第3回 付加価値税還付申告及び税額控除申告
皆さん、こんにちは。Poblacionです。今日は、付加価値税(VAT)還付申告及び税額控除申告についてお話していきましょう。
対フィリピン投資を促進するために、経済の重要セクターへの投資希望企業には数々の奨励措置が認められています。その中でも評価されている奨励措置の1つが、VAT非課税の適用を享受できることです。これにより投資企業は、自社製品に対する税率12%の売上VATを免除されるだけではなく、購入品に対して納めた税率12%の仕入VATについても還付又は税額控除を受けることができます。後に輸出用商品に組み込まれる資本財や輸入品目に対して納めたVATの還付が政府によって納税企業に認められる場合もあります。
しかしながら、内国歳入庁(BIR)や裁判所によって、様々な矛盾した規則や決定が発行された結果、VAT還付/税額控除申告の正しい手順について混乱が生じてしまいました。そこで2014年、BIRは、歳入覚書回覧(Revenue Memorandum Circular = RMC)第54-2014号を発行し、問題点を明確にした上で、VAT還付/税額控除申告書の提出及び処理に関する規則をまとめました。
BIRに対してVAT還付/税額控除申告中又は準備中である納税企業は、下記の必要項目及び期限に注意する必要があります。
VAT還付/税額控除申告書は、売上が発生した課税対象四半期末から2年以内にBIRに提出しなければなりません。また、VAT還付/税額控除申告書には、裏付として下記書面を添付する必要があります。
最初の申告時(別ファイルとして提出):
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商品及びサービスの国内購入に関して
商品又はサービスの販売に関して
ドル建て送金に関して
商品の輸入に関して
その他必要項目:
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一般的必要項目:
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申告人は、文書の完全性を証明する宣誓供述書を提出しなければなりません。また、申告人は申告の裏付として提出する文書が全て提出済みであることも確認する必要があります。申告人が法人である場合、宣誓供述書に署名する役員は、当該法人を代表して行為する権限を取締役会から授与されていなければなりません。申告人の提出した裏付文書が完全なものではない場合、BIRによって申告が却下されますのでご注意ください。
- 申告書が提出されると、BIR長官は、すべての文書の提出日から120日以内に、VAT還付/税額控除請求を認めるか否かを決定することになります。
- VAT還付/税額控除請求が全面的にあるいは部分的にBIR長官により却下された場合、申告人は、請求却下の通知日から30日以内に租税控訴裁判所に控訴することができます。
- VAT還付/税額控除申告について、120日の期間が経過した時点で、BIR長官による行為がなされていない場合、かかる不作為は請求の却下とみなされます。申告人は、請求の「みなし却下」について、120日という期間満了後の30日以内に租税控訴裁判所に控訴することができます。これを「120日プラス30日」ルールと呼ぶことがあります。
- 申告人が租税控訴裁判所に控訴すると、BIR長官は当該申告に対する管轄権を喪失します。
- 申告人が、上記期間内に請求の却下又は「みなし却下」に対する控訴を行わない場合、BIR長官による決定又は「みなし却下」は、最終的なものとみなされ、控訴できなくなります。
- RMC第54-2014号に定められた手順は、現在手続中のVAT還付/税額控除申告の全てに適用されます。
VAT還付/税額控除申告を行った、あるいは行う予定の納税企業は、前述した手続上の規則を把握し、自らの申告を慎重にモニタリングする必要があります。さもなければ、一見必要とは思えないような資料の提出し忘れや、期限が一日過ぎてしまっただけで、数百万ペソという金額を損失することになります。
*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。