知っておこうフィリピン法

67回 婚約破棄について

皆さん、こんにちは。Poblacionです 。ロマンチックコメディー映画を鑑賞することは、私にとって密かな楽しみの1つです。軽妙でおかしくて、大抵は、主役の男性が主役の女性と恋に落ちる、というハッピーエンドになっています。憂鬱な気分のときに、そんな風に前向きで心地良い映画を見ることによって、元気をもらっています。
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「密かな楽しみ」と言ったのは、ありふれた筋書きと会話からなるロマンチックコメディーを好まない方もいることを知っているからです。たとえば、ロマンチックコメディー映画で定番の筋書きの1つは、主役(普通は主演女優)が結婚式の当日、式場で振られるというものです。こうして恥をかいた出来事がトラウマとなり真剣な交際ができなくなってしまった女性が、ある男性に出会い、彼のおかげで恋愛に対する見方を変えていきます。2人はやがて交際するようになり、その後はお分かりのとおり、です。

実際の暮らしの中では、ロマンチックコメディー映画の場合とは違って、婚約破棄はそれほどあることではないでしょう。しかし、ありえないことではありません。実際にフィリピンでは、婚約者に振られた女性が訴えて最高裁判所まで行ったケースがいくつかあります。女性達が、愛と結婚の約束を破った男性達を訴え、損害賠償金の支払いを求めたのです。振られた女性の恨みほど怖いものはありません

では、実際にフィリピンで、婚約を破棄したことを理由に相手を訴えることはできるのでしょうか?一般的には、その答えはノーです。フィリピン法上、婚約破棄は、訴訟の対象とはなりません。結婚の約束をした人が、その約束を破られたからといって相手を訴えることはできません。なぜなら、2人は、愛があるから結婚するのであって、どちらかが婚約を破棄した場合に訴えられることを恐れて結婚するものではないはずだからです。婚約に法律上の拘束力をもたせることは、婚姻とは自由にかつ自発的に成立すべきものである、という規定に反することになります。フィリピンの立法府も、そのような訴訟は悪用される可能性が高いという意見でした(言うまでもなく、簡単にでっち上げることができます)。このことから、最高裁判所は、数多くの婚約破棄事件を却下し、失恋した婚約者に対する損害賠償金の支払いを認めることを拒否してきました。

しかし、当然ながら例外もあります。婚約破棄自体は訴訟の対象とはなりませんが、付随する状況が損賠賠償請求権を発生させる場合もあります。実際、振られた婚約者に対する損害賠償金の支払いが最高裁判所によって認められた2つの非常に興味深い事件があります。

・公序良俗に反する約束の破り方
VとWは、9月4日に結婚式を挙げることになっていたため、その一大イベントを控え、2人は一般的な結婚式の準備をしました。結婚許可証を取得したり、招待状の印刷や送付をしたり、ウェディングドレスや花嫁介添人のドレスを購入したり、夫婦用のベッドを購入したり、結婚を祝福するパーティーを開いたり、などです。ところが、結婚式の2日前、新郎となるはずであったVが、新婦となるはずであったWにメモを残して突然帰省しました。メモには、彼の母親が結婚に反対しているため、結婚式を延期する必要がある、と書かれていました。その翌日には、VからWに電報が届き、「何も変わらないから安心して。すぐに戻る。」とありました。しかし、結婚式当日に(そして、その後一切)Vは姿を現しませんでした。

この事件において裁判所は、婚約破棄が訴訟対象になり得る不法行為ではないことは認めましたが、正式に結婚式の日取りを決め、結婚式の準備や通知も全て行っていたにもかかわらず、結婚式当日になってただ逃げ出すというのは、単なる婚約破棄とは言えない、としました。これは、明らかに正当な理由なく公序良俗に反する行為です。Vは、フィリピン民法第21条に規定された損害賠償金の支払いを命じられました。同条には、以下のとおり記載されています。「公序良俗に反する形で故意に他人に損失又は損害をもたらす者は、当該他人に対して損害を賠償するものとする。」

・結婚を約束した目的は女性の誘惑
Bは、評判が良く、立派な若い女性であるGに交際を申し込み、結婚のプロポーズをしました。Gは、結婚を条件にBの愛を受け入れました。Bが結婚を約束したため、それまで男性経験のなかったGは、Bと一緒に暮らし男女の関係となることに同意しました。しかし、数週間後、Bはプロポーズを撤回し、Gに同棲の解消を求めました。その時点で、Bは既に他の女性と交際していたようです。

裁判所は、BはGに対する損害賠償責任を負うべきと判断しました。この結婚の約束は、BがGと男女の関係をもつために考え出した策に過ぎませんでした。GはBの約束があったからこそ、初めてBと男女の関係をもったのです。実際のところ、BにはGと結婚するつもりはありませんでした。裁判所は、婚約破棄という理由ではなく、その背後にあった詐欺と欺罔を理由として、損害賠償金の支払いを認めることは正当である、と判断しました。

結婚とは、真剣に考えて準備すべきものです(離婚が認められないフィリピンでは特に!)。もしあなたが、正当な理由から計画している結婚に懸念を抱いている場合、結婚式を延期したりキャンセルしたりしても、そのことだけで訴訟に直面することにはならないのでご安心下さい。もちろん、プロポーズを撤回する場合には、できるだけ思いやりをもって誠実に行うべきです。公序良俗に反するような形で行ってはいけません。さもないと、誰かの心を空っぽにするだけではなく、自分の銀行口座も空っぽにしてしまうことにもなりかねません。

2016/09/15

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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