されることはありません。従って、上記のような例の場合、麻薬取引業者は、2つの別々の刑事告発、すなわちマネー・ロンダリングと麻薬取引の両方、を受けると考えられます。

マネー・ロンダリングを確実に防止するため、対象者(すなわち、フィリピン中央銀行、保険委員会及び証券取引委員会により規制されている人物及び機関、宝石取引業者、企業サービス提供業者及び管理会社等)には、KYC(= Know Your Customer;顧客確認)ルールを遵守し、顧客の正確な身元を確認するために必要な手段を確立する義務があります。この目的から、匿名口座、偽名による口座等は一切禁止されています。対象者には、顧客との取引を記録し、かかる記録を取引から5年間保管する義務もあります。最後に、もっとも重要なこととして、AMLA法は、全対象者に対し、「対象取引」、すなわち1営業日あたりPhp500,000(約135万円)を超える金額がかかわる取引の全てについて、AMLCへの報告を義務付けています。また、「疑わしい取引」の場合は、その金額にかかわらず、AMLCに報告する義務があります。「疑わしい取引」とは、法律上もしくは取引上の義務を伴わない取引、又は顧客の事業上もしくは財務上の能力に相応しないと思われる金額がかかわる取引等です。例えば、普通の道路清掃人が突然Php400,000(約108万円)に相当する優良株に投資した場合、道路清掃人の所得とその取引額とではかなり不釣合いであることから、「疑わしい取引」とみなされる可能性があります。この場合、証券会社には、法律に従い、この「疑わしい取引」をAMLCに報告する義務があります。

対象者が、(a) 対象取引又は疑わしい取引をAMLCに報告する義務があることを知りながら、この報告を怠った場合(b) 自己の全取引について記録を保管していない場合又は (c) マネー・ロンダリング取引に関する悪意ある報告や、かかる取引に関する完全に不当なあるいは誤った情報の届出をした場合にも、懲役及び罰金が科されます。

AMLCには、マネー・ロンダリングの違反行為について調査し、かかる違反を是正するための救済手続を開始することができるといった広範な権限が与えられています。AMLCは、違法行為に関連する金銭又は財産に対する一方的な凍結命令の発行申立を控訴裁判所に対して行うことができます。これにより、マネー・ロンダリングの疑いがある人物は、当局の調査が継続している間、犯罪から得た収益の消費、売却、譲渡又は隠匿ができなくなります。凍結命令の有効期間は20日間ですが、裁判所によって延長することもできます。AMLA法は、最高裁判所以外の下級裁判所及び上訴裁判所が、凍結命令に対する仮差止命令又は差止命令を発行することも禁止しています。

さらに、フィリピン銀行秘密法の例外という形で、AMLCは管轄権を有する裁判所の命令を受けて、銀行又は金融機関への特定の預入れ又は投資について調査もしくは検査を行うことができます。身代金目的の誘拐、麻薬関連犯罪、ハイジャック、放火による破壊行為、殺人及びテロ活動に関係する犯罪行為に関連してマネー・ロンダリングが実行された場合には、裁判所命令は必要とされません。AMLCが、ある資金又は財産について、何らかの点で違法行為に関連しているとする十分な理由が存在すると判断した場合、AMLCは没収手続を開始し、違法に取得された金銭を差押えます。

AMLA法では、マネー・ロンダリング被疑者の逮捕及び訴追における国際的な協力及び支援の手順も確立されています。従って、他国からフィリピンに対し、マネー・ロンダリング行為に関する他国での調査又は訴追への協力を要請することができます。要請を受けた場合、AMLCは、以下の方法で他国を支援することができます。 (a) 違法行為から得た収益であると主張されている資産の追求、凍結及び差押え、(b) 当該国が必要とする情報の提供及び(c) マネー・ロンダリングの対象である金銭又は財産を没収する裁判所命令の発行申立。

2015/7/13

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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