第325回 会社から他者への金銭貸し付け

会社から他者に対する金銭貸し付けについて、台湾法では厳しく定められています。

会社法第15条第1項には「会社の資金は以下の各号の事由がある場合を除き、株主またはいかなる他者にも貸し付けることはできない。

  1. 会社間にまたは非法人格小規模事業者との間に業務取引がある場合。
  2. 会社間にまたは非法人格小規模事業者との間に短期融資の必要がある場合。ただし、融資額は貸付企業の純資産の100分の40を超えてはならない」と規定されています。

同規定における「非法人格小規模事業者(中国語:「行號」)」について、経済部の2009年8月27日経商字第09802114930号書簡の解釈によれば、商業登記法に基づき適切に商業登記を行った商人を指します。すなわち、営利を目的として単独資本または共同経営の方式で経営する事業者です。

違反で弁済・損害賠償責任

つまり、会社が他者に金銭を貸し付ける場合、以下の3つの条件を満たしていなければなりません。

  1. 貸し付けの対象は会社または非法人格小規模事業者に限定され、株主またはその他の自然人に貸し付けることはできない。
  2. 金銭貸借の双方間に業務取引がある(例:借入人が貸付人のサプライヤーであるなど)、または短期融資(返済期限が1年以内)の必要がある。
  3. 貸付額は貸付会社の純資産の100分の40を超えてはならない。

違反した場合、当該貸付行為は有効ですが、会社法第15条第2項に基づき、貸付会社の責任者は借入人と連帯して弁済責任を負わなければなりません。もし貸付会社が損害を受けた場合、当該責任者は損害賠償責任を負う必要があります。

また、実務上よくみられる「会社が従業員に金銭を貸し付け、従業員の賃金から貸し付け分を差し引いて弁済を受ける」というやり方について、経済部の経商字第10102144470号書簡によれば、もし当該貸付金額が従業員の賃金額にほぼ相当するのであれば、当該貸し付けは「賃金の事前受け取り」に該当し、会社法第15条には違反しません。逆に、従業員の賃金額を明らかに超えている場合は、違法な金銭貸し付け行為に該当します。

経営上の必要により会社間で金銭貸借を行うことは実務上よくみられることです。ただし、違法とならないよう会社法第15条の規定に特に留意する必要があります。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。