第476回 民事保全の担保提供に保証書が使用できるか
台湾の裁判所で民事保全手続き(仮差押えまたは仮処分)を申し立てる場合、債権者は原因を説明しなければなりませんが、提出した理由が不十分であるものの、債権者が担保を提供する意思を有し、裁判官も相当であると評価した場合には、債権者に担保金を支払わせたうえで、債務者に対する保全手続きを行います。また、通常、担保金の金額は債権額の3分の1です。
民事訴訟法第102条第1項によりますと、担保は原則として現金または有価証券を供託するものとされていますが、債権者が現金または有価証券を供託することができない場合、同条第2、3項に基づき、保険会社、保証業務取扱銀行、または資産を有する者が保証書を発行して担保に代えることもできます。
ただし、保証書を担保に代えることは例外的な手続きであるため、裁判所から別途許可を取得する必要があります。
手続きの流れ
現行の裁判実務における具体的な手続きの流れについてですが、まず、裁判所から保全手続きの決定を取得しなければなりません。
当該決定において、保全手続きの必要性及び緊急性の疎明が不十分であるとみなされた場合、担保の提出を命じられる可能性があり、その際は、同裁判所に保証書を提出し、それをもって担保に代えることを同裁判所に請求し、同裁判所から「当該保証書をもって担保の提出に代えることができる」という許可を取得します。
30日以内に完了
なお、期限について、強制執行法第132条には「債権者は、保全手続きの決定を受けた日から30日を経過した場合には、執行の申立てをすることができない」という旨の規定があり、原則として保全手続きを債務者に対して執行しなければ意味がありませんので、保全執行の申立ては保全手続きの決定を受けた日から30日以内に完了しなければならないと言えます。
以上より、台湾の裁判所に対する民事保全の担保提供に困難がある場合、保証書を提出するのも一つの対応策として考えられます。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。