第566回 観光ビザでの台湾就労で入境禁止となる可能性
今年、外国人インフルエンサーが就業ゴールドカードで台湾に入国する際、空港で入国を拒否され、2028年までに入国できないと告げられたということがありました。内政部移民署は、当該外国人は23年に観光ビザで台湾に入国し、招聘(しょうへい)を受け1日店長を務めたことがあったため、関連法令に基づき入国を拒否されたと指摘しました。
また、観光ビザで入国したにもかかわらず台湾で何度も番組の収録に参加し、かつ報酬を受け取った外国人がいましたが、このような行為も違法と認定され、入国を拒否されています。
居留許可取り消しの可能性
「出入国移民法」の規定によると、期限を超過して滞在した、または不法就労をしたことのある外国人については、その入国を禁止することができ、「外国人入国禁止作業規定」にも、外国人が滞在の申請目的と合致しない活動に従事し強制送還された、または期限を定めて出国命令が下された場合には、その者の入国を3年から5年間禁止することができるとの明文規定があります。この処分は、入国を拒否された又は出国した日の翌日から起算されます。
これらの事案により、外国人が観光ビザで台湾に入国したにもかかわらずそのビザの目的と合致しない活動(例えば、出演、ライブ配信など)に従事した場合、一定の期間経過後に入国拒否などの処分に直面する可能性があるという重要な法的リスクが浮き彫りになりました。
また「出入国移民法」によれば、入国を拒否された者は、居留許可を取り消される可能性もあります。
申請目的と不一致の不法就労
本件は、外国人と台湾の雇用主に対し、ビザの種類と実際の活動内容との対応関係を軽視すべきではなく、たとえ台湾での興行又は撮影内容が短時間のものに過ぎないとしても、入国の申請目的と合致しない場合には不法就労となる可能性があり、結果として、将来長期にわたり入国を禁止され、契約の履行に影響をもたらす可能性さえある、という注意を与えることにもなりました。
従って、外国人は、台湾に来るにあたり、必ず、出入国や就業に関する法規を理解し、それらを遵守しなければなりません。不明な点がある場合には、事前に専門家に相談すべきです。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。