知っておこうフィリピン法

第86回 良い「パパ」はどっち?

皆さん、こんにちは。Poblacionです。フィリピン人は、甘党で甘い物なら何でも好きなので、食べ物に砂糖をたっぷり入れます。たとえば、「フィリピン式スパゲッティ」はフィリピン人のパーティーでは定番のメニューですが、フィリピン人はスパゲッティソースに大量の砂糖を混ぜるので、普通のイタリアのスパゲッティに比べてかなり甘い味になっています。また、フィリピン人の甘い物好きを示すもう一つの食べ物が、「バナナケチャップ」です。これはフィリピンでよく使われる調味料で、その食感や色や見た目は、普通のトマトケチャップと似ていますが、大きな違いは、バナナケチャップのほうが普通のトマトケチャップよりずっと甘いということです(私の個人的な意見では、もっと美味しいです)。

バナナケチャップと言えば、最近、人気商品であるバナナケチャップブランド(PAPAバナナケチャップ)のメーカーである食品会社が、種類の違う調味料にPAPAという語句を使用しようとした別の大手食品会社を相手方として、大きな商標事件を起こし、勝訴しました。

まず、事件の背景について簡単にご説明しましょう。「PAPA」という商標は、1954年というかなり早い時期に、PAPAバナナケチャップの創業者であるNeri Papa氏が最初に使用しました。その後、このブランドは様々な人や企業に売却され、最終的にフィリピンの大手食品メーカーであるNutri-AsiaがPAPAバナナケチャップの製品ラインを買収しました。そしてその過程で、PAPAバナナケチャップの製品ラインの所有者/権利承継者らによって、PAPA商標及びその派生商標が知的財産庁に登録されました。以下が、その登録例です。

 

PAPA

PAPA

PAPAラベルデザイン

PAPA KETSARAP

http://www.wipo.int/branddb/ph/jsp/data.jsp?KEY=PHTM.032416&TYPE=JPG&qi=1-afSdWoNEpWqJidC9f7%20MTzHUniY%20NS0mMkuzGLlcjCo=

http://www.wipo.int/branddb/ph/jsp/data.jsp?KEY=PHTM.42005010788&TYPE=JPG&qi=1-EJKpWx1sLsr/zGlUg/2b6WsTPy45lIOu%20DTGQF1Sg0k=

http://www.wipo.int/branddb/ph/jsp/data.jsp?KEY=PHTM.42006012364&TYPE=JPG&qi=5-afSdWoNEpWqJidC9f7%20MTzHUniY%20NS0mMkuzGLlcjCo=

2002年、フィリピンの別の有名な食品会社であるBarrio Fiestaが、レチョン(豚の丸焼き料理)ソースを指定商品として記載し、商標「papa boy(+図案)」を出願しました。商標「papa boy(+図案)」の外観は以下のとおりです。

テキスト ボックス:    そして、レチョンはこちら。美味しいです!http://www.wipo.int/branddb/ph/jsp/data.jsp?KEY=PHTM.42002002757&TYPE=JPG&qi=9-afSdWoNEpWqJidC9f7%20MTzHUniY%20NS0mMkuzGLlcjCo=

 

予想どおり、Nutri-Asiaは、商標「papa boy(+図案)」の出願に異議を申し立てました。同商標に「papa」という語が使用されていることにより、商標「papa boy(+図案)」の付されたBarrio FiestaのレチョンソースがNutri-Asiaの「PAPA」ブランドの製品ラインのものであるとの混同を一般消費者に生じさせ、欺罔する可能性がある、というのが主な理由です。

Barrio Fiestaは、混同の可能性はないという自らの立場を主張しました。その主な理由は、 (1) 「PAPA」商標の殆どが、バナナケチャップを具体的な対象として登録され使用されているため、Nutri-Asiaの「PAPA」商標使用権は、バナナケチャップに限定されること(よって、レチョンソースには及ばないこと)、(2) 両者の商標が(語句、外観、称呼、形式等において)明らかに非類似であるため、「papa boy(+図案)」商標が「PAPA」商標と混同される可能性はないこと、及び (3) PAPAは、一般的に使用される接頭辞であるため、一人が独占使用すべきではないこと、でした。

知的財産庁は、Nutria-Asiaの主張を認める決定を下し、Barrio Fiestaによる「papa boy(+図案)」商標の登録を認めませんでした。しかし、この紛争が控訴裁判所に上告されると、知的財産庁の決定は覆され、「papa boy(+図案)」商標と「PAPA」商標は混同を生じさせるほど類似していないとの決定が、裁判所によって実質的に下されました。

その後、事件は紛争裁定の最終機関である最高裁判所に提起されました。控訴裁判所の判決は、最高裁判所によって覆され、Barrio Fiestaによる「papa boy(+図案)」商標の登録は、最終的に阻止されました。「PAPA」商標に対する優先的権利はNutri-Asiaにあると決定するにあたって最高裁判所は特に、以下の判断を述べました。

•papaは、「papa boy(+図案)」商標の顕著な特徴部分である。papaという語句は、商標の一番上に記載されているため、最初に一般消費者の目に留まるのはこの語句の部分である。「papa boy(+図案)」商標の中で視覚的にも聴覚的にも最も顕著な部分は、「papa boy」という語句であり、消費者が直ちに想起するのはこの部分である(豚のキャラクターの画像ではない)。要部テスト(第29回コラム参照)を行なえば、Barrio Fiestaの「papa boy(+図案)」商標は確かに、Nutri-Asiaの「PAPA」商標と混同を生じさせるほど類似している。

•「papa boy(+図案)」商標は、家庭の日用品(レチョンソース)に関するものであり、その場合、特に気にする購買者でなければ、細心の注意を払って吟味するということはない。Nutri-Asiaの製品も、同じ食料品の通路に似たようなパッケージで置かれるため、一般公衆は、Nutri-Asiaがレチョンソースを含むまで製品ラインの枠を拡げ、「papa boy(+図案)」商標がPAPAのソースシリーズに含まれるようになった、と考えるであろう。

•PAPAとは父親への愛着を示す一般的な用語であるから独占的に使用させることはできない、という議論は成り立たない。Nutria-Asia(及びその権利の被承継会社)は、(父親と同義語である)パパを登録したのではなく、ブランド創業者の名字であるPAPAを登録したのであることを、裁判所からBarrio Fiestaにあらためて指摘する。

•結局のところ、Barrio Fiestaは、自社のレチョンソースの商標を決めるにあたり、限りない数の語句や語句の組合せから選ぶことができた。Barrio Fiestaが単にPAPAを採択し、PAPAバナナケチャップブランドの所有者らが築いてきた名声と評判から利益を得ることは認められない。そのような行為は、フェアプレーという基本的要件に反する。

 

上記の件から学ぶべき教訓は、商標を採択する際には、相当の注意と創造性を駆使しなければならないということです。調味料、食品、化粧品類等、家庭の日用品である製品に商標を使用する場合はなおさらです。商標は、できる限り、既存ブランドとは異なり、識別可能なものにしましょう。さもなければ、費用のかさむ訴訟に巻き込まれた末、商標が拒絶されるという結果にもなりかねません。

 

 

2017/02/06

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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