第58回 特許登録に関する基本的事項

皆さん、こんにちは。Poblacionです。これまでのコラムで、商標著作権の登録についてお話しましたので、今回はフィリピン法に基づく特許の登録について、基本的事項をお話ししましょう。

特許を受けられる発明とは?

以下の一般的基準を満たした発明が、特許を受けられます。

・新規性-発明が「先行技術」に属しておらず、その特許の出願日前または優先日前に世界のどこでも公知となっていない場合、その発明には新規性があります。たとえば、発明品がフィリピン国内でまだ提供されていなくても、日本国内で一般に販売されている場合、その発明には新規性があるとはみなされず、別の「発明者」がフィリピンでその特許を受けることはできません。

・進歩性-発明が「当業者」、すなわち関連分野の一般知識を有する通常の実務者にとって自明ではない場合、その発明には進歩性があります。

・産業上利用可能性-発明をいずれかの産業において生産し利用することができる場合、その発明には産業上利用可能性があります。

特許を受けることができない発明とは?

以下のものは特許の対象とはなりません。

・発見、科学的理論及び数学的方法。(たとえば、チャールズ・ダーウィンが今日生きていたとしても、彼の進化論は、特許を受けることができない「科学的理論」に該当するため、特許を受けることができません。 )

・薬剤に関する場合で、既知物質の新たな形式又は新たな特性であって、当該物質の効力の向上をもたらさないものの発見

・精神的な行為の遂行、ゲーム又は事業活動に関する計画、規則及び方法。(たとえば、チェスの対戦の仕組みについて。)

・コンピュータプログラム(ただし、著作権による保護は受けられます)

・手術又は治療による人体又は動物の体の診断及び処置の方法

・植物の品種、動物の品種及び植物又は動物の生産のための生物学的方法

・美的創作物

・公序良俗に反するもの

特許権の保有者は?

ある従業員が、雇用期間中に新しい装置を発明した場合、その発明を雇用主に譲渡するよう従業員に強制することはできるのでしょうか。その答えは、その発明が従業員の日常業務の一環であるか否かによって異なるでしょう。発明が、その従業員に日常的に割当てられた職務を遂行した結果であれば、従業員との契約で別途規定していない限り、その発明の保有者は雇用主になります。一方、発明が、その従業員の日常業務の一部でない場合は、たとえその従業員が就業時間中に雇用主の施設や資材を利用して創作した発明であっても、その発明の保有者は従業員になります。

特許出願に必要なものは?

出願人は、特許出願時に以下のものを提出しなければなりません。

・適切に記入した特許出願書

・発明の明細書

・発明の理解に必要な図面

・特許クレーム

・特許要約、すなわち発明の簡潔な要旨

出願人がフィリピン居住者でない場合は、本人に代わって知的財産庁(IPO)における手続を行うフィリピン国内居住者を代理人として指名しなければなりません。

特許登録までの手続は?

必要書類を提出すると、その出願に対して「出願日」が付与されます。出願人がフィリピンにおける出願日前の12ヶ月間に外国で出願している場合、その外国における出願の日を出願日とすることもできます。この外国における出願の日を「優先日」といいます。

その後、特許局(BOP)による出願の方式審査が行われます。方式審査を通過した出願については、先行技術の存在を判断するための調査がBOPによって実施されます。出願とその調査結果は、出願日又は優先日の18ヶ月後にIPOの公報に公告されます。

出願人は、公告日から6ヶ月以内に、実体審査を求める請求をBOPに書面で提出し、所定の手数料を納付する必要があります。特許審査官が、実体審査の過程で出願を拒絶すべき理由(すなわち、新規性、進歩性又は産業上利用可能性の欠如)を認めた場合、BOPは出願人に当該拒絶を通知し、出願人には意見の陳述又は出願の補正を行う機会与えられます。

そして、出願が法律上の要件を全て満たしている場合には、特許が与えられます。

フィリピン特許が付与された場合の効果は?

特許を付与された特許権者には、正当な権利を持たない人又は事業体が、特許で保護された製品の製造、使用、販売の申出、販売又は輸入を行うのを抑制し、禁止し、阻止する独占的権利が与えられます。特許が製法特許である場合、特許権者は、特許で保護された製法から直接又は間接に得られた製品を含め、当該製法の使用を阻止することができます。

類似出願がなされた場合は?

フィリピンは先願主義を採用していますので、2人の人物がある発明をそれぞれ別個にかつ独自に創作した場合、先の出願日又は優先日を確保した発明者が優先され、特許権を付与されます。

たとえば、A氏が6月30日に発明を創作し、7月30日に特許出願し、別途、B氏が独自に同じ発明を7月15日に創作し、直後の7月16日に特許出願した場合、B氏の特許を受ける権利が優先されます。

特許の有効期間は?

特許は出願日から20年間有効です。

特許が付与された後に、特許の登録を維持するために従うべき要件は?

特許権者は、特許の登録を維持するために年次手数料を納付する必要があります。最初の年次手数料の納付期限は、特許出願公開日の4年後です。その後、特許の存続期間中、毎年、年次手数料を納付します。年次手数料が期限までに納付されない場合、特許は失効します。

特許を発明したらすぐに出願し、手数料の納付を忘れないことが大事ですね!


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。