第44回 手っ取り早く儲かる方法が!?
皆さん、こんにちは。Poblacionです。最近、自分のFacebookのページを開くたびに1口5,000ペソの「投資」を募集している会社の広告を見かけます。その広告は、投資した数週間後か数ヶ月後には400%の配当が受け取れると謳っています。その広告の落とし穴は、利益を手にするためにはその投資口を新たに購入する出資者を2人以上見つけなければならない(そして、その出資者達も新たな出資者を見つけなければならない … というように、同じことが繰り返されます)という点です。皆さんはこれをどう思われますか?この手っ取り早く儲かる方法、私にはどうにも、ねずみ講のようにしか聞こえません。
フィリピンでは最近、違法な出資詐欺(ねずみ講式詐欺等)が横行してきているようです。事実、フィリピン証券取引委員会(SEC)は2014年7月、6件の勧告を発行し、特定の会社による疑わしい出資勧誘行為に警戒するよう公衆に呼びかけを行ないました。このような手口に共通する特徴として、出資者が新たな出資者を勧誘した場合にはハイリターンが得られるという条件で、公衆に対して出資の募集が行なわれます。新たな出資者も、同じノルマを達成すれば、同様の見返りが約束されます。この出資モデルにおける問題点は、そのような会社には一般的に事業の実体がないため、先に出資した人に支払される配当金には、新たに出資した人から集められる前払金が充てられる仕組みになっており、その勧誘方式が破綻すると、会社の資金が底をつき、後から出資した人が取り残され、出資金を取り戻せない状況になる、というところです。
では、どうすれば当該会社が投資詐欺を行っているかどうかを知ることができるでしょうか?以下に、基本的な確認事項を記載します。
1.会社とその投資商品が適切に登録されているかを確認
最初にすべきことは、その会社が法律上実際に存在しているかどうかを確認することです。その会社が、パートナーシップか法人である場合にはSECに、個人事業主である場合には貿易産業省(DTI)に、それぞれ登録されているかどうかを調べ、確認することができます。SECが発行した勧告によれば、公衆に対して違法な出資の募集をしている会社の中には、SECに法人登録さえしていない会社があるようです。
ただし、会社がSEC又はDTIに登録されているからと言って、公衆向け投資商品を募集して良いということにはなりません。証券規制法によれば、「投資契約[及び]権利証又は利益分配契約への参加」は、「証券」に分類されます。フィリピン国内で証券の売出しや募集を行なう場合には、以下の条件を満たすことが法律により義務付けられています。
・証券の登録書をSECに提出し、承認を受けること
・会社自体が投資信託会社として活動しており、SECに登録された証券を20人以上の投資家に販売する副次的許可をSECから取得していること
・SECに登録された証券の募集又は売出しを行なうブローカー、ディーラー及び販売員自身がSECに登録されていること。
以下に該当する者は、刑事責任を負うことになり、7年から21年の懲役及び/又は5万ペソから500万ペソの罰金を科される場合があります。
(a)必要とされるSECへの登録書の提出及びSECの承認取得をせず、証券の売出し又は募集を行なう者
(b) 証券規制法に違反した者
2.会社が有形商品を販売していても、合法的に営業をしているとは限らない
勧誘を特徴とするビジネスモデルが全て違法というわけではありません。たとえば、マルチレベル・マーケティング(MLM)方式を通じて商品を合法的に販売している会社は、通常であれば法律違反はしていません。MLMとは、商品の販売者に、会社の商品及びサービスの売上に対する手数料と、自分が勧誘した販売者による売上を通じた手数料の両方が約束される、という代替的販売方式です。理論上、最初の販売者は、新たな販売者を勧誘しなくても、商品の販売によりお金を稼ぐことができます。合法的MLM取引の場合、会社は、形式上公衆に対して証券や投資商品を販売しているわけではなく、単に独自の販売方式で自分の商品を販売しているだけですので、SECから副次的許可を取得する必要はありません。
一方、MLMが、違法なねずみ講のカモフラージュに過ぎない場合もあります。会社の主な目的が商品の販売ではなく販売者の勧誘にある場合は、これにあたります。ある会社が、商品の売上ではなく、新たに勧誘された販売者の支払う「参加料」からその収益のほとんどを得ている場合、その会社が詐欺を行なっている可能性が高いことを示していると言えます。
フィリピンの消費者法では、消費財の販売における「連鎖販売制」又は「ねずみ講式」の行為について、主な収益が商品の販売そのものではなく他人の勧誘から得られている場合、かかる行為を禁止しています。法律に違反した者は、刑事罰の対象となり、5ヶ月から1年の懲役及び500ペソから1万ペソの罰金が科されます。
3.調べて、調べて、さらに調べる
投資商品を販売する会社や潜在的なハイリターンを約束するビジネスモデルの取引を行なう際には、必ず最大限に用心し、適切な注意を払うようにしてください。会社のバックグラウンドや主要役員についても更に調査しましょう。会社の営業状況を確認したり、記録を追跡したりすることも必要です。会社が物理的な事務所を構えていない場合には、書面を以って記録が残るやり取りを避け、非公式な打合せを好み、電子メールかプリペイド式携帯電話のみの連絡(フィリピンでは、プリペイド式携帯電話は登録が不要であるため、購入と処分が簡単にできます)ということがあります。その場合、その投資話は詐欺である可能性が非常に高いです。
4.話がうますぎると思ったら、その話はおそらく嘘!
違法な詐欺を行なう者は、儲かるという約束をあれこれして、自分達の商品に投資するように誘ってきます。全ての投資行為には、最終的にリスクと不確定性がつきものですが、商品の販売という事業には多少の労力が伴うものです。もし、ある会社が、努力を必要とせずリスクも負わず手っ取り早くハイリターンが得られる投資商品を販売していたとしたら、一生懸命稼いだお金をその会社に投資する前に、じっくりと考えた方がいいでしょう。
*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。