第492回 火災予防と発生時の対応
先月23日、明揚国際科技(ローンチ・テクノロジーズ)の屏東科技園区内にあるゴルフボール工場で火災があり、多数の死傷者が出た事故(以下「本件事故」といいます)は記憶に新しいかと存じます。本件事故に関し、明揚国際科技は、消防法違反により、合計240万台湾元(約1100万円)の過料が科されました。
今回は、消防法に定められた会社の主な義務及びそれに違反した場合の罰則について紹介させていただきます。
1.消防安全設備の設置
各類場所消防安全設備設置標準(台湾の各類場所消防安全設備設置基準)により甲類~戊類の5つに分類された場所(例:ホテル、レストラン、オフィス等)について、その類型に応じた消防安全設備(例:消火器、消火栓、自動火災警報器等)を設置し、保守しなければなりません(消防法第6条第1項)。
この規定に違反した場合、営業の使用に供している場所については、改善の通知を経ることなく、2万元以上30万元以下の過料が科されます。営業の使用に供していない場所の場合、期限を定めた改善通知が出され、当該期限までに改善されなかった場合は、2万元以上30万元以下の過料が科されます(消防法第37条第1項)。
また、上記甲類~戊類の場所の管理権者は、消防安全設備について、消防安全設備検修及び申報弁法に定められた頻度で、定期的に点検を行い、期限までに現地の主務機関に報告しなければなりません(消防法第9条第1項)。
この規定に違反した場合、1万元以上5万元以下の過料が科されます(消防法第38条第2項)
2.防火管理人の選任と消防防護計画の制定
延床面積が500平方メートル以上で従業員が30人以上の工場等、消防法施行細則第13条に規定された一定規模以上の建築物について、管理権者は、防火管理人を選任し、消防防護計画を制定しなければなりません(消防法第13条第1項)。
この規定に違反した場合、2万元以上30万元以下の過料が科されます(消防法第40条第1項)。
3.危険物の取り扱い
各類の危険物について、公共危険物品及び可燃性高圧気体の製造、保存、処理場所設置基準及び安全管理弁法の規定に従って、運搬、保存、または処理しなければなりません(消防法第15条第1項)。
この規定に違反した場合、2万元以上30万元以下の過料が科されます(消防法第42条)。
4.火災発生時の対応
消防隊員が工場火災を救助する際、工場の管理権者は、①工場にある化学品の種類、数量、工場の平面図、及び救助に必要な情報を提供しなければならず(消防法第21条の1第1号)、また、②担当者を現場に派遣し、被災者の救出に協力しなければなりません(同条第2号)。
上記第1号の規定に違反した場合、3万元以上60万元以下の過料が科され、上記第2号に違反した場合、50万元以上150万元以下の過料が科されます(消防法第43条の1第1項、第2項)。
5.火災原因の調査への協力
消防機関は、火災原因調査のために人員を派遣し、関連する証拠を調査、収集、保存し、または関係者に質問することができます(消防法第26条)。
この調査等を拒絶し、または火災現場を破壊した場合、6000元以上10万元以下の過料が科されます(消防法第43条)。
明揚国際科技は、本件事故に関し、上記3、並びに4の①及び②に違反したとして、それぞれの違反につき上限額の過料が科されました。
火災事故が発生した際に適切に対応しなければ高額の過料が科される可能性があるため、事故が発生した際にすぐに対応できるような体制を整えておくことが重要であると考えます。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。