知っておこうフィリピン法

42回 欠勤を理由に従業員を正当に解雇できる場合とは?

皆さん、こんにちは。Poblacionです。日本では、7月の第3月曜日は、海の日として休日になっています。海の日を「お祝いする」という経験は、私にとっては初めてでしたが、これを機に日本の歴史を少し辿ってみました。海の日とは、明治天皇が船による東北地方巡幸から戻られた日の記念日に由来しているそうです。こうした歴史的側面とは別に日本人は、海の大切さを祝し、海から受ける数多くの恩恵に感謝をします。そこで私もふと考えました。フィリピンも島国ですし、地域の生活や国家経済に海が果たしている役割は大きいのだからフィリピンでも、海の日をお祝いするべきでは?(フィリピンは既に祝日の多い国ですから、これにはおそらく多くの企業から反対の声があがるでしょう。)

さて、今回は、仕事がお休みになる祝日と少し関わりのある内容、欠勤についてお話します。

これまでのコラムでもお話しましたとおり、フィリピンの労働法上、重大かつ常習的職務怠慢は解雇理由になります。重大な怠慢とは、職務遂行における注意の欠如を意味します。一方、常習的怠慢とは、一定期間内に繰り返し職務遂行を怠ることです。重大かつ常習的職務怠慢の表れとして一般的な例の一つが欠勤です。

常習的な欠勤を理由として従業員を解雇するというのは、やや複雑です。というのも、どの程度の欠勤が解雇理由のうちの一つとみなされるかについて、労働法に具体的指針が示されていないからです。従業員が不利益を被ることなく欠勤できる日数の上限について、法律上の規定はありません。会社によっては、独自の欠勤規程とこれに違反した場合の罰則を定めています(無断欠勤15日で解雇とする、など)。その場合でも、裁判所の判断によって、会社の規程は「厳しすぎる」ため、解雇という罰則は従業員による違反行為に対して重過ぎるとされることもよくあります。

では、厳密にはどのような場合に欠勤が解雇理由になり得るのでしょうか?フィリピン最高裁判所が判断を下した以下の事件が参考になります。

1. Cavite Apparel, Inc. 対 Marquez (G.R. No. 172044、2013年2月6日)

本事件において、従業員は、それぞれ複数日に分けて3回、無断欠勤をしていました。2000年の5月8日及び5月15日~17日、従業員は病気により仕事を休み、これが4回目の違反行為とみなされこの従業員は解雇されました。最高裁判所は、この解雇について、不当と判断しました。裁判所は、従業員が会社に6年間勤めてきたこと、そして、勤続6年の間に4回、複数日に分けて欠勤していても重大かつ常習的とは言えないことを指摘しました。さらに、従業員による最後の無断欠勤は病気によるものであり、私用によるものではなかったことも指摘されました。これらの状況を踏まえ、裁判所は、従業員の解雇は不当であり、違反行為に対して重過ぎると判断しました。

2. Agullano 対 Christian Publishing(G.R. No. 164850、2008年9月25日)

本事件では、従業員は以下の理由で解雇されました。

(a) 2000年7月3日~8日、12日、22日及び24日に欠勤したこと
(b) 2000年5月及び6月に複数回、欠勤及び遅刻をしたこと
(c) 自分が会社を代表することになっていた重要な会議に欠席したこと

裁判所は、従業員が何も説明もせず欠勤や遅刻をしたことは重大かつ常習的な怠慢に該当する、として解雇には正当な理由があると判断しました。また、問題の従業員は管理職であり、単なる一般職員ではないことから、模範として会社の規則を守ることが期待される、ともされました。その一方で、裁判所は会社が労働法に基づく解雇手続に厳格に従わなかったとして、従業員の解雇は認めたものの、名目的損害賠償の支払を会社に命じました。

3. Zagala 対 Mikado Philippines Corporation(G.R. No. 160863、2006年9月27日)

本事件では、2名の従業員が会社の認めていた30日という休暇日数の上限を超えたことを理由に解雇されました。具体的には、一方の従業員は、合計でそれぞれ1995年に40日、1996年に34.5日、1997年に59.5日、欠勤しました。もう一方の従業員は、合計でそれぞれ1995年に32.5日、1996年に35日、1997年に40日、欠勤しました。裁判所は、解雇は不当であり、罰則は厳しすぎると判断しました。両従業員の勤続年数は7~8年であり、1995年、1996年及び1997年における欠勤以外に、咎められた違反行為はありませんでした。さらに重要なこととして裁判所が指摘したのは、会社の勤務規程には、解雇というもっとも重い罰則を課す前に、警告及び停職という罰則が規定されているにもかかわらず、その規定に従った、という事実が会社によって示されることがなかったという点です。

上記の事件からお分かり頂けるとおり、どのような場合の常習的欠勤が解雇理由となり得る違反行為に該当するのか、これを確実に即断できる規則はありません。従業員が出勤しなかった日を数えるだけでよい、というような単純なものではないのです。むしろ、状況を総合的に判断することが、会社には求められます。そのような状況には、以下のものが含まれます。

(a) 勤続年数に照らした欠勤回数
(b) 欠勤理由
(c) 従業員の欠勤が会社の運営に及ぼす影響
(d) より軽い罰則の有無
(e) 会社の規律
(f) 従業員の過去における違反行為
(g) 従業員の会社における地位

実際、解雇とは、会社が従業員に課すことができるもっとも重い罰則です。このような罰則を課すことができるのは、その欠勤の性質から、従業員が本当に重大かつ常習的職務怠慢の状況にある、と明らかに示せる場合に限られます。

以上のことから、フィリピンで事業経営をしていて従業員の欠勤という問題に悩まされているとしても、早まった行動を取ってはいけません。まずは状況を全て調査し、検討するようにしてください。労働法に定められた解雇手続(第3回及び第20回のコラムで説明致しました)にも必ず従うようにしてください。そうしないと、違法解雇の責任を負わされ、法律で定められた多額の罰金を支払わされることにもなりかねません。

 

2016/03/10

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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