東京弁護士コラム

第2回 訴訟係属中の被告の破産

訴訟手続中に、当事者の一方である被告が破産申立てをすることがある。例えば、債権回収しようと訴訟提起したところ、債務者である被告が破産を申し立ててしまう場合などである。
訴訟手続中に被告が破産した場合、訴訟で何が争われているかによって、その後の訴訟の進行が異なる。

1 破産債権についての訴訟の場合

破産者に対する金銭的な請求権としては、財団債権(破産法第148条)と破産債権(破産法第97条)があり、このうち、破産債権についての訴訟手続は、破産手続開始決定によって中断する(破産法第44条第1条)。債権回収で問題になる貸金、売買代金、損害賠償請求訴訟等は、一般的には破産債権に含まれることになると思われる。
中断後は、破産手続の中で当該破産債権が処理されるが、東京地方裁判所では、配当可能な財団が形成されない場合は、管財人による債権認否を留保したまま破産手続を終了する扱いである。このため、配当可能な財団が形成されない場合、中断した訴訟は管財人に受継されない(破産法第44条第2項参照)。
配当可能な財団が形成された場合、破産管財人によって債権認否がなされる。ある破産債権者が届け出た債権額の全額について破産管財人が認める旨の認否をし、他の破産債権者からも異議が出なかった場合、当該破産債権者には、按分比例による配当(当該破産債権者の破産債権額を分子、総債権額を分母とする割合を配当可能な財産に掛けた額の配当)がなされる。破産債権者は、配当された額以上を訴訟で回収することはできない。ある破産債権者が届け出た破産債権の全部又は一部について、破産管財人又は他の破産債権者が異議がある旨の認否をした場合、異議を述べられた破産債権者としては、異議の理由を検討し、争えるようであれば争う手続をとる。ある破産債権について異議が述べられた場合で、当該破産債権についての訴訟が破産手続開始の時点で係属していた場合は、中断していた訴訟を破産管財人(及び異議を述べた他の破産債権者)が受継し(破産法第127条第1項)、中断していた訴訟が再開することになる(なお、破産手続開始の時点で訴訟係属していない場合は、債権査定の申立て(破産法第125条第1項)をすることになる)。訴訟の請求認容判決や訴訟上の和解で認められた債権額に基づき、按分比例による配当がなされることになる。
なお、通常の金銭請求訴訟において、原告は、「被告は、原告に対し、金○○円及びこれに対する平成○○年○月○日から支払い済みまで年○分の割合による金員を支払え」と請求するが、破産管財人が訴訟を受継する場合、原告(債権者)側で訴えの変更を行うことになる。以前、どのような請求の趣旨にすべきか調査したことがあるが、下記のとおり、思ったよりもバリエーションがあった(2016年9月調査時点)。最高裁判例の主文は、「上告人が、破産者○○に対し、○○地方裁判所平成○○年(フ)第○○号破産事件につき○○円の破産債権を有することを確定する」となっていた(ただし、最高裁判例2件のうち1件は、一部異議があったためか「異議に係る○○円の破産債権」となっていた)。金額的な一部異議の場合(例えば100万円のうち50万円のみ認め、50万円に異議を出す場合)は、「異議に係る○○円の破産債権」と特定するものと思われ、複数の請求権のうちある請求権のみ異議が出された場合(例えば、ある債権者が債権届した売買代金請求権と貸金返還請求権のうち、貸金返還請求権のみ異議が出された場合)には、債権の性質を記載して請求権を特定することも、「異議に係る○○円の破産債権」として特定することも可能なように思われるが、このあたりの深い分析は行っていない。もとより全ての裁判例を網羅できているわけではなく、理解や分類が誤っているものもあるかもしれないが、興味のある方は参照されたい(こちら)。

【裁判例56件の内訳】
1.「確定する」旨の主文(51件)
(1)破産者に対し、事件番号につき、債権の性質なし(11件、うち最高裁2件)
(2)破産者に対し、事件番号につき、債権の性質あり(7件)
(3)破産者に対し、事件番号なし、債権の性質なし(5件)
(4)破産者に対し、事件番号なし、債権の性質あり(12件)
(5)「~の間において」を記載(7件)
(6)破産者に対する債権であることの記載がない(2件)
(7)その他(7件)
2.「確認する」旨の主文(5件)

2 破産財団に関する訴訟及び財団債権に関する訴訟の場合

破産財団に関する訴訟手続(例えば、所有権等の財産権に基づく給付訴訟等)及び財団債権に関する訴訟の場合、破産手続開始決定によって訴訟手続は中断する(破産法第44条第1条)。中断後、破産管財人が自ら訴訟を受継することもあるが、破産管財人が任意に受継しない場合、原告が訴訟を引き続き行いたいのであれば、訴訟受継の申し立てをして破産管財人に訴訟を受継させる必要がある(破産法第44条第2項)。
以前、計算書類及び会計帳簿の閲覧謄写等請求訴訟を行っていたところ、被告が破産し、訴訟が中断したとの考えを裁判官が示したため、債権者の申し立てにより管財人に訴訟が受継されたことがある(公刊物未掲載)。全ての裁判体で同様の取扱いをするとは限らないものの、計算書類及び会計帳簿という会社財産に関する訴訟と考えれば、同様の判断がなされる可能性がある。

3 「破産財団に関する訴訟手続」に含まれない訴訟

破産により中断するのは「破産財団に関する訴訟手続」であり(破産法第44条)、破産財団に関係がない訴訟は中断しない。例えば、破産者が自然人である場合の婚姻、親子関係に関する身分訴訟、会社の設立無効、株主総会決議を争う訴訟などの非財産的訴訟は、当事者に破産宣告がされても中断しない。

以上

2017/03/31

*本記事は、法律に関連する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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執筆者

弁護士  森川 幸