台湾におけるビジネスと法務に関する情報

2019年3月

台湾法上の労働者のストライキについて

台湾の航空会社「中華航空」は一部のパイロットが2019年2月8日にストライキに入ったため、数百便が欠航となった。「中華航空」は台湾最大の航空会社であり、欠航により影響を受ける乗客、旅行業者などの数は数万人に上っているため、今回のストライキは台湾内外の注目を集めている。

「ストライキ」とは、労使争議処理法第5条第5号によれば、労働者が実施する、労務提供を一時的に拒否する行為を指す。台湾法上、労働者がストライキ権を行使することは、基本的には認められているが、以下の要件を満たすことが必要とされている。
一、「調整事項に関する労使争議」が存在すること。
まず、労使争議処理法第5条第2号、第3号によれば、「労使争議」とは、以下の2種類の争議を意味する。
「権利事項に関する労使争議」:労使当事者双方が法令、労働協約、労働契約の規定に基づき行う、権利義務に関する争議。例えば、使用者による労働者の不当解雇など。
「調整事項に関する労使争議」:労使当事者双方が労働条件について継続維持又は変更を主張する争議。例えば、労働者による労働条件改善要求など。
このうち、労使争議処理法第53条によれば、「権利事項に関する労使争議」は訴訟などの手続きを通して解決しなければならないため、「調整事項に関する労使争議」についてのみストライキを起こすことができる。
二、事前に政府主管機関に労使調停を申請し、かつ、調停が不成立であること。
労使争議処理法第8条により、労使争議につき調停、仲裁又は裁決の期間において、使用者は当該労使争議事件に起因して営業を停止し、業務を停止し、労働契約を終了し又は労働者に不利となるその他の行為をしてはならず、労働者は当該労使争議事件に起因してストライキ又はその他の争議行為を実施してはならないとされていることが、本要件の根拠とされている。
三、労働組合の組合員の無記名投票を実施し、全組合員の過半数の同意を得ていること。
労使争議処理法第54条第1項により、労働組合は、労働組合の組合員の直接、無記名の投票および全組合員の過半数の同意を経ていない場合、ストライキを宣告することはできないとされていることが、本要件の根拠とされている。

労働者がストライキに入ると、会社、顧客、その他第三者に重大な損失をもたらすことが多いため、そもそも当該ストライキが適法なものであるか等の精査、対応等のため、早めに対策を講じる必要がある。

なお、メディアの報道によれば、中華航空のパイロットによる今回のストライキは、法律上、上記の要件に適合する適法なストライキであると解されるが、第三者である乗客、旅行業者にも重大な損害を与えているため、社会から厳しく批判されている。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。