知っておこう台湾法

第256回 台湾法上の取締役の責任

 台湾法における株式会社の取締役の主な責任は以下の通りである。

1.会社責任者としての損害賠償責任。根拠は会社法第8条第1項「本法において会社責任者とは、合名会社、合資会社においては業務を執行、または会社を代表する株主を指し、合同会社、株式会社においては取締役を指す」、および同法第23条「(第1項)会社責任者は業務を忠実に実行し、かつ善良な管理者としての注意義務を果たさなければならない。これに違反して会社に損害を与えた場合、損害賠償責任を負う。(第2項)会社責任者が会社の業務執行において法令に違反して他者に損害を与えた場合、他者に対し会社と連帯して賠償責任を負わなければならない」である。

2.法令、定款に違反した場合の損害賠償責任。根拠は会社法第193条「(第1項)取締役会の業務執行は、法令、定款および株主総会の決議に従わなければならない。(第2項)取締役会の決議が前項の規定に違反して会社に損害を与えた場合、決議に参与した取締役は会社に対し賠償責任を負う。ただし、異議を唱えていた取締役は、それを証明できる記録または書面がある場合、その責任を免れる」である。

太電社判決が示す重い責任

 近年の台湾で、取締役が最も高額の損害賠償責任を問われたのは太平洋電線電纜公司(以下「太電社」)の事案で、概要は以下の通りである。

 台湾の上場会社、太電社の代表取締役・孫氏、財務長・胡氏らは1994年より、海外にさまざまなペーパーカンパニーを設立した上で太電社から多額の借入をさせ、さらにマネーロンダリング(資金洗浄)等の手段を通じて、太電社の資金200億台湾元(約720億円)以上を不法に取得した。

 本事案は2003年に摘発され、刑事犯罪の部分については、複数名の太電社の従業員に対し業務上横領、背任等の有罪判決が下された。民事賠償の部分については、台湾の投資家保護センターが太電社の株主2万人余りを代表して、80億元を連帯して賠償するよう孫氏ら22人に請求した。台北地方裁判所の審理後、18年2月に「孫氏を含む太電社の自然人の取締役、法人取締役、監査役ら22人の被告は、監督職責等をきちんと果たさなかったため、約74億5,130万元を連帯して賠償せよ」との判決が下された。

 台湾法では取締役の責任はかなり重いため、外国人や外国企業は台湾企業の自然人取締役、法人取締役に就任する前に、取締役の法的な義務、職権などについて、ぜひ法律の専門家に問い合わせ、確認してください。

2018/10/29

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

(本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに執筆した連載記事を転載しております。)