第24回 フィリピンに子会社を設立する10のステップ
皆さんこんにちは。Poblacionです。皆さんはフィリピンへの事業進出に関心がおありでしょうか。今回は、フィリピンでの子会社設立の手順についてお話していきます。
はじめに:
子会社の設立にあたって最初に検討すべきもっとも重要な点とは、その子会社の希望する事業を行うことがフィリピンで許可されているかどうかを調査することです。以前のコラム(第17回)でご説明しましたとおり、フィリピンの憲法及び法律に基づき、外国資本企業には認められない活動があります。また、特定の種類の事業活動の場合には、資本に関する条件を満たすことが必要になります。会社の設立手続を開始する前に、このような法律上の規定に留意し、注意を払わなければなりません。
ステップ 1:発起人の招集
発起人とは、会社を正式に設立する人々のことです。会社法により、発起人の人数は5名以上15名以下と定められています。発起人は、法定年齢に達した自然人でなければならず、そのうちの過半数はフィリピン国内の居住者でなければなりません。また、発起人はそれぞれ会社株式1株以上を保有していることが必要です。
ステップ 2: 社名の確保
発起人は、証券取引委員会(SEC)から社名を取得しておく必要があります。希望する社名以外に、いくつか代替案も用意しておくことをお勧めします。希望する社名や類似する社名が第三者名義で既に登録されている可能性があるためです。社名が確保できますと、SECから社名確認書が発行されます。社名の確保にかかる費用はそれほど高くありません。
ステップ 3: 定款の作成
発起人は次に、定款を作成します。定款には下記の情報または事項が記載されていなければなりません。
- 社名 − 社名確認書と完全に一致する形で記載されていなければなりません(カンマ、スペース、ピリオドなど詳細にまで気をつけてください!)
- 会社の主たるまたは副次的目的
- 会社のフィリピンにおける本店についての記載
- 会社の存続期間 − 会社法により、会社の存続期間は最大50年であり、定款の改訂により延長可能とされています
- 発起人の氏名、国籍及び居所
- 取締役の人数(5名以上15名以下)、氏名、国籍及び居所 − 取締役は会社株式1株以上を自己名義で所有していなければならず、取締役の過半数はフィリピン居住者でなければなりません
- 会社の授権資本額、発行可能株式総数、(もしあれば)額面価額、当初出資額、当初引受人の詳細、及び払込額
- 会社の初代財務役を務める人物の氏名
- フィリピン人による最低株式保有率に関する適用法遵守の陳述書
- 社名に対する優先権を有する他人がいた場合には社名変更を行う旨の誓約
- その他事項(株式の譲渡制限、優先順位等)
ステップ 4:付属定款の作成
付属定款には、会社の管理規則及び規程(取締役会の開催方法、取締役及び役員の資格等)を記載します。会社登記の1ヶ月後に付属定款をSECに提出することも可能ですが、定款と同時に提出するのが一般的です。
ステップ 5:財務役宣誓供述書の作成
財務役は、以下について証明する宣誓供述書を作成することになります。
(a)当初引受分の出資金を受領済みであること
(b)会社の授権資本の25%以上が発行済みであり、発行株式総数の25%以上が払込済みであること
なお、定款、付属定款及び財務役宣誓供述書の書式は、こちらから入手できます。
ステップ 6:特別要件に従う
会社が規制対象の活動を行う場合、あるいは投資奨励措置を受ける場合(銀行等)にはまず、管轄の規制当局(フィリピン中央銀行等)の承認を得る必要があります。また、最初の株式引受を現物出資で行う場合、該当する譲渡及び評価文書の提出をSECから要求されます。
ステップ 7: SEC書式F-100への記入
会社の外国資本率が40%を超える場合には、SEC書式F-100(外国投資法に基づく登録申請書)に必要事項を記入する必要があります。
ステップ 8:事前承認を受ける
SECに書面を提出し、事前承認を受けます。書面に不備又は大きな誤りがあった場合には、不備の補完や誤りの是正がSEC職員から求められます。
ステップ 9: 申請料の支払い
書類を揃えた後、申請料の支払が必要になります。申請料の金額は、授権資本の1%の5分の1に相当する金額となります(ただし、1,000ペソを最低額とします)。これに、法的調査費用として1%が上乗せされます。付属定款の登録費用は510ペソです。
ステップ 10: 実体審査を経て証明書の発行を受ける。
その後書面はSECに提出され、実体審査が行われます。書面に不備がなければ、SECから設立証明書が発行されます。これら一連の会社設立手続に要する期間は、通常1週間から2週間です。
おわりに:
SECにおける会社設立手続は、フィリピン進出の第一歩に過ぎません。子会社設立後、様々な政府許可の取得や合法的な事業運営に必要なその他行為の実施が必要になります。会社設立後の免許及び行為については、以後のコラムでお話しいたします。
*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。