第387回 売主の瑕疵担保責任
日本では、2020年4月1日の民法の債権法部分の改正により、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」へと変更されました。改正後の日本民法では、売買契約に関して、「引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」(日本民法第562条第1項)、買主は、売主に対して、以下のような請求ができるとされています。
1.履行の追完(目的物の修補、代替物の引き渡しまたは不足分の引き渡し)
2.代金の減額
3.損害賠償
4.契約解除
また、上記請求の期限について、目的物の「種類または品質」が契約の内容に適合しない場合、「買主がその不適合を知った時から1年以内」とされていますが、「数量」が契約の内容に適合しない場合については、特に期限が設定されていません(日本民法第566条)。
日台の違い
台湾民法では、日本の旧法と同じく「瑕疵」という用語が使用されており、売主は、目的物に「その価値を滅失または減少させる瑕疵、その通常の効用または契約に予め定めた効用を滅失または減少させる瑕疵がないことを保証する」と規定されています(第354条第1項)。
売買の目的物に「瑕疵」がある場合、買主は、売主に対して、以下のような請求ができるとされています。
1.代金の減額
2.損害賠償
3.契約解除
また、「瑕疵がある物が引き渡された場合」における「契約の解除または代価の減額請求権」は、買主が瑕疵を売主に通知してから6カ月以内、または目的物引き渡し日から5年間行使しなければ消滅するとされています(第365条第1項)。
日本民法と台湾民法では類似する条項が多いものの、上記のように、要件や効果が異なっていることも多くあります。契約書に記載していない事項に関しては、原則として、法律に従って処理することになります。
そのため、日本で利用している契約書ひな形を台湾で利用する(準拠法を台湾法とする)場合、トラブルになった際に、日本法を前提に想定していた請求等ができないことがあります。このような事態にならないよう、準拠法として指定する国の法律の内容を予め検討の上、契約条項をアレンジする必要があります。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。