知っておこうフィリピン法

第78回 フィリピンにおける外国仲裁判断の執行

皆さん、こんにちは。Poblacionです。以前のコラムで、フィリピンにおける外国判決の執行に関する規則についてお話しました。今回は、フィリピンにおける外国仲裁判断の承認及び執行の方法についてお話しいたします。

フィリピンは、外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約、いわゆる「ニューヨーク条約」の加盟国です。この条約の加盟国には、他の締結国で下された仲裁判断の拘束力を承認し、その仲裁判断を、自国の仲裁法及び仲裁規則に記載された一定の条件に従って、国内の仲裁判断と同様に、執行する義務があります。よって、同じくニューヨーク条約の加盟国である日本で下された仲裁判断は、フィリピンでも拘束力が認められ、執行することができます。

外国仲裁判断の承認及び執行に関する手続要件

外国仲裁手続の当事者であれば、外国仲裁判断の承認及び執行を求める申立書をフィリピンの裁判所に提出することができます。その提出先は、申立人の選択に応じ、以下に所在する地域裁判所とすることができます。

(a) 差押え対象資産の所在地
(b) 禁止される行為の実施場所
(c) 当事者のいずれかのフィリピン国内における主たる営業所所在地
(d) 個人当事者のいずれかの居住地
(e) 首都圏司法管区

なお、申立書には少なくとも、仲裁当事者及びその住所、仲裁判断が下された国(当該国がニューヨーク条約の締結国であるか否かを含む)、及び求める救済措置を記載しなければなりません。さらに申立書には、仲裁契約と仲裁判断の真正な写しを添付する必要があります。これらの書類が英語で記載されていない場合は英訳も必要であり、その英訳には公的翻訳者又は外交官もしくは領事代理による認証が必要です。

申立書が提出されると、裁判所から被申立人に対して、通知と申立書の写しの提供が行われます。被申立人は、通知の受領から30日以内であれば、申立に対する異議申立を提出することができます。その後裁判所は両当事者に法的メモランダム(主な争点が法律問題である場合)又は証人の宣誓供述書(主な争点が事実問題である場合)の提出を要求することもできます。必要に応じ、裁判所が審理の場を設けることもあります。裁判所には、この種の審理を優先して遅滞ない審理を確実に行うことが要求されています。外国仲裁判断の承認及び行使の手続全体は、申立に対する異議申立の有無にもよりますが、約2年程度かかります。

裁判所は、外国仲裁判断の承認又は執行を拒絶すべき理由がない限り、その承認又は執行をしなければなりません。外国仲裁判断を承認し執行するという裁判所の決定は、直ちに執行されます。

承認及び執行の拒絶

裁判所による仲裁判断の承認/執行手続には、以下の2通りしかありません。

(a) 仲裁判断を承認及び/もしくは執行する
(b) 承認/執行を拒絶する

裁判所が仲裁判断を覆したり、修正したりすること、又は外国仲裁廷の判断に代わる判決を自ら下すこと、はできません。

なお、フィリピンの裁判所はニューヨーク条約に従い、以下理由のいずれかに基づき仲裁判断の承認及び執行を拒絶することができます。

・仲裁契約の一方当事者に法的能力が欠けていること、又は契約が法律上無効であること

・仲裁判断の執行を受ける当事者が、仲裁人の任命、仲裁手続について適切に通知されていなかったか、自己の主張を提示できなかったこと

・仲裁判断が、仲裁に付託された範囲から外れた係争を扱うものであるか、付託の範囲を超える事項に関する決定を含むこと

・仲裁廷の構成又は仲裁の手順が両当事者間の契約又は仲裁が行われた国の法律に従っていないこと

・仲裁判断が両当事者を拘束するに至っていない、又は判断が下された国の裁判所によって停止もしくは中止されていること

・フィリピン法に基づいた係争の主題事項の解決又は仲裁ができないこと

・仲裁判断の承認又は執行が公序に反するものとなること

 

また、裁判所は以上に列記した理由以外の理由に基づく異議申立については、無視すべきこととなっています。

上級裁判所への控訴

仲裁判断の承認/執行を確認又は拒絶する裁判所の決定に対しては、控訴裁判所への上告、そしてさらに最高裁判所への上告ができます。仲裁判断を承認/執行する判決を不服として控訴する当事者には、勝訴当事者を受取人として裁定金額と同額の担保金を供託する義務があります。

仲裁判断の執行

申立が裁判所に認められると、外国仲裁判断は、フィリピンの裁判所の確定判決と同様に執行できます。つまり、勝訴当事者は、裁判所執行官による外国仲裁判断の実施支援等、裁判所手続を利用できるようになります。

2016/12/06

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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