第430回 オンラインゲームの宣伝が事実に相違する場合
有名なオンラインゲーム「天堂M(リネージュM)」の宣伝が事実に相違するとの問題について、6月14日、公平交易委員会(公平会、公正取引委員会に相当)が当該ゲームの配信会社である遊戯橘子数位科技(ガマニア・デジタル・エンターテインメント)に対し、200万台湾元(約900万円)の課徴金納付命令を下しました。
本件の概要は以下の通りです。
ゲーマーに不実の説明
一、ガマニアはオンラインゲーム「リネージュM」を販売するため、2019年12月に「リネージュM」ゲーマー座談会を開催しました。この座談会において、ガマニアはその場にいたゲーマーに対し、「宝の制作の成功率は、台湾版の場合も韓国版の場合も同じで、いずれも10%である」と明確に示しました。
二、ところが、台湾版ゲームの発行後、ある有名なプロゲーマーがこのゲームの中で200万元を費やして希少な宝「紫布」を制作しようとしましたが、471回の制作を行ってもたった11個しか成功せず、成功率がわずか2.3%であることに気付きました。
このゲーマーは、宝の制作の成功率はガマニアが公言した10%と明らかに異なると判断したため、「ゲーマーを欺いた」と、この発行会社を公然と批判しました。
これに対し、ガマニアはこのゲーマーの主張は誹謗(ひぼう)に当たると判断したため、このゲーマーに対し民事訴訟を提起しました。
座談会も対象
三、公平会がこれに介入して調査した結果、台湾版における宝の制作の成功率はわずか5%であり、韓国版を明らかに下回っていることが判明しました。
さらに、公平会は「業者によるゲームの宣伝について、テレビ、インターネットなどの伝統的な広告のほか、直接的であれ、間接的であれ、本件の座談会のように、大衆をして一緒に見させたり聞かせたりするような宣伝行為であれば、全て公平交易法による規範化の対象となる。台湾版における宝の制作の成功率は、発行会社が座談会において公言した10%と明らかに合致していないため、公平交易法第21条第1項に既に違反しており、また、同法第42条に基づき、発行会社に対し200万元の課徴金を科す」と指摘しました。
公平交易法第21条第1項の規定は「事業者は商品もしくは広告において、またはその他公衆をして知らせる方法により、商品に関連して取引の決定に影響を及ぼすに足る事項につき、虚偽の、事実に相違するまたは誤解を招く表示または表徴をしてはならない」というものです。
本件から分かるように、公平会は「広告」の認定において、座談会における宣伝を含めております。この点につきまして、特にご留意ください。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。