有限会社と株式会社の最低資本金額の撤廃について

台湾の会社法第2条によれば、「会社」とは下記の4つの形態を指す。

  1. 合名会社(無限公司) :無限責任社員のみが出資する会社。
  2. 合資会社(両合公司) :無限責任社員と有限責任社員が出資する会社。
  3. 有限会社(有限公司) :有限責任社員のみが出資する会社。
  4. 株式会社(股份有限公司) : 出資者である株主に対し株式を発行する会社。
    株主はその株式の数により有限責任を負う。

台湾の現行の会社法によれば、上記のうち有限会社と株式会社は、一定の最低資本金に達しなければ設立することはできない。有限会社の最低資本金額に関する会社法第100条第2号は、「有限会社の最低資本金額は、中央主管機関が命令によりこれを定める」と規定している。また、株式会社の最低資本金額に関する会社法第156条第3号も「株式会社の最低資本金額は、中央主管機関が命令によりこれを定める」と規定している。

しかし、会社設立時に実際に必要となる資本金を超える額の最低資本金額の拠出が法律で強制されると、会社の設立を遅らせ、資本金を無駄にすることになりかねない。さらに、最低資本金額の規定があっても、資本の額に相当する財産が現実に会社に保有されているとは限らない。

そのため、2001年時には、中央主管機関である経済部の命令によって、有限会社の最低資本金額は50万台湾ドル、株式会社の最低資本金額は100万台湾ドルとされていたが、国民に起業し易い環境を与え、経済の発展を促進させるため、2008年に、経済部は有限会社の最低資本金額を25万台湾ドルに、株式会社の最低資本金額を50万台湾ドルに引き下げる命令を発した。

さらに投資と起業の環境を改善するため、有限会社と株式会社の最低資本金額の規制廃止が必要であるとの台湾政府の考えを受けて、台湾の行政院は、今年の1月22日に、会社法の第100条第2号及び第156条第3号を削除し、会社を設立する際に必要な資本金額については、各会社の具体的な状況に鑑みて決定するという内容の会社法の修正案を提出した。

2008年9月に公表された世界銀行のビジネス環境調査レポート「Doing Business 2009」によれば、台湾法により規定されている最低資本金額は台湾国民の平均所得の177.4%に達し(近隣のシンガポールと香港は共に0%、韓国は53.8%)、起業の難易度は世界ランキング119位であることから、台湾は起業しやすい国とは言えない。

会社法の第100条第2号及び第156条第3号の規定が撤廃されれば、台湾における投資や起業の環境は改善され、起業の難易度における世界ランキングは上昇するものと期待される。台湾の国会は、行政院が提出した会社法の修正案を可決する見込みである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修