知っておこうフィリピン法

第88回 フィリピンでの事業閉鎖

皆さん、こんにちは。Poblacionです。良い事には全て終わりがある、とよく言われます。もし、フィリピンでの事業を閉鎖し、フィリピン子会社を解散しようとお考えでしたら、その手続は、思っていらっしゃるほど簡単ではないかもしれません。実際、会社の解散は、会社の設立より手間と時間がかかります。今回は事業閉鎖についてお話しましょう。

まず、解散手続で最初にすることは、計画している解散に必要とされる取締役及び株主の承認を得ることです。会社の解散を決定するには、取締役の過半数及び発行済み株式に係る株主の3分の2以上による賛成票が必要です。解散承認の採決を行なう会議の招集通知や(解散方法に応じた)解散自体に関する通知は、広く流通している新聞の紙面で、週1回、3週間連続で公告する必要があります。

その後、会社は、内国歳入庁(BIR)から納税証明書を取得します。これは、会社がフィリピンにおける事業を閉鎖する前に、政府に対する納税義務を完全に果たしていることを確実にするためです。納税証明書を申請すると、事業閉鎖までの課税対象年のうち監査が済んでいない全ての年について、BIRによる監査が自動的に行なわれることになります。そのため、順調に税務監査を進めるためには、会社の帳簿に不備がないように、そしてBIRに未納付の税金がないように確実にしておくことが、非常に重要です。通常、解散に関する手続全体の中の必要事項のうち、最も時間のかかる手続は、このBIRからの納税証明書取得のプロセスです。

会社は、BIRへの納税証明書の申請と同時に、またはこれにすぐ続けて、他の許認可の取消手続も開始しなければなりません。例えば、会社が許可を申請した全ての政府機関に承認を求めるか、許可取消を正式に申請します。これには、会社が本社を構える地方自治体による許可(すなわち、営業許可又は市長の許可)、並びに投資促進機関(フィリピン経済特区庁(PEZA)等)及び政府社会福祉機関(社会保障機構(SSS)、フィリピン健康保険公社(PhilHeath)及び持家促進相互基金(PAG-IBIG)等)における登録が含まれます。各政府機関でそれぞれの必要項目及び解散手続を定めていますので、解散に必要な具体的手続については、関連の政府機関にお問い合わせください。

従業員に対して会社は、雇用終了発効日の1ヶ月以上前に、対象となる従業員宛に書面による解雇通知を送達し、同じ時期に労働雇用省にも従業員の解雇を報告しなければなりません。会社には、従業員に退職手当を支給する義務もあります。事業閉鎖の場合、労働法に定められた退職手当の最低額は、1ヶ月分の給与額又は勤続年数1年あたり1/2ヶ月分の給与額のうち、いずれか高い方の金額になります。ただし、事業閉鎖の原因が重大な事業損失である場合、会社に退職手当支給の義務はありません。

一般的に最後の手続となるのは、証券取引委員会(SEC)に対する会社解散の正式申請です。会社法に基づき、会社が自ら解散する方法には、以下の3つの方法があります。

・影響を受ける債権者がいない場合、必要な取締役会及び株主の承認を取得し、公告義務も遵守した上で、解散を裏付ける必要書類を単にSECに提出するという方法。
SECから解散証明書が発行された時点で、解散の効力が生じます。

・債権者が影響を受ける場合、SECに正式な解散の申立を提出する方法。
申立は公告され、審問が行われます。手続の過程で、債権者には、反論の機会が与えられます。申立が適法であれば、SECは会社解散の決定を下します。

・定款の修正により会社の存続期間を短縮する方法。
これは、最も一般的な会社の解散方法です。修正された定款がSECによって承認された時点又は短縮された期間の満了時点のいずれか遅い方の時点で、会社は解散されたとみなされます。

 

解散がSECによって正式に承認された後、会社の取締役又は清算人は、会社の資産の清算、会社の債務の支払、及び会社の株主に対する残余財産の分配という手続を進めることができます。

上記の通り、解散や清算は、手間と時間のかかる手続であると言わざるを得ません。ですので、フィリピンにおける事業の閉鎖をお考えになる場合には必ず、フィリピン弁護士の助言を求めることをお勧めします。

2017/02/17

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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