知っておこうフィリピン法

第22回 社外取締役の選任義務

皆さん、こんにちは。Poblacionです。今回は、社外取締役についてお話しましょう。

社外取締役とは、報酬や株式保有の点以外では会社経営から独立していて、また、事業上の関連性がなく職務遂行において取締役としての独自の判断に基づいて実質的に干渉することができる人物です。社外取締役の選任は、良好なコーポレートガバナンスを促進し、自己取引を行う取締役及び役員から少数株主を保護するためにフィリピン証券取引委員会(SEC)が講じている措置の一つです。また、社外取締役は会社経営から独立しているため、斬新なアイディアを提案したり、会社業務の監督に中立かつ公平な視点を提供することで、会社の成功に積極的貢献をするものとも考えられています。

上場の有無にかかわらず、全ての企業に対し、取締役会に社外取締役を置くことが推奨されています。ただし、特定の法人については、2名以上又は取締役会メンバー数の20%以上(いずれか少ない方)の人数の社外取締役を置くということがフィリピン証券規制法(SRC)で義務付けられています。特定の法人とは、以下に該当するものを言います。

・フィリピン証券取引所に上場されていて、そこで株取引が行われている会社

・5千万ペソ以上の資産を保有しており、100株以上の株を保有する株主が200名以上いる公開会社

・SECから副次的事業許可を取得している法人(ファイナンス会社、投資会社及びプリ・ニード会社(中低所得者向け金融商品の販売会社)等)で、自社のコーポレートガバナンス・マニュアルに、取締役会における社外取締役選任の慣行を採用している法人

[注:例外として、社外取締役を3名以上にするには、株取引が要件となります。また、銀行、保険会社等、他の規制対象会社にも、社外取締役を置く義務があります。ただし、これらの規制対象会社には、社外取締役の条件に関して異なる規則が適用されます。]

社外取締役として選任されるために最低限必要とされる資格はSRC規則では、以下通り規定されています。

・会社株式を1株以上保有していること

・学歴が大卒以上であること、又は対象会社の事業に5年以上携わっていること

・誠実かつ廉潔であり勤勉であること

・対象会社又はその関連会社もしくは主要株主企業(発行済み株式の10%を超える株式を保有する企業)の取締役もしくは役員ではないこと(これらの社外取締役である場合は除く)

・対象会社又はその関連会社もしくは主要株主企業のいずれかの株式を2%超保有していないこと

・対象会社又はその関連会社のいずれかの取締役、役員又は主要株主の親戚ではないこと

・対象会社又はその関連会社の取締役又は主要株主の名義人又は代理人として行為していないこと

・過去5年以内に、対象会社又はその関連会社から執行役員として雇用されていたり、職業顧問として採用されていたりしないこと

・対象会社又はその関連会社のいずれとも、対等取引や重要ではない取引以外のいかなる取引も行っていないこと

・選任日前の5年間に、6年の懲役刑が科される犯罪行為又はSRC違反行為について有罪の確定判決を受けていないこと

過去には、同じ人物を繰り返し社外取締役として選任する企業や、同じ企業グループ内の様々な社外取締役職に「お気に入りの人物」を選任する企業もありました。社外取締役の独立性及び公平性に疑問を投じるこのような慣行を終わらせるため、SECは近年、社外取締役に関して任期の制限と取締役重任の禁止を設けました。2012年から、社外取締役は同じコングロマリット内では、社内取締役としての就任は最大5社までとし、また、5年以上続けて社外取締役を務めることはできません。社外取締役として5年就任をした人物は、同じ会社の社外取締役の選任を受けられるのは2年後となります。さらに、合計10年間社外取締役を務めると、同じ会社の社外取締役としての選任を受けることは、半永久的に禁止されます。ただし、同じ会社で通常の取締役としての選任を受けることや、同じコングロマリット以外の会社において社外取締役として選任を受けることは可能です。

社外取締役の選任義務は、免責を受けられるものではありません。SECは、公開会社による当該義務の遵守を注意深く監視しています。例えば、2003年には、上場企業9社に対し、社外取締役の不選任によるSRC違反について、SECから理由開示命令書が発行されました。2013年には、選任された社外取締役が、その職には不適格であると判断され、資格剥奪の命令が下されました(その後SECは、これを再考しました)。さらにSECは、公開会社が社外取締役を選任しなかったり、不適格な社外取締役を選任した場合の罰金も科しています。初犯の場合にSECから科される罰金は5万ペソで、違反行為継続中は1日あたり200ペソが科せられます。その後も違反行為が繰り返されると、そのたびに罰金は増額されます。再犯の場合、企業に科される罰金は10万ペソで、違反行為継続中は1日あたり500ペソが科せられます。さらに3回目になりますと、罰金は15万ペソとなり、違反行為継続中は1日あたり1000ペソとなります。このことから分かるように、公開会社にとって法律を厳守し、取締役会に適格な社外取締役を選任することは、非常に重要なこととなります。

2015/10/15

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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