第315回 国家賠償法の改正

公共施設の設置・管理の欠陥に関する国家賠償法の改正案が2019年12月3日、立法院で最終可決(三読)されました。主な改正点は以下の通りです。

警告・標示無視は対象外

1.賠償責任の減免(第3条第3項、第4項)

開放された山域、水域などの自然公物に関し、管理機関、管理を委託された民間団体や個人が、それらの利用について適当な警告・標示をしているにもかかわらず、人民がなお冒険や危険な活動に従事した場合、政府は損害賠償責任を負わないとされました。

また、山域、水域などの自然公物内にある施設についても、人民が警告・標示を無視して冒険や危険な活動に従事した場合、政府の損害賠償責任を軽減、または免除することができるとされました。

公共施設の管理は政府の責任

2.保護範囲の拡大(第3条第1項)

実務見解に合うよう、公共施設の設置や管理に欠陥があることにより、人民の権利を侵害した国家賠償事件では、公共施設の所有権が政府にあるか否かにかかわらず、国家賠償法が適用されることになりました。

また、公共施設の設置または管理の欠陥により、行動が制限されるなど人身の自由を侵害する可能性があることを考慮し、保護の客体として、これまでに規定されていた「生命」、「身体」、「財産」に加え、新たに「人身の自由」が追加されました。

3.賠償責任の明確化(第3条第2項)

行政機関が公共施設の管理を民間団体や個人に委託した後、その管理の欠陥により人民に損害が生じた場合、政府の賠償責任の有無が争いになることがありました。しかし、今回の改正により、このような場合にも、政府が賠償責任を負わなければならないことが明記されました。

政府は現在、山林開放政策を進めており、今後、一般人が立ち入ることのできる区域が広がっていくことが予想されます。そのような地域に警告標示などがあるのに、その内容に従わず、負傷・死亡した場合には、行為者の自己責任とされてしまいますので、注意が必要です。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。