東京弁護士コラム

第3回 外国裁判所の確定判決の日本における執行

 外国の会社との取引が増加するにつれ、外国の裁判所の裁判に対応しなければならないケースも増加しているものと解される。しかし、外国の裁判所の判決はそのまま日本で執行出来るわけではなく、一定の要件を満たす必要がある。そこで、今回は外国裁判所での判決の日本における執行について、簡単に説明する。

1 外国裁判所の確定判決の日本における執行

 民事訴訟法第118条によれば、外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有するとされている。

1 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。

2 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。

3 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。

4 相互の保証があること。

 

第1号は、一般的に、当該外国裁判所に国際法上の裁判権のほかに、国際裁判管轄があることが要求される。つまり、当該外国裁判所に当該事件の国際裁判管轄がなければ、本号の要件は満たさないことになる。
第2号は、被告の防御の機会を与えるために定められた要件である。
第3号は、例えば、賭博に基づく債務の履行を命ずる確定判決の執行を求める場合、この要件を満たさないことになる。
第4号は、簡単に言えば、当該外国において、当該外国裁判所が下した当該判決と同種類の日本の判決が、本号の条件と重要な点で異ならない条件で効力を有することが求められる。

 本稿ではさらに、これまでに弊所の案件で実際に問題となったことがある、①「外国」裁判所の意義及び②「送達」の意義及びについて説明する。

2 「外国」裁判所の意義

 日本による未承認国(例.台湾)の裁判所が、民事訴訟法第118条の「外国」裁判所に該当するかが問題となったケースがある。
この点について、明確に判断した判例は存在しないものと解される。しかし、この点について、以下のような学説が存在する。

・「承認制度の根拠を当事者の権利保護を図ることによる渉外的生活の安定の確保とみる限り、未承認国であることのみをもって承認を拒絶する理由はないと考えられる(引用文献省略)。」(鈴木正裕=青山善充編『注釈民事訴訟法(4)裁判』361頁〔高田裕成〕(有斐閣、平成9年))

・「当事者の渉外的法律関係の安定という制度の目的からすると、本条(注:第118条)の外国国家は、日本が国家承認または政府承認した国に限られない」(架集唱ほか編『基本法コンメンタール 民事訴訟法1』301頁〔酒井一〕(日本評論社、第3版追補版、2012年)

・「ここでいう外国とは、わが国とは異なった、独立の裁判権の行使主体を意味する。国家だけでなく国際機関も含まれる。国家の場合には、わが国が承認した国家であることを要するかどうかについて議論があるが、承認制度の根拠を当事者の権利保護を図ることによる渉外的生活の安定にあるとする立場から、未承認国も含まれるとするのが通説である(引用文献略)。」(秋山幹男ほか『コンメンタール民事訴訟法Ⅱ』513頁(日本評論社、第2版、2009年))

・「本条(注:第118条)で承認されるのは、『外国裁判所』の確定判決であるが、ここで外国とは、日本国以外の裁判権の行使主体を指す。わが国が国家承認または政府承認していることを要するかについては、これを要するとの見解も有力であるが(引用文献略)、多数説は不要とする(引用文献略)。」(兼子一ほか『条解民事訴訟法』624頁〔竹下守夫〕(弘文堂、第2版、2011年))

 

このように、日本による未承認国(例.台湾)の裁判所が、民事訴訟法第118条の「外国」裁判所に該当することを肯定する複数の考え方がある。従って、一般的には、未承認国の判決でも、民事訴訟法第118条の「外国」裁判所の判決に該当するとするものと考えられる。

3 「送達」の意義

外国判決の被告が敗訴している場合、当該判決を日本で承認執行するためには、公示送達によらないで訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令を受けたこと又はその呼出しを受けなくとも応訴したことが必要となる(民事訴訟法第118条2号)。
公示送達とは、一定の公の場所に訴状、呼出し状等を掲示して訴訟の開始を知らせたものと擬制する送達方法であり、実質的な被告の防御を保証していないことから、明文で外国判決の承認執行の要件を満たさないとされている。
また、公示送達以外にも、発送のみで現実の到達を要しない付郵便送達、フランス法上の「検事局への送達」等の方法も、被告に実際に訴訟の開始を知らせて、その防御権を現実に保証するに足りない送達方法として、要件を満たさないものと解されている。但し、付郵便送達については、現実に被告に到着したことが証明された場合は、公示送達に準ずる必要はないとする東京地方裁判所裁判官(発刊当時)の見解が存在する(小林昭彦「外国判決の執行判決について」判タ937号38頁)。
なお、民事訴訟法第118条2号にいう呼出し若しくは命令は、日本の民事訴訟手続に関する法令に従ったものであることを要しないが、被告が現実に訴訟手続の開始を了知することができ、かつ、その防御権の行使に支障のないものでなければならず、判決国と日本との間に送達の方法にかかわる条約が締結されている時は、その方法に拠る必要がある(最高裁判所平成10年4月18日判決)。

4 実際に判決が承認された主な国・地域

最後に参考までに、これまでに確定判決が承認された主な国・地域を以下の通り挙げる。

カリフォルニア、オレゴン、ハワイ、ミネソタ、バージニア、メリーランド、ニューヨーク、ネバダ、ワシントンD.C.(以上アメリカ合衆国)、イングランド・ウェールズ、ドイツ、韓国、シンガポール、香港、クイーンズランド(オーストラリア)等(2016年11月30日時点の調査による)。

なお、民事訴訟法第118条の要件を充たすか否かは個々の事例によるため、上記国・地域の裁判所の確定判決であるからといって、一律に当該国・地域の裁判所の確定判決が日本で承認されるわけではない。

以上

2017/04/28

*本記事は、法律に関連する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

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執筆者

弁護士  尾上 由紀