知っておこう台湾法

 

第243回 いわゆる「凶宅」について

 2017年2月11日、ある男性Aが、騒音トラブルを理由に隣家の塀を乗り越え、軒下で焼身自殺を図りました。隣家の家主であるBは、Aの自殺行為により、Bの家屋が「凶宅」(不吉な家の意味。法的な用語ではありませんが、殺人や自殺などがあった物件を指します)になったとして、Aの妻子ら3人に家屋の修繕費と住宅価格の下落分の損害賠償を求めて提訴しました。

 18年6月15日、屏東地方裁判所は、軒下での死亡であっても、一般人に嫌悪感を抱かせ、購入または賃貸に忌避感情を生じさせるため住宅価格の下落を引き起こしたとして、Aの妻子ら3人に対し、Aから継承した遺産の範囲内で連帯して200万7,800台湾元(約740万円)の賠償支払いを求める判決を下しました。

代金の返還・減額要求も可能

 民法第354条によると、売主は売却の目的物に、その価値またはその通常の効用への適合性または売買契約の効用への適合性を、滅失または棄損する品質上の瑕疵(かし)がないことを保証することが義務付けられています。

 そして、民法第359条では、売買の目的物に瑕疵があり、売主がその保証責任を負う場合、買主は契約解除、または代金の減額を求めるか選択できるとされています。

 裁判例上、家屋内で殺人や自殺があったことは、当該家屋の取引価値に重大な影響を及ぼし瑕疵に当たるとされているため、売買契約締結後に、購入した物件が「凶宅」であると発覚した場合、買主は上記民法の規定に基づき、代金の減額や、契約を解除した上、売買代金の返還を求めることが可能です。

自殺は故意に損害もたらす

 民法第184条第1項によると、善良の風俗に反する形で故意に損害もたらした者は、その損害を賠償する責任を負うとされています。そして、他人所有の家屋内での殺人行為や自殺行為は、善良の風俗に反する形で故意に損害(家屋の価格下落)をもたらす行為といえます。そのため、当該家屋の所有者は、同条に基づき、殺人者に対する損害賠償請求や、自殺者の遺族に対し、自殺者から承継した遺産の範囲内で損害賠償を請求することが可能です。

2018/07/16

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

 

(本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに執筆した連載記事を転載しております。)