第314回 前金や違約金収入も税務申告が必要
個人の間で不動産などの大きな金額の売買を行う場合、売買双方は前金を前払いするか、または違約金を約定するなどの規定を設ける場合があります。最終的に売買が成立しなくても、そのうち一方が違約金または前金を受領した場合は、所得税法第14条第1項第10類の規定に基づき当年度の「その他の所得」に計上し、翌年の5月に総合所得税を申告しなければならないことに注意が必要です。
ご参考までに以下の2件の処罰の前例を示します。
- Aは売り主と不動産売買契約書を締結したが、その後、売り主が何らかの理由で契約の義務を履行することができなくなったため、双方は合意の上契約を解除し、売り主は契約の約定に従い、Aに対し200万台湾元(約725万円)の懲罰的違約金を支払った。しかし、Aは当年度の総合所税の決算申告を行う際、当該違約金をその他の所得に計上して報告しなかったため、Aは国税局によって申告が漏れた税額の追加徴収を命じられた他、所得税法第110条の規定により、申告が漏れた税額に応じて2倍以下の過料に処せられた。
- Bは土地をCに売却すべく、Cとの間で売買総額2億元の土地売買契約を締結した。Cは前金として1,800万元をBに支払った。しかし、Cは資金調達が困難となったため、約定通りに残りの土地代金を支払っておらず、Bは最終的に当該前金を没収した。しかし、当該前金を所得として申告しなかったため、国税局による取り締まりを受け、680万元余りの税額を追納した。
申告漏れには早期対応を
個人で売買契約を締結したものの、買い主が購入を放棄したことに起因して、売り主が没収した買い主による前払いの前金、手付金、またはいずれかの一方が支払った違約金については、いずれも所得税法が規定するその他の所得に該当するため、取得年度の総合所得税に合算して決算申告を行わなければなりません。
申告不足、申告漏れがあった場合、摘発される前、または租税徴収機関が調査を行う前であれば、当事者は可及的速やかに租税徴収法第48条の1の規定に従い、自発的に主管租税徴収機関に所得税を追加申告・追納することができ、その場合、利息が加算されるのみで、処罰は免れることができます。怠った場合、国税局の取り締まりを受けると、税額追納の上、法によって処罰されることとなります。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。