知っておこう台湾法

第272回 駐在員事務所が営業行為を行うリスク

 駐在員事務所は営業行為を行うことができません。その根拠は、会社法第371条第1項の「外国企業は支社の登記手続きを行っていない場合、外国企業の名義で中華民国国内において営業することはできない」と、経済部の同条の解釈「駐在員事務所は実務上、契約締結、入札、見積もり提示、調達および値切りなどの法律行為のみを行うことができる」(2003年10月29日経商第09202221350号書簡)です。

 駐在員事務所が営業行為を行った場合の罰則は、同条第2項「前項の規定に違反した場合、行為者は1年以下の懲役、拘留もしくは15万台湾元(約54万円)以下の罰金を科され、またはこれらを併科される。また、行為者は民事責任を負う。行為者が2人以上いる場合、連帯して民事責任を負う。主管機関は当該行為者が外国企業の名称を使用することを禁止する」と規定されています。

営業停止のリスクも

 税務上は、売上高および税額について過小報告や報告漏れがあった場合は過料が科され、営業停止が命じられるリスクもあります。

 裁判実務上では、営業行為は「営利目的で反復継続する意図で行う行為である。たとえ発覚が1回だけだったとしても、当該意図がある場合に、営業行為として認定できる」とされています。

 実例として、国際展開しているあるホテル予約サイトの台湾駐在員事務所は、ホテルと本社の契約締結・提携を促した他、関連サポートや技術サービスを提供していました。これらの行為は実質的に同社の中心業務であり、営業行為に該当すると当局に認定されました。同社は国税局で営業登記手続きや、売上高および税額の申告を行っておらず、営業税法第51条、第52条の規定に基づき、2,000万元の追徴課税と過料の処分を受けました。

 駐在員事務所は、コストを最も抑えることができる台湾拠点の形式で、▽資本金不要▽設立手続きが簡単▽従業員が台湾の社会保険に加入できる──というメリットがあります。一方で、営業行為が禁止されるという大きな制限があります。

 市場調査・現地企業との関係構築という駐在員事務所の役割が完了し、台湾で営業行為を継続的に実施するのであれば、支社または子会社を設立すべきです。その際には、税務、法律の専門家に相談することをお勧めします。

2019/03/04

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。