知っておこうフィリピン法

第9回 フィリピンのアンチ・ダミー法についての考察

皆さん、こんにちは。Poblacionです。

フィリピンは、外国企業による投資を歓迎し促進しています。しかしながら、機密性の高い産業や保護対象となる活動には他の国々と同様に、外国籍の者や外国企業からの投資には規制がかけられます。このような国営の産業及び活動は、ネガティブリストとしてまとめられています。
(参照先: http://www.sec.gov.ph/download/Forms/foreign/6th%20FINL%20-%20sep%202013.pdf

フィリピンでは、国営化の規則は厳格に執行されており、この規則に違反した場合、関連するフィリピン法に基づき重い罰則が科されます。なかでも、フィリピンに投資しようとしている外国企業が特に注意を払うべき重要な法律の一つが、アンチ・ダミー法です。

アンチ・ダミー法(共和国法第108号)は1936年という早い時期に制定されました。古い法律ではありますが、現在でも幅広く運用されています。このアンチ・ダミー法は、国営化規則の違反者に対し厳格な刑事罰を科すことにより、フィリピン国籍を有する者及び内国企業にのみ認められている権利、経営権及び特権が、資格のない外国籍の者や外国企業の手に渡るのを防いでいます。実際、過去数年間で多くの外国籍の者及びフィリピン国籍を有する者の「ダミー」が、アンチ・ダミー法に基づき訴追され、有罪となっています。

アンチ・ダミー法で罰せられる具体的な行為を以下に挙げます。

 

例えば、フィリピン国内の土地の所有は、フィリピン国籍を有する者又はフィリピン資本60%以上の内国企業にのみ認められています。この禁止規定を回避するため、外国籍の者がフィリピン国内の土地を購入する際に、その土地の登記だけをフィリピン国籍を有する配偶者又はビジネスパートナーの名義で行い、そのフィリピン国籍を有する者は、その外国籍の者の委託を受けて土地を管理するということがあります。このような取り決めはアンチ・ダミー法で禁止されており、「ダミー」である外国籍の者もフィリピン国籍を有する者も刑事訴追の対象となり得ます。実際、法律では、外国籍の者と内縁関係にあるフィリピン国籍を有する者が、国営化の対象となりうる権利又は財産を行使、管理又は占有しただけでも、アンチ・ダミー法違反の一応の証拠とみなすと規定されています。

 

フィリピン法上、国営事業の運営法人のフィリピン資本比率は、60%以上でなければなりません。例えば、ある電気通信会社の事実上の資本比率は外国企業100%であるにもかかわらず、その株式の60%をフィリピン国籍を有する者の名義で登録できるよう裏で協定を交わし、証券取引委員会への届出書に要件とされているフィリピン資本比率60%を満たしていると記載した場合、この電気通信会社は、要件であるフィリピン資本の存在を偽装したとして告発され、その役員はアンチ・ダミー法違反の罪に問われる可能性があります。

上記の禁止行為は、フィリピン国籍を有する者にのみに認められている権利、特権又は財産を、フィリピン資本の要件を満たしていない外国籍の者及び外国企業が直接的又は間接的に行使することはできないという規則を明記しています。

 

言い換えると、一部のみでも国営化された事業による外国籍の役員又は従業員の雇用は、報酬の支払の有無にかかわらず、アンチ・ダミー法により禁止されています。ある事件においてフィリピン最高裁判所は、外国籍の者の雇用の禁止は、要職ではない事務職や非管理職にも適用されると述べました。このような厳密な解釈がされたのは、法律の間接的な迂回を防ぐためです。

一方、規則には例外もあります。第一に外国籍の技術人員は、司法省(DOJ)長官の承認を条件として雇用することができます。技術人員とは、実務上、産業上又は機械上の技術又はサービスと関連する特殊な技能又は実用的な知識を有する者のことを指します。第二に外国籍の者は、一部国営化された事業を行う法人で許可されている資本参加又は所有比率に応じ、取締役会のメンバーを務めることができます。例えば、外国資本比率が40%に制限されている電気通信会社に取締役が5名いる場合、取締役には最大で2名の外国籍の者を選任することができます。第三に、国営事業であっても、外国籍の者の雇用が特別法により明示的に許可されている場合には、外国籍の者の雇用が可能です。例えば、特別経済区法により、一定の条件を満たした経済特区内の企業には、幹部職、管理職、技術職及び顧問職に外国籍の者の雇用が認められています。

アンチ・ダミー法に違反した場合、5年以上15年以下の懲役と、資格のない外国籍の者又は外国企業が享受又は取得した権利、経営権又は特権の価値以上の罰金が科されます。さらに、同法に違反した企業又は団体は、適切な裁判所手続終了後に解散させられます。

アンチ・ダミー法に基づく訴追を促すため、同法では、被疑者の有罪確定につながる情報を当局に最初に提供した者に対し、被疑者が有罪確定後に科される罰金の25%に相当する金額が報酬として与えられると規定されています。なお、情報提供者もダミーである(すなわち、訴えられている行為に自身も加担している)が、自発的に申告し、政府が他の被疑者を訴追し法律違反で有罪とするにあたる情報を提供した場合、当該情報提供者は、アンチ・ダミー法に基づく刑事責任を免れることができる上、金銭的報酬も得られることになっています。

2015/7/16

*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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