離婚する時に夫婦の財産はどのように分配されるのか?

著名な卓球選手の福原愛、江宏傑の離婚騒動のニュースは、日本、中国本土および台湾において大きな注目を集め、多くのファンが関心を寄せています。そこで今回は、台湾において夫婦が離婚する場合、双方の財産はどのように分配されることになるかについて、ご説明します。

台湾では、夫婦が離婚する時の財産の分配方法は、その夫婦が採用する夫婦財産制によって決まります。台湾法上は、「法定財産制」、「分別財産制」および「共有財産制」という3種類の夫婦財産制があり、結婚前または結婚後に夫婦で話し合って選定することができます。選定しなかった場合には、「法定財産制」が一律に適用されます。

この3種類の夫婦財産制の概要を説明します。

一、法定財産制:法的根拠は、民法第1017条第1項「夫または妻の財産は、婚姻前の財産と婚姻後の財産とに分けられ、夫婦が各自所有する。婚姻前の財産であるのか、婚姻後の財産であるのかを証明できない場合、婚姻後の財産と推定する。夫または妻が所有する財産であることを証明できない場合、夫婦の共有に属するものと推定する」、および同第1030条の1第1項「法定財産制関係が消滅する時、夫または妻の現存する婚姻後の財産から婚姻関係の存続により負う債務を控除した後に残りがある場合、その双方の残余財産の差額は、均等に分配するものとする」になります。

例えば、夫Aには結婚時に100万台湾元の預金(すなわち婚姻前の財産)があり、結婚後に1000万台湾元(婚姻後の財産)を稼ぎ、400万台湾元の負債があるとします。一方、妻Bは結婚後に5000万台湾元を稼ぎ、負債がないものとします。この場合、法定財産制を採用するAとBが離婚する時、Aの残余財産は[婚姻後の財産1000万台湾元-婚姻後の負債400万台湾元=600万台湾元]となります。一方、Bの残余財産は[婚姻後の財産5000万台湾元-婚姻後の負債0台湾元=5000万台湾元]となります。したがって、AとBが離婚する時、残余財産が多い妻Bは、残余財産の差額の半分(5000万台湾元-600万台湾元をさらに2で除した2200万台湾元)をAに分配しなければなりません。 

二、分別財産制:法的根拠は民法第1044条「分別財産は、夫婦がそれぞれその財産の所有権を保有し、各自管理し、使用し、収益しおよび処分する」になります。

上の例において、AとBが分別財産制を採用した場合、AとBが離婚する時、基本的にAとBは婚姻前、婚姻後に自らが稼いだ金銭を各自取り戻し、その債務を各自処理すればよく、分配の問題は発生しません。 

三、共有財産制:法的根拠は民法第1031条「夫婦の財産および所得は、特有財産を例外として、共有財産として一括し、夫婦の合有に帰属する」、および同第1040条「(第1項)共有財産制関係が消滅する時、法律に別段の定めがあるときを除き、夫婦はその共有財産制契約締結時における財産をそれぞれ取り戻す。(第2項)共有財産制関係の存続中に取得した共有財産は、夫婦がその半数をそれぞれ取得する。但し、別段の約定があるときは、その約定に従う」になります。

上の例において、AとBが共有財産制を採用した場合、双方が婚姻関係において共同で稼いで得た金銭はすべて共有財産であり、離婚する時に共有財産を半分ずつ(つまり1000万台湾元-400万台湾元+5000万台湾元の半分の2800万台湾元)各自取得することになります。 

なお実務においては、財産の差が大きな男女が結婚する場合、「分別財産制」の採用を約定するのが一般的です。例えば、メディアの報道によると、フォックスコン社の社長である郭台銘氏が2008年に再婚した時、分別財産制を採用し、裁判所における当該財産制の登記を完了しています。


 *本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修