第269回 華僑・外国人の投資規制緩和

「外国人投資条例」と「華僑帰国投資条例」で今年1月、1997年の施行以来初めての改正案が行政院会(閣議)で可決されました。今後立法院を通過すれば、華僑・外国人の台湾投資に対する制限が大幅に緩和されます。具体的には、現在の一律「事前認可」から「原則的に事後申告のみ、例外的に事前認可」に変更されます。現在、申請事案は年平均約3,500件ですが、このうちの約85%が事後申告で可能になるとみられます。手続きの簡略化により、華僑・外国人による台湾投資がさらに活発化することが期待されています。以下、改正案の注目点をいくつか列挙します。

事前認可必要は4種類

経済部の計画によると、条例改正後も事前認可の必要がある投資案件は主に以下の4種類です。

  1. 投資行為、投資形態の区分に基づいて金額または持ち株比率が一定以上である案件。現在の基準は投資額100万米ドル以上
  2. 投資ネガティブリスト上の、制限類のプロジェクトに該当する案件
  3. 投資者が外国政府(政府系ファンドを含む)である案件
  4. 特定の国・地域の投資者による案件。国連による経済制裁への協力、およびテロ対策のため

罰則強化で実効性向上

一方、両投資条例による罰則は現在、「台湾元から外貨、または外貨から台湾元への換金権の取り消し」と、投資許可の撤回のみですが、改正案では、情状に応じて過料を科す権限が主管機関に付与される予定です。規制緩和の一方で、罰則を強化することによって、投資管理制度の実効性を高めることが目的です。

例えば、外国の機関投資家が上場会社への投資において不実の申請・申告を行った場合、最高で480万台湾元(約1,710万円)の過料が加重され、最も重い場合で「1年間は有価証券への投資を禁じる」処罰を併科することができるようになります。非上場会社に対する投資では、事前申請すべきところを申請しなかった場合、最高で60万元の過料、事後申告すべきところを申告しなかった場合、6万~60万元の過料が科されることになります。

今回の改正案は、まだ行政院の草案の段階であり、今後立法院で可決される必要がありますが、規制緩和は長年にわたり求められてきたものであるため、迅速な可決・施行に期待が寄せられています。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。