株主は会社に対し財務データの提供を要求することができるか?
「Andy老師」という名の台湾のインフルエンサーは、2025年3月中旬に、「別れた後、自分には何も無くなった」というタイトルの動画をyoutubeにアップロードし、元ガールフレンド「家寧」と彼女の母親に騙されたことを告発しました。この動画は、百人に上るyoutuberや台湾の主流メディアによってウィルスのように拡散され、現時点ですでに1000万回以上も閲覧されており、全国民の注目を集める話題の事件となっています。
Andy老師の告発の要点は次のとおりです。
1.彼と家寧は16年に「衆量級CROWD」というyoutubeチャンネルを共同で開設し、カップル間でいたずらをする様々な面白動画を二人で撮影し、徐々にフォロワーから人気を得るようになり、利益が出始めました。
2.家寧の母親が18年に、youtuber事業の企業化経営ができるよう「群海娯楽股份有限公司(株式会社)」の設立を提案し、かつ、同社の株式を家寧の母親が50%、Andy老師と家寧がそれぞれ25%取得し、さらに家寧の父親が同社の監査役を務めることを提案しました。Andy老師は動画の主たる創作者および作成者でしたが、家寧がそのうち妻になると信じていたため、また、当時はまだ24歳で社会経験が乏しかったことから、この不公平な条件を受け入れました。
3.24年の時点で、「衆量級CROWD」のフォロワー数は200万人を超え、営業収入の累計額は1億台湾元以上に達していましたが、同年10月に家寧と別れた後、Andy老師は突然に当該チャンネルへのログイン権限を奪われ、そのうえ、全ての金銭収入を失いました。彼はチャンネルへの貢献度が最も高い者であるにもかかわらず、長年の間、ひと月に3万から5万台湾元の給与しか受け取っておらず、家寧やその母親に群海社の会計資料の提供を再三要求しても、毎回拒否されていました。
そこで、Andy老師は相手方に対し公然と群海社の帳簿の提供を要求し、かつ、彼に帰属する25%の利益を支払うよう要求しました。
会社に対する株主の帳簿閲覧権について、台湾の会社法第210条では次のように定められています。
「(第1項)取締役会は、証券主管機関において別段の定めがある場合を除き、定款および各期の株主総会議事録、財務諸表を自社に備え置き、かつ株主名簿および社債原簿を自社または株式事務代行機関に備え置かなければならない。
(第2項)前項の定款および帳簿類について、株主および会社の債権者は、利害関係の証明書を提出し範囲を指定することで、いつでも閲覧、謄写または複製を請求することができる。株式事務代行機関に備え置いているものについては、会社は株式事務代行機関から提供させなければならない。
(第3項)会社を代表する取締役が第1項の定めに違反して定款、帳簿類を備え置かない場合、1万台湾元以上5万台湾元以下の過料に処する。但し、株式公開発行会社については、証券主管機関が、会社を代表する取締役に対し24万台湾元以上240万台湾元以下の過料に処する。
(第4項)会社を代表する取締役が第2項の定めに違反して正当な理由なく閲覧、謄写、複製を拒否し、または株式事務代行機関から提供させなかった場合は、1万台湾元以上5万台湾元以下の過料に処する。但し、株式公開発行会社については、証券主管機関が、会社を代表する取締役に対し24万台湾元以上240万台湾元以下の過料に処する。
(第5項)前2項の場合、主管機関または証券主管機関はさらに、期限を定めて是正を命じなければならない。期限を過ぎても是正しない場合は、引き続き期限を定めて是正を命じ、是正されるまで一回ごとに処罰を与える。」
従って、Andy老師は株主として、法律上、群海社の代表者(家寧の母親)に対し財務諸表の提供を要求し、かつ当該財務諸表の内容についてさらなるチェックを行う十分な権利を有します。
Andy老師と家寧の家族との間の本件紛争には、財務データ以外に、家寧の両親が会社の収益を無断で自分の個人口座に送金するといった税金逃れ、横領罪などの問題も存在するため、現在も引き続き台湾の社会から関心を集めています。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。
【執筆担当弁護士】