第540回 社会秩序維持法上の禁止行為

2024年8月28日の深夜1時半頃、高雄市前金区の遊戯場において、客の男Aがゲームで当たらないことに腹を立ててゲーム機を損壊し、駆けつけた警察官に一時拘束される事案(以下、「本件事案」といいます)がありました。その後、Aは店側と和解することができましたが、警察は、社会秩序維持法違反を理由にAを処罰しました。

本件事案で適用されたのは、社会秩序維持法第68条第2号の「言いがかりをつけて住民、工場、会社、公共場所または公衆が出入り可能な場所で迷惑をかけた場合」に「3日以下の拘留または1万2000台湾元(約5万5000円)以下の過料に処す」という規定です。

本件事案において、加害者であるAは被害者である店と和解したため、器物損壊罪等で逮捕されることはありませんでした。しかし、社会秩序維持法は、公共の秩序の維持および社会の安寧の確保を目的として定められたものであり、本件事案では、周囲に迷惑がかかったことから同法が適用されたと思われます。

社会秩序維持法の処罰対象

社会秩序維持法では、以下のような行為も処罰対象とされています。

①デマを流布し、公共の安寧に影響を与える場合(第63条第1項第5号)

②船舶が強風の際または夜間で危険の恐れがあるのに、禁止命令を聞き入れなかった場合(第65条第1号)

③警察人員が法律に基づき調査または検査している際、その氏名、住所または居所について不実の陳述をし、または陳述を拒絶した場合(第67条第1項第2号)

④正当な理由なく、公共の場所、家屋の近くで火を焚き、安全を害する恐れがある場合(第68条第1号)

⑤危険な動物を飼育し、近隣住民の安全に影響を及ぼす場合(第70条第1号)

⑥互いに殴り合った場合(第87条第2号)

⑦正当な理由なく、人に催眠術をかけ、または薬物を投与した場合(第89条第1号)

社会秩序維持法は、日本の軽犯罪法に一部類似していますが、上記③のように日本では処罰されない行為も台湾では処罰の対象とされる可能性があるため注意が必要です。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。