知っておこうフィリピン法

第79回 不倫はいけません!

皆さん、こんにちは。Poblacionです。最近のフィリピンの映画やテレビドラマでは、不倫がテーマになっていることが大変多いようです。理由はわかりませんが、愛人や不倫に纏わる映画が増えています(一部を例に挙げますと、「The Legal Wife」、「Etiquette for Mistresses」、「The Mistress」、「My Neighbor’s Wife」、「No Other Woman」等々。日本でいうと昼ドラも同じように多いですよね。)。この増加傾向が、現実の人々の暮らしを反映したものではないことを祈ります・・・。

もし、配偶者による不貞行為があっても、絶望しないでください!フィリピン法には、不貞行為をされた配偶者が自分の権利を守ることのできる様々な救済措置が、規定されています。
本日は以下に、その方法をいくつか説明していきましょう。

1. 不貞行為をした配偶者とその相手の両方を、姦通又は内縁関係を理由として刑事告訴すること

ここで、姦通(adultery)とは、既婚女性が夫以外の男性と関係を持つことを言い、内縁(concubinage)とは、既婚男性が愛人を囲ったり不適切な状況で愛人と性的関係を持ったりすることを言います。いずれの場合も、不倫相手/愛人は、不貞行為をした配偶者と共に、刑事告訴の対象として裁判を受けます。
姦通又は内縁関係を理由とする刑事告訴を救済措置として求めることは一般的に行われています。罰則が懲役刑であることが、その主な理由です。姦通の罰則の方が、内縁関係に対する罰則に比べてやや厳しいことも、興味深いと言えるでしょう。これは、間違いなくダブルスタンダードです。しかし、女性が姦通罪を犯し妊娠した場合には、別の男性の子供であることを隠して家族の一員に加えることが可能であることから、このような措置の違いには正当な理由がある、とも言われています。そのような場合、不貞行為をされた夫は、自分の子供ではないことを知らずにその子供を扶養し、自分の名字を名乗らせなければいけなくなるのです。
フィリピン法上、不貞行為を許したり認めたりすると、姦通又は内縁関係を理由とする訴追が妨げられることになります。妻が他の男性と親しい関係にあったことを知っているにもかかわらず、夫が妻を許し、妻との生活を続けていた場合、その夫は妻を姦通罪で刑事告訴することはできなくなります。

2. 不貞行為をした配偶者とその相手を重婚罪で刑事告訴すること

不貞行為をした配偶者がその愛人/不倫相手と結婚した場合、不貞行為をされた配偶者は、重婚罪で刑事告訴することができます。重婚罪の罰則は、姦通や内縁関係に対する罰則よりやや厳しいです。また、姦通や内縁関係に対する刑事告訴の場合と異なり、不貞行為をされた配偶者が許したり認めたりした場合でも、一切関係なく、不貞行為をした配偶者は刑事責任を免れません。その理由は、処罰の対象となる行為が、不貞行為ではなく、無効で価値のない虚偽の婚姻契約を公的記録に載せたことによりもたらされた混乱や無秩序であるからです。

3. 不貞行為をした配偶者を、女性とその子どもに対する暴力禁止(暴力禁止法)、すなわち共和国法第9262号違反を理由として刑事告訴すること

妻に精神面又は感情面で苦痛を与えた夫の不貞行為は、心理的暴力とみなされて暴力禁止法違反による刑事告訴の理由となり、不貞行為をした夫は、これにより懲役及び罰金の刑を科される可能性があります。

なお、上記1から3に関して、フィリピン刑法は、性質上「属地主義」であることにご留意ください。すなわち、フィリピンの裁判所は原則として、フィリピン領域内で実行された犯罪についてのみ、管轄権を有します。逆の言い方をしますと、犯罪が海外で実行された場合には、当事者の一方又は両方がフィリピン国籍を有する者であっても、フィリピンの裁判所には管轄権がありません。そのため、既婚女性が不倫相手と関係を持ったり、既婚男性が海外で愛人と暮らしたりしていた場合、フィリピンの裁判所でその事件の裁判をすることはできません。不貞行為をした配偶者が海外で第2の婚姻契約をした場合も、フィリピンで重婚罪に問われることはありません。また、不貞行為をした配偶者とその相手を刑事事件で訴追するためには、その二人がフィリピン国内にいることも必要です。

4. (婚姻上の義務の遵守における心理的無能力を理由として)婚姻の無効を求める、あるいは、婚姻の無効は望まないが配偶者との法的別居を希望する場合には法的別居を求める、民事訴訟を提起すること

フィリピンでは、不貞行為が、婚姻を無効にしたり、法的別居を求めたりする理由の1つに挙げられることがよくあります。法的別居の申立は、不貞行為があっただけで十分認められますが、婚姻の無効を申し立てる場合、不貞行為をされた配偶者は、不貞行為の他に、不貞行為をした配偶者がその婚姻上の義務の遵守において実際に心理的無能力者であったことを証明する他の証拠も提示しなければなりません。

5. 不倫相手/愛人に対して「第三者による夫婦の離間」に対する損害賠償を請求する民事訴訟又は不正行為に基づく訴訟を提起すること

民法上、他人の個人的生活や家族関係に干渉したり支障を与えたりした者は、損害賠償責任を負わされることがあります。ただし、このような救済を求めることは、可能であるものの、選択肢として一般的ではありません。なぜなら、損害賠償請求訴訟には時間がかかり、膨大な訴訟費用が、裁判所によって通常認められる少額の損害賠償金と見合わないからです。

結婚生活には困難がつきものです。傷ついたり悩みの種を抱えることだけではなく、刑務所で生活することを避けるには、浮気はせず、多少嫌なことがあっても努力して結婚生活を送り、配偶者に忠実でいた方がきっと良いでしょう!

2016/12/08

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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