知っておこうフィリピン法

第62回 フィリピン人になりたいですか?

皆さん、こんにちは。Poblacionです。私は昨年、長期休暇を利用して、フィリピンに一時帰国しました。当時は日本に来てからまだ2、3ヶ月しか経っていませんでしたが、母国に帰れると思うと本当に気持ちがわくわくしました。

私のフィリピンでやりたいことリストナンバー1は、日本ではなかなか出会うことのできない私の好物であるフィリピン料理を頂くことでした。その時の一時帰国では、レチョン(外はパリパリで中はしっとり柔らかいローストポーク料理です。)と、シシグ(茹でて細かく切った豚の顔、耳、肝臓をソースでマリネしたものです。珍料理に聞こえますが美味しいです。)と、フィリピン風の甘いスパゲッティを食べることができました。数ヶ月会えなかった友達や仲間と集まったりもしましたが、帰国のメインイベントは、家族との時間を過ごすことです。家族とは一緒に映画を見たり、ショッピングモールにでかけたり、地元に新しくできたレストランに行ってみたりもしました。楽しい時間はどうしてあっという間に過ぎてしまうのでしょうか。次回、帰国する機会がもう今から待ち遠しいです。

さて、仕事の話に戻りましょう。フィリピンでは、有力な大統領候補に関して公職への立候補要件であるフィリピン国籍の有無が問題となったこともあり、しばしば「国籍」について論じられています。マニラにいた時には、フィリピン国籍の取得、喪失及び再取得の方法に関する様々なニュース、記事及び議論を見聞きしました。そこで今回は、少し関連する話題、外国籍の者によるフィリピン国籍取得が可能かどうかについてお話しましょう。

ひと言で申しますと、答えは「イエス」です。外国籍の者でも「帰化」してフィリピン国籍を取得することができます。その方法は単純ではありますが、簡単ではありません。外国籍の者がフィリピン国籍を取得する方法には、以下の3つがあります。

(a) 立法手続による帰化
(b) 司法手続による帰化
(c) 行政手続による帰化

・立法手続による帰化 – 多大な社会的貢献をした外国籍の者は、上院議員又は下院議員に自分のための市民権法を主唱してもらうことにより、フィリピン国籍を取得することができます。ただしこれは、外国籍の者の誰もが取れる選択肢ではありません。実際、この特権は、ごく少数の著名な人物にしか認められていません。また、市民権法も、他の法律と同様に通常の立法手続を踏む必要があり(すなわち、下院及び上院の両方による法案の可決と大統領による承認が必要です)、これには時間と労力がかかります。市民権法案が迅速かつ順調に承認され制定されるためには、提案者に十分な政治的影響力が必要となります。

・司法手続による帰化 – 司法手続により帰化できる申請人の要件は以下のとおりです。

-21歳以上であること。
-フィリピンに10年以上継続して居住していること。特別な場合(フィリピン人と結婚している外国籍の者の場合など)には、居住期間の要件が5年に短縮されます。
-善良な性格の持ち主であり、フィリピン憲法の基本原則を信じ、適切で申し分のない行動をする者であること。
-フィリピン国内に5,000ペソ以上の価値の不動産を所有しているか、収入の多い商売や仕事をしていること。
-英語/スペイン語及びフィリピン語で話したり書いたりできること。
-未成年の子をフィリピンの歴史、政府及び市政学について学べる学校に通わせていること。

一方、以下に該当する人はフィリピンに帰化することはできません。

-政府組織に反対する者
-自分の考えを推進する方法として、暴力に訴える者
-一夫多妻主義者
-非道徳的な行為のかかわる犯罪で有罪宣告を受けた者
-精神病又は不治の伝染病に罹患している者
-フィリピン人との社会的交流がない者
-(戦時下において)フィリピンと戦争状態にある国の国籍を有する者
-フィリピン人に帰化及び国籍取得の権利を法律上認めていない国の国籍を有する者

司法手続による帰化の主な障害は、他の裁判所手続と同様に、帰化の手続が完了するのに何年もかかることでしょう。申請人はまず、フィリピン国籍を取得したいという意思宣言書を司法省に提出します。宣言書の提出から1年以内に、正式な申立を裁判所に提出します。申立は公告され、通常の事件のように審理が行われます。申請人に全ての適格性が備わっており、不適格事項が1つもないと裁判所が判断した場合は、フィリピンに対する忠誠の宣誓を行うよう指示し、その後、帰化証明の発行を命令します。

・行政手続による帰化 – 行政手続による帰化の特権を利用できる申請人の要件は、以下のとおりです。

-フィリピン国内で出生し、出生以来フィリピン国内に居住していること
-18歳以上であること
-善良な性格の持ち主であり、フィリピン憲法の基本原則を信じ、適切で申し分のない行動をする者であること
-フィリピンの歴史、政府及び市政学について教えており、入学者を一部の人種又は国籍の者に限定していない学校で教育を受けていること
-十分な収入が得られる事業又は職業を有していること
-フィリピンの地方語のいずれかで読んだり書いたり話したりできること
-フィリピン人との交流があり、フィリピンの習慣、伝統、理想を学び身に付けたいと真剣に希望していること

なお、司法手続による帰化について規定されている不適格事項は、行政手続による帰化の場合にも適用されます。

申請書は、裁判所ではなく、帰化に関する特別委員会(検察総長、外務大臣及び国家安全保障アドバイザーで構成)に提出するため、司法手続による帰化と比較すると、行政手続による帰化の方が早く処理されると思われます。申請人は、手続費用として40,000ペソを支払う必要があります。申請が認められると、100,000ペソの帰化手数料を支払い、フィリピン共和国への忠誠を宣誓することになります。その後、帰化証明が発行されます。

帰化手続では、全法的要件の充足について、申請人に立証責任があります。実際、申請人の申立に不備があったり、申請人が適格性を備え不適格事項に該当しないことを証明する十分な証拠を提示しなかったりしたことを理由に、帰化申請が却下されることも多々あります。もし、フィリピン国籍取得の申請をお考えでしたら、申立の主張が正しいこと、重大な事実の欠落がないこと、そして申立に必要な書類が全て添付されていることをよく確認する必要があります。

帰化が認められた外国籍の者には、外国籍の放棄が要求されます。おそらくこれが、外国籍の者が遵守すべき義務の中で最も厳しい(そして最も個人的な)ものでしょう。もし母国との絆を断ち切りたくなかったら、フィリピンの居住権取得(以後のコラムでお話しします)など、より柔軟な選択肢を考えてもよいでしょう。

 

 

2016/08/12

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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