第356回 グループ会社間の合意はカルテルに該当するか

 複数のグループ会社間において、同一人物が役員を兼任し、または商品の販売価格等の情報を交換することで、操作することが可能な状況になってしまう状況もあります。この場合はカルテルに該当するのでしょうか。

カルテルとは

 公平交易法(公正取引法、以下同)第14条第1項によりますと、カルテルとは、生産または販売の同様の段階にあり、かつ競争関係にある企業間において、生産、取引、またはサービスの需給の市場機能に影響を与えるよう、契約、協議、またはその他の手段によって、商品または役務の価格、数量、技術、製品、設備、取引対象、取引地域、またはその他の相互に拘束力のある事業活動を共同で決定する行為のことです。

グループ会社間に適用するか

 公平交易委員会(公平会、公正取引委員会に相当)は、下記の解釈をしています。

 「関係会社はお互いに同じ利害関係を持っており、グループ全体の利益を最大化することを考え、グループの『同一の意思決定主体』からの経済活動への指示を受けることにより、経済的自主と独立した意思決定能力を持っているとは言い難い。よって、支配および従属関係のある『同一の事業グループ』からの『単一の行動決定』で、グループの各社が所有・運営する百貨店の共同プロモーションは、生産または販売の同様の段階にあり、かつ競争関係にある企業間の合意であるカルテルとは異なる。」(2016年5月12日公法字第10515602811号解釈抜粋)

 上記の通り、グループ会社間はカルテルに適用しないという解釈が存在いたしますが、第8条により、1社の市場占有率が2分の1に達し、2社の市場占有率が3分の2に達し、または3社の市場占有率が4分の3に達している、かつ合計総売上金額が20億台湾元(約73億円)以上の場合、独占事業者と認められ、制限がかけられる場合もあります。市場占有率が大きい場合、弁護士に独占禁止に関連する制限があるかを確認することをお勧めいたします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。