知っておこうフィリピン法

27回 国内採用者と海外採用者の待遇差別について

皆さん、こんにちは。Poblacionです。今回は、国内採用者と海外採用者の待遇差別についてお話ししましょう。

フィリピン国内の会社で、外国籍従業員を雇うとします。その外国籍従業員にフィリピン国籍の従業員より高い給与を支払うことはできるでしょうか。この問題に対して、フィリピンの最高裁判所が画期的な判決を出したのが、International School Alliance of Educators対Quisumbing事件(G.R. No. 128845, 2000年6月1日判決)と呼ばれる事件です。この事件の当事者は、フィリピン国籍の教師と外国籍教師を雇っていたインターナショナルスクールです。このインターナショナルスクールでは、海外で採用した教師に、フィリピン国籍の教師より25%多い給与を支払っていました。また、海外採用者には、住宅、引越費用、税金、渡航費用等、国内採用者には認められていない手当も多く与えられていました。インターナショナルスクール側は、海外採用者には本国から引越をしてくる必要があるから、給与額に差があるのは妥当なことであると主張しました。また、海外採用者の在職期間は限定されており、雇用契約期間の満了後に本国に戻って適切な職に就けるかどうかの不安があることも主張しました。

国内採用者は、このインターナショナルスクール側の線引きに疑問を唱え、海外採用者に高い給与を支給するのは人種差別であると主張し、この労使紛争は最終的に最高裁判所まで持ち込まれました。

実際のところ、海外採用者に高い給与を支払うことを明示的に許可又は禁止する規定は労働法にはありませんが、「不平等や差別を認めないのが公の秩序である」と最高裁判所は指摘しました。平等の原則と差別の撤廃については、フィリピン憲法や様々な国際条約でも大いに強調されています。裁判所も、性別、労働組合の組合員と非組合員とで給与面の差別を行なうことを雇用者に禁止しているフィリピン労働法の規定を引用しました。これにより、「同じ仕事には同じ給与」という原則に従って、国内採用者と海外採用者が、実質的に同じ資格と技能を備え、同じ条件で仕事をしている場合、例えそのインターナショナルスクールに「国際性」という特徴があったとしても、給与は同じでなければならない、とされました。

上記のInternational School Alliance of Educators事件において、最高裁判所は国内採用者であっても海外採用者であっても、教師の役割や責任は同じであり、同じ就労条件で職務を遂行していると判断しました。海外採用者が国内採用者と比較して、効率面及び効果面で25%上回っているという実績を示す証拠の提示が一切なかったため、国内採用者と海外採用者の給与体系は同じにすべきであるとされました。また、海外採用者の引越や限定された在職期間という問題は、国内採用者に与えられていない特定の給付、すなわち、住宅手当、引越費用及び渡航費用の手当等により、既に適切に補償されているという見解を裁判所は示したうえで国内採用者と海外採用者は給与面で平等に扱うべきである、としました。最終的に最高裁判所は、海外採用者に国内採用者より高い給与を支払うインターナショナルスクールの慣行について、無効であることを宣言しました。

上記のことから、フィリピンの会社で国内採用と海外採用の従業員の雇用を計画する場合には、「同じ仕事には同じ給与」の原則に違反しないようにしなければなりません。国内採用者と海外採用者の資格が同等であり、同じ職種に就いて同様の職務を遂行するよう配属する場合には、海外採用者が外国籍であること、あるいは海外採用者であることを理由として、国内採用者より高い給与を支払うことはできません。もちろん、国内採用者と海外採用者の技能が異なる場合や、異なる職務を果たす場合には、合理的区分に基づいて給与が異なる体系を導入することができます。

尚、「同じ仕事には同じ給与」という原則における「給与」とは、基本給(すなわち、行なった業務に対する報酬)を想定したものであることを指摘しておきます。International School Alliance of Educators事件においても、海外採用者に対して引越手当を支給することについては、最高裁判所による無効宣言はありませんでした。従って、海外採用者に対して住宅手当、引越費用、税金及び渡航費の手当を支給することは可能です。ただし、これらの手当については、金額的に妥当であり、海外採用者に対する引越費用の払戻しや、フィリピンへの引越による機会費用の補償を実際の目的とするようにしてください。「同じ仕事には同じ給与」というポリシーを回避するための口実としての引越手当の給付は認められません。

2015/11/19

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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