第357回 口コミサイトでの低評価

 昨年末、20代女性のAさんは、台北市内のレストランで食事を取った後、同店のフェイスブック(FB)ページとグーグルのレビューで、低評価を付けた上、「値段が高いのにおいしくない」などのコメントを残し、同店に電話をかけてクレームを入れました。

 その後、Aさんが前回の食事の領収書発行を求めて同店を訪れた際、店長夫婦が怒ってドアの鍵を閉め、店内で双方がもみ合いとなり、お互いを刑事告訴する事態となりました。

 2020年10月6日、台北地方検察署(地検)は、店長夫妻を強制罪で起訴し、Aさんについては正当防衛であるとして、不起訴処分としました。

 本件では、店側の対応が明らかに不適切ではありましたが、口コミサイトで不当に低評価を付けられた場合、投稿者に対して何らかの法的措置を取りたいと考える経営者も多いと思います。

虚偽の口コミには刑事罰も

 18年3月30日に雲林地方法院(地方裁判所)で判決が下された事案(2018年度六簡字第95号)では、被告人が、被告人の弟がレストランのシェフを解雇されたため、一度も同店で食事を取っていないにもかかわらず、弟が勤めていたレストランのフェイスブックページで「味が変わった」などとコメントし、1つ星の低評価を付けた行為について、刑法第310条第2項の加重誹謗(ひぼう)罪(文字や図画を散布した場合、通常の誹謗罪より罪が重くなります。)の成立が認められました。

 同事件についての民事判決(2018年度訴字第379号)では、1つ星の評価を付けること自体は個人の言論の自由の範囲に属するものの、実際に同店で食事をしていないにもかかわらず、悪意で同店の評価を下げる可能性がある等級評価をする行為は、言論の自由の保障の範囲外であり、不法行為が成立すると判断され、1万台湾元(約3万6,000円)の損害賠償請求が認められました。

 冒頭の事件では、Aさんは実際にレストランで食事をしており、口コミサイトでのコメント内容もレストランや店員に対する誹謗中傷ではなく、あくまで個人の感想の範囲内と評価できるため、店側がAさんに対して、何らかの法的責任を追及することは難しいと考えられます。

 ただし、上記裁判例のように、口コミサイトの投稿者に対して刑事上および民事上の法的責任を追及することが可能な場合もございますので、悪質ないたずらと判断されるような場合には、専門家に相談されることをお勧めいたします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。