第100回 フィリピンの事業税に関する基本的事項
皆さん、こんにちは。Poblacionです。フィリピンでの事業立ち上げに必要な許認可を取得したら、次に気になるのは事業に対する課税額ではないでしょうか。確かに、フィリピンの税制度は、やや複雑で厄介なものに感じるかもしれません。本コラムが、フィリピンの事業税について理解する一助になれば幸いです。
それでは、フィリピンで一般的に事業に課される税金について、お話しましょう。
所得税
内国法人(外国企業の子会社等)及び居住者外国法人(外国企業の支店等)の場合、通常、その純利益に対し、30%の所得税が課されます。純利益は、その企業の総収益から税法上認められている控除分を差し引いて算出します。法人所得税を納付する企業は、以下の控除方法からいずれかを選択することができます。
・選択制定率控除 – 総収益の40%にあたる定率控除。
・課税年度中に発生した事業経費の項目別控除。税法には、総収益から控除できる事業経費の種類や、控除適用の上限及び条件が列記されています。
非居住者外国法人(フィリピン国内で取引や事業を実施してはいないが、他の方法により同国内で所得を得ている外国法人)の場合、控除は一切なく、総収益の30%という一定税率で課税されます。
当然ながら、上記規則には様々な例外があります。以下に、その例を挙げます。
・内国法人及び外国法人の一部は、税制上の優遇措置を受けることができます。例えば、経済特区(PEZA)登録企業は、一定期間、所得税を免除され、その後も、すべての国税及び地方税の納付に代えて、総収益の5%という課税額が適用されます。
・特定の単発取引からもたらされる収益には、異なる税率が適用されます。例えば、株の売却から得られた譲渡益に適用される税率は、5%又は10%であり、資本資産に分類される不動産の売却に適用される税率は、当該不動産の総売却価格又は公正市場価格(いずれか高い方)の6%です。
・受動的所得(配当金、利息、ロイヤルティ等)にも、異なる税率が適用されます。受動的所得に課される税金は、源泉徴収され、所得の支払者から内国歳入庁(BIR)に直接納付されます。
付加価値税(VAT)
以下の企業が、付加価値税(VAT)の課税対象になります − (i) 通常の業務過程において、商品、資産もしくはサービスの販売、交換もしくはリースを行い、その過去12ヶ月における総売上高又は受取額がPhp1,919,500を超える企業、又は (ii) その業務過程においてか否かを問わず、商品を輸入する企業。
現行のVAT税率は12%であり、納付額は以下のとおり算出されます。
VAT納付額 = 売上VAT (総売上高/受取額の12%)− 仕入VAT (先に納付した12%のVAT)
VATが免除される(すなわち、VATの納付義務がない)取引や、0%というVAT税率が適用される(すなわち、VATの納付義務がなく、以前納付した仕入VATについて還付請求できる)取引もいくつかあります。VATが免除される取引とは、通常、基本的物資の販売や、基本的サービスの提供に関する取引です。一方、税率0%の取引の例として一般的なのは、経済特区内で活動している企業に対する物品及びサービスの輸出販売及び販売です。
百分率税
百分率税とは、VATの課税対象ではない(すなわち、総売上高又は受取額がPhp1,919,500以下である)人及び企業、又はVATの課税対象であるにもかかわらずVAT納税義務者として登録されていない人及び企業に課される税金です。百分率税は、対象者の総売上高又は受取額に対し、3%という税率で課されます。
別の税率で百分率税を課される企業もあります。これには、フィリピン国内で営業している一般運送業者、生命保険会社、及び銀行が含まれます。
印紙税(DST)
印紙税(DST)とは、債務、権利又は資産を譲渡する権利又は特権の行使に課される税金です。DSTの課税対象になる取引の例としては、株式の売却、融資契約、土地の賃貸、及び不動産譲渡があります。DSTは、他の種類の税金(所得税等)と併せて課されることもあります。
DSTの税額は、取引の性質及び価値によって決まります。例えば、株式の売却については、売却対象株式の額面価格をベースに、初回株式発行時には0.5%、二回目以降の株式譲渡時には0.375%の税率でDSTが課されます。不動産譲渡の場合は、不動産の対価又は公正市場価格(いずれか高い方)の1.5%の税率でDSTが課されます。
物品税
物品税(「罪の税」と呼ばれることの方が多いです)とは、アルコール製品、タバコ製品、石油製品、自動車、非必需品/贅沢品(宝石及び香水)、及び鉱物製品の生産、販売、消費又は輸入に課される税金です。物品税は、VATに加えて課税されます。物品税の税額は、課税対象となる製品によって異なります。
地方事業税
地方事業税は、BIRに納付する上記税金とは異なり、企業/事業の所在地である市や自治体に納付します。市や自治体には、法律で定められた上限税率を超えない範囲で、管轄区域内で適用される地方事業税の税率を定める権限が与えられています。平均値で言いますと、地方事業税率は、企業の総売上高/受取額の1%未満です。
もちろん、上記例に挙げた税金にも、様々な条件や例外があります。従いまして、フィリピンでの事業立ち上げをお考えの方は、フィリピンの税務弁護士等と相談し、その事業に対する課税についてよく知っておかれた方がよいでしょう。
*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。