知っておこうフィリピン法

26回 技術移転契約に関する規制

皆さん、こんにちは。Poblacionです。今回は技術移転契約(TTA)について、どのようにすればTTAをフィリピンで確実に有効かつ執行可能なものとすることができるかという点について焦点をあて、お話していきましょう。

フィリピン知的財産法(IP法)において、TTAを「製品の製造、プロセスの応用又はサービスの提供に関する系統的知識の移転に関する」契約又は取り決め(管理契約を含む)及び「あらゆる形態の知的財産権の移転、譲渡又は使用許諾(大量市場用に開発されたコンピュータソフトウェア以外のコンピュータソフトウェアの使用許諾を含む)に関する」契約又は取り決めとして定義しています。商標ライセンス契約等のライセンス契約や、フランチャイズ契約も、通常TTAに分類されます。

なお、IP法に基づき、TTAには、競争を阻害すると考えられる規定が下記の通り禁止規定として定められています。

・ライセンサーが指定する特定の供給元からの資本財、中間財、原材料及びその他技術を調達、あるいは、ライセンサーが指定する人員を恒久的に雇用するといったライセンシーの義務

・ライセンスに基づき製造される製品の販売価格を決定するライセンサーによる権利の留保

・生産量及び生産構造に関する制限

・非独占的TTAにおける競合する技術の使用禁止

・ライセンサーにとって有利である、ライセンスの全部又は一部買取権

・ライセンス対象技術を使用して得られた発明又は改良をライセンサーに無償で譲渡するというライセンシーの義務

・使用されていない特許に対するロイヤルティ支払

・ライセンサーの合法的権利の保護という正当な理由のないライセンス製品の輸出禁止

・TTA終了後の技術使用制限(TTA終了の理由がライセンサーの責めに帰する場合を除く)

・TTAの期間満了後又は解除後の特許及びその他産業財産権に対する支払義務

・ライセンサー所有特許の有効性に異議を唱えないというライセンシーの義務

・研究開発の活動及び計画に対する制限

・ライセンシーに対する技術をローカルの条件に適合させること又は技術に革新をもたらすことの禁止(ライセンサーの規格を低下させない範囲での禁止)

・TTAに基づく自己の債務不履行に対する責任及び/又はライセンス製品もしくはライセンス技術の使用により提起された第三者訴訟に起因する責任からのライセンサーの免除

 

一方、IP法により、すべてのTTAには下記の必須規定を盛り込むことが義務付けられています。

・準拠法はフィリピン法とし、訴訟になった場合の裁判地は、ライセンシーが主たる事業所を構える場所に所在し管轄権を有する裁判所とする

・ライセンシーは、TTA期間中、技術に関連する技法及びプロセスにおける改良に継続的に関与できるものとする

・TTAに仲裁条項の規定をおく場合は、フィリピン仲裁規則、UNCITRAL仲裁規則又はICC仲裁規則が適用されるようにし、仲裁地はフィリピン又はいずれかの中立国とする

・TTA関連の支払にフィリピンの税金が課される場合は、ライセンサーの負担とする

TTAが商標ライセンス契約である場合は、商標が使用されるライセンシーの商品又はサービスの品質をライセンサーが実質的に管理する旨の規定を盛り込まなければならない

 

TTAに上述の禁止規定が含まれている場合、又は必須規定が盛り込まれていない場合、その契約は、知的財産庁(IPO)の承認を受けて登録されていない限り、自動的に執行不能となります。また、商標ライセンス契約に上記の特別規定が含まれていない場合、その契約は無効となります。

TTAについては、原則として、IPOの承認を受けてIPOに登録する必要はありません。TTAに禁止規定が一切含まれておらず、かつ上記必須規定が全て盛り込まれていれば、フィリピンで有効かつ執行可能なものとなります。

ただし、中にはIPOの承認を受けてIPOに登録する必要があるTTAもあります。
その具体例を以下に挙げます。

1. 禁止規定を含む、あるいは必須規定を含まないTTA
「例外的又は実質的事例」において、TTAの執行により経済が相当の恩恵を受けると思われる場合、IPOは、本来ならば執行不能であるTTAを認めることができます。これには、TTAがフィリピン国内に仕事を創出する場合や、フィリピン人ライセンシーの外貨所得が増大する場合が含まれます。新規TTAの場合、契約の締結日又は発効日のいずれか早い方から30日以内に、免責を求める請求をIPOに提出する必要があります。

2. 商標ライセンス契約
商標ライセンス契約は、IP法に基づき、IPOに届出がなされていないと、第三者対抗要件が具備されません。

3. 法律上IPOへの届出が必要なTTA
両当事者が、税条約の恩恵を受け、外国人ライセンサーに対するロイヤルティ支払に課される税金の軽減を求める場合は、TTAに関するIPOの登録証明書を提出することが内国歳入庁から要求されます。

IPOは、契約書案の条項がIP法の要件を満たしているかどうか(又は、契約書案がそもそもTTAに分類され得るのかどうか)を判断する予備的審査サービスも実施しています。予定していたTTAが後になってフィリピンで無効又は執行不能と宣言されることがないよう、IPOの予備的審査サービスの利用を是非お勧めします。

2015/11/12

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

お問い合わせ